— トピックス —
脂質(油脂等)
2015.05.04
脂質(脂肪)についての3つの視点
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1.低脂肪食はダイエットに効果がなかった
2.脂質における、3つの側面
(エネルギーの持続性 / 太ることの抑止 / ダイエット効果)
多くの人は、「高脂質な食事を食べると太る」と常識のように言いますが、オイルや脂肪を沢山摂っても痩せることができたという研究結果もあります。どちらが真実なのでしょうか?
私の結論から申し上げると、どちらも真実である(間違っていない)ということです。
私がこのブログで何度も言う通り、「太る」という言葉には2つの意味があり、私の理論に基づくと、脂肪には3つの視点があると言えるでしょう。今回はそれを説明します。
1.低脂肪食はダイエットに効果がなかった
▽『炭水化物が人類を滅ぼす』の著者である夏井 睦氏(日本人医師)は自身が糖質制限(炭水化物抜き)をする中で、「脂肪はカロリーを気にすることなくいくら摂っても太らない。糖質を制限することで痩せることができたし、空腹を我慢することもなく体調もすごくよくなった」と言われています。
▽「瘦せたければ脂肪を沢山摂りなさい」の著者であるジョン・ブリファ氏(イギリス人医師)は著書の中で、いろんな食事を長期間摂取してもらう相対実験で、「低脂肪食にダイエット効果がないこと、高脂質な食事のほうがダイエット効果があること」を述べておられます。
「瘦せたければ脂肪を沢山摂りなさい」(ジョン・ブリファ著)より引用
常識的には、ダイエットを成功させるための鍵は摂取カロリーを下げることにあり、そのために展開するべき重要な戦略は、脂肪を減らすことだと言われています。脂肪は炭水化物やタンパク質と比 べて、2倍のカロリーがあります。しかも、脂肪には「体脂肪」という意味もあります。どうやらそのせいで、脂肪は本質的に太るもとだと見なされるようです。
その結果、あなたも過去のダイエ ットで、一生分の無脂肪牛乳を飲み、皮なしの鶏胸肉を食べたかもしれません。
他方、低炭水化物ダイエット(アトキンス法など)で卵、クリーム、チーズ、バターのような 脂肪たっぷりの食べ物をおなかいっぱい食べても、自分の体脂肪が少しずつ消えていくのがわかる、という経験をしたことのある人も大勢いるでしょう。そんな経験をすると、少なくとも疑問はわきます。 「私たちが口にする脂肪は、最終的に体脂肪として蓄えられる運命にある」という一般常識は本当な のでしょうか?[1]
(引用以上)
ブリファ氏は著書の中で以下のように結論づけています。
- 食事脂肪の摂取量に体重との強い関連はなく、脂肪摂取量が増えると体重が減少することを示す証拠もある。
- 低脂肪食は減量に効果がない。
- インスリンが体脂肪の蓄積を促す主要な因子であり、食事脂肪がインスリン分泌を直接促すことはないので、太るもとである可能性は限られている。
- 脂肪だけの食事は勧められないが、脂肪たっぷりの食事がダイエットに役立つ可能性がある。[2]
私は研究者ではないので、インスリンが体脂肪の蓄積においてどの様に働くのかについては、今は言及をさけますが、なぜ低脂肪食が減量に効果がなく、脂肪を多く含む食事に減量効果があるのかは、私の理論でも説明できると考えています。
2.脂質における、3つの側面
そこで私の実体験に基づく考えなのですが、脂肪を摂取して太ったという人、あるいは痩せれたと言う人、両方とも間違いではないけど、それは脂肪のもつ性質の一つの側面であるということです。これは、カロリーに固執すると見えなくなってしまいます。摂取する対象(誰が)やその摂り方(量、回数)などにより、3つの効果が期待できます。
(1)エネルギーが持続する(当然体にも蓄えられる)
脂質は重要なエネルギー源であり、1gあたり9kcalの熱量を供給します。また、細胞膜やホルモンの構成成分として重要な栄養素であり、その他にも私達の健康には欠かせないいくつかの重要な働きをもっています。
しかし、糖質やタンパク質に比べ消化に時間がかかるため、以下のような特徴があると言えるでしょう。
- 腹もちがいい(満腹感が持続する)。
- 胃の滞在時間を長くするため、ご飯と一緒に食べても血糖値が急激に上がりにくい。
- エネルギーが長時間持続する。
私は、"太る" という言葉には2つの意味があると言いましたが、設定体重に戻ろうとする場合 (図のb)においては、エネルギーの総量として太る原因になるものと考えます。
とりわけ脂肪に対して消化力の強い人、その中でも体重を低く抑えるためにダイエットに力を注いでいる人や、無駄な脂肪をそぎ落としムキムキの筋肉を目指している人は、お菓子やケーキ・揚げ物などの高カロリーな食べ物を食べれば、数日で体重が一機に増えることでしょう。多めの炭水化物と一緒に食べた時や、一日2食の時に太る効果はてき面のようです。
このイメージによって、多くの人は「痩せるために脂肪やオイルを摂りましょう」という画期的な提案を拒否し、この理論が社会で受け入れられ難くなっています。
(2)太ることの抑止効果
上記グラフの(a)の部分、設定体重そのものがアップする場合においては、どちらかと言うと(注1)抑止効果として働きます。体重の設定値がアップするのは腸内飢餓のメカニズムですが、脂肪は消化に時間がかかる為、未消化物が腸内に残りやすく、腸内飢餓を起こりにくくします。(注1:脂肪に対する消化力の強い人では、少しくらいなら抑止力とならない場合があります。)
実際、脂肪の消化はほぼ腸から始まるのですが、脂肪が十二指腸に入ると、脂肪の消化吸収を促進するホルモン(コレシストキニン:cholecystokinin)が分泌されますが、これは同時に胃の働きを阻害すると言われています。
それによって胃の排出作用が抑制され、食べ物が胃の中に長くとどまったりするため、人によっては、満腹感、膨満感の原因となる場合があります。
いずれにせよ、脂肪の消化は他の栄養素に比べ複雑であり、腸内飢餓を防止する傾向があります。
例えば、痩せている人が 「太りたい」という時などは、過度の脂肪摂取は太ることを抑止します。「あの人は、お菓子や焼肉、揚げ物など沢山食べるのになぜ太らないんだろう?」なんて不思議に思ったことはありませんか?実は、低脂肪で消化の良い食事のほうが、設定体重そのものをアップさせるという意味においては太りやすいと言えます。
(3)ダイエット効果(大きく分類すると「抑止効果」に含む)
ブリファ氏の言われる通り、「低炭水化物ダイエットにおいて、脂肪摂取量を増やすとダイエット効果が期待できる」というのは、全員に当てはまる訳ではないけど、ある意味正しいと私も考えています。
一般的には、炭水化物と違って脂質がインスリンの分泌を促さないことが要因と考えられているようですが、それについては私は