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2016.12.20

今話題のロカボ(糖質制限)。炭水化物を減らす意義

目次

  1. 『ロカボ』って何?
  2. カロリー制限の限界
  3. 炭水化物抜きの歴史は古い
  4. シュガーバスター(Suger Busters)
  5. 炭水化物を減らす間接的意義(私の考え)
    <まとめ>

日本では、2015年前後から糖質制限ダイエットが多くの人に受け入れられブームとなっています。日本では伝統的にお米の文化ですが、戦後は米食よりもパンや麺類を好む人が増え、西洋化の食事と共に肥満が増えてきているとも言われています。今回は、痩せるだけでなく、血糖値異常、その他の生活習慣病にも有効とされる、話題のロカボ・ダイエットについて説明したいと思います。

このブログの最後に私の考えを述べたいと思います。結論から言いますと、このダイエット法は私のアイデアと近いのですが、この食事法の一番のポイントは「インスリン」である、ということには疑問をもっています。

1.『ロカボ』って何?

ロカボ
(『糖質制限の真実・日本人を救う革命的食事法ロカボのすべて』 山田悟著 より引用)

そろそろ混同されがちな「糖質制限」と「ロカボ」、また「低糖質」「炭水化物抜き」について整理しておきたいと思います。
もっとも分かりやすく、ダイエット法として最初に広まったのは、「炭水化物抜き」でした。しかし、炭水化物抜きだと、食物繊維までも抜くことになってしまいます。一緒に食べることにより血糖上昇をなだらかにすることのできる食物繊維は控えるべきではないので「炭水化物抜き」はあまり良くないということになります。

糖質制限」という言葉は正確性は増すものの、「制限」という言葉はどうしてもネガティブな印象を与えてしまいます。そこで「低糖質」という言葉に置き換えればいいのですが、それは消費者庁の定める「低糖類」(糖類が食品100g中に5g未満)という言葉と混同されやすく、誤解が生じがちです。

糖類、糖質、炭水化物

そういう訳で、これまでにない別な言葉の必要性が高まりました。低糖質を英訳した「ロー・カーボハイドレート」から『ロカボ』という言葉をつくり、普及させたいと考えているのです。

ロカボとは、緩やかな糖質制限であるということです。糖質を1食20~40グラム(3食)、それとは別に1日10グラムまでのスイーツを食べて、1日の糖質摂取量をトータル70~130グラムにしましょう、というのが定義です。

普通の糖質制限と違うのは、最低でも70gの糖質を摂取することで、ケトン体が出てくるような極端な低糖質状態になることを避けていることです。また極端な糖質制限は食事の幅が狭まりますが、ロカボでは食べられるものの幅はぐんと広がるのです。[1](引用以上)

2.カロリー制限の限界

(再び『糖質制限の真実・・・』より引用)

<2015年の真実>
とにかく、健康の為にを控えるべきという考えは、一般に疑われることなく長く信じられていました。ところが、21世紀になってからの様々なデータは、例え食べる油を控えても、血液中の脂質の指数は良くならないし、食べるコレステロールを控えても、血中のコレステロール値は下がらないということを明らかにしてきました。

2015年になり、日本の厚労省にあたるアメリカの政府機関は、約40年ぶりに『食事摂取基準』を改訂しました。その内容は「食べるコレステロールは制限しません。食べる油も制限しません。なぜならば、それらを控えても心臓病の予防にも肥満の予防にもつながらないからです」というものでした。(~略~)

日本でもアメリカと同様、かつて糖尿病の増加は、身体活動量の低下と油の摂取の増加が原因であると考えられていました。しかし現実には、21世紀に入ってからは油の摂取量を減らしたにもかかわらず、糖尿病は増える一方だったのです。

グラフ

具体的な数値でいうと、
【1997年】血糖異常者 :1,370万人
【2007年】  〃   :2,210万人

に激増しています。このグラフから読み取れることは、食べる油を減らしたがために、加速度的に血糖異常者を増やしてしまったのではないかということです。(~略~)

確かに2008年のアメリカ糖尿病学会のガイドラインでも「腎臓を保護したかったら、蛋白質を制限しなさい」と言われていました。しかし、2013年には「タンパク質の制限はしてはいけません。なぜなら制限しても何もいいことがないからです」となりました。

この急激な変化に戸惑われるかもしれませんが、この10年間で、油についても糖質についても蛋白質についても、それまで常識だと思われていたことが軒並み打ち消され、正反対になりました。これが今の栄養学です。[2](引用以上)

3.炭水化物抜きの歴史は古い

上述の話だけを聞いた人にとっては、ロカボ(糖質制限)が真新しい食事法のように思われるかも知れませんが、実は1800年代から何度となく繰り返されていた方法でありました。

これについて、詳しくは以下の記事をご覧ください。
炭水化物が太るのか、カロリーが太るのか?論争

4.シュガーバスター(Suger Busters)

1990年代後半からアメリカ(ニューオーリンズ)を中心に、『食の革命』とも言われブームとなったシュガーバスターを紹介します。いわば、ロカボの前身のようなものですね~。

「シュガーバスター:カロリー神話をぶっつ飛ばせ」(2001年)より抜粋
シュガーバスター

Sugar Bustersのポイントは「インスリン」の分泌を調整することです。インスリンのコントロールは糖質の摂取を制限することにかかっています

逆にそれさえ守れば、カロリーは気にせずにステーキや魚のグリル、チーズなども食べれるということで、街のレストランなどもこぞってシュガーバスター・メニューを作り、街ぐるみで盛り上がったそうです。

fish dish

著者の一人であるスチュワード氏(会社社長)はシュガーバスター食事法に出合ってから、(5年余りで)10キロ近く減量し、その体重も維持していますし、血液検査の結果も良好です。これがカロリーは気にせず(1日3千kcalの日も)に食べながらの成果なのです。(~略~)

『シュガーバスター』ではその食事法が紹介されて以来、痩せることができた人、血管をきれいにできた人、糖尿病が改善した人、何万人もの実践者がその効果を身をもって証言してくれています。[3] (引用以上)

5.炭水化物を減らす間接的意義(私の考え)

糖質制限ダイエットの食事の摂り方は、私の勧めようとするダイエット方法と近いのですが、私の腸内飢餓の理論の観点から言うと、少し意味合いが異なります。それについて説明します。

このダイエット法では、砂糖も含めた炭水化物がインスリン分泌を促すので「人を太らせる犯人」のような扱いをされている気がするのです。血糖値異常が様々な病気に関連していることや、炭水化物が肥満の大きな一因という点ではもちろん同感です。しかし、私はインスリン分泌は脂肪蓄積を促すとしても、肥満の人と痩せている人の根本的な違いを生み出すものではないと信じています。

このブログで何度も言うように、私が考える肥満の根本的な原因は「基本体重が高くなっていること」であり、それは腸の飢餓のメカニズムによって起こります。

これは消化の良い炭水化物を多く含むバランスの悪い食事によって起こりやすくなります。
そういった食事は血糖値を上げ、インスリン分泌を促す傾向はあるのですが、基本体重をアップさせ人を太らせるのは別のメカニズムであり、私の理論上、インスリン分泌はあまり関係ないと考えています。

では何が影響するのかと言うと、炭水化物のうち多糖類のもつ「希薄効果」「プッシュアウト効果」です。それが他の要因と重なって、間接的に腸内飢餓を引き起こしやすくします(間接的にということが重要です)

【関連記事】炭水化物が人を太らせる、その特性


▽一方、痩せたいと思う場合は、私もロカボ・Sugar Bustersなどと同様に、食事中の炭水化物の割合を減らし、逆に脂質や肉、野菜、乳製品などを増やすことが効果的であると考えています。

この場合、炭水化物を減らす直接的な意味としては、即効性のエネルギーとなる糖質を減らすわけですから、体はエネルギーを得るためにタンパク質(アミノ酸)や脂肪からエネルギーを得ないといけません。また、血糖値の上昇が抑えれるわけですから、生活習慣病の改善にも役立つと言われています。

meat,fat,oil

間接的な効果としては、逆に消化の良くない食べ物(特に脂質)の割合を増やすことで、濃密な栄養を腸内に送ることです。
それにより消化にかかる時間が長くなり、未消化物を長時間にわたり腸内にとどめます。結果として、空腹感が抑えられ、順に吸収率が低下します。

単に炭水化物も肉も脂質も減らすだけなら「少なく食べ、空腹を我慢する」ということであり、これまでの研究結果が示すように、そのようなダイエット法は長期的に上手くいかないのです。

つまり、炭水化物が直接的に人を太らせる悪者ではなく、お肉・野菜・チーズやオイルを相対的に多くし、バランスよく食べ、空腹感を減らすことが重要になってくると思っています。

糖質制限を推奨する人の中には、「インスリンの分泌さえ下げれば、カロリーを気にせずに、肉・チーズ・オイルなど何でも食べてしかも痩せれるのだから、カロリー摂取量ではなく炭水化物(インスリン)が原因であったんだ。」と説明する方もいますが、その説明は間違っていると考えます。

参考文献:
[1]山田悟,「糖質制限の真実・日本人を救う革命的食事法ロカボのすべて」,2015, Pages 114-7.
[2]Pages 56-60.
[3]H・レイトン・スチュワード他「シュガーバスター:カロリー神話をぶっつ飛ばせ」, 2001.

まとめ

(1) 日本では、2015年頃から糖質制限が、一時的な流行ではなく、息の長いブームとなっている。その背景には、多くの人が炭水化物(米、パン、麺など)を多く含む食事を好み、それと共に、肥満や糖尿病が増えてきていることにある。
(実際のところ、多くの人は「カロリーの原則」をまだ信じているので、カロリーも減らしつつ、炭水化物も減らしている。)

(2) アメリカ(ニューオリンズ)では1990年代の後半からSugar Bustersダイエットがブームとなった。日本でブームとなる、15年以上も前のことである。

(3) 低炭水化物ダイエットを推進する医師などの中には、「インスリンの分泌を調整することが、このダイエット法の鍵である」と言うが、私は少し意見が異なる。炭水化物を減らしつつも、他の肉や、油料理、野菜、乳製品を相対的に増やすことに意義がある。

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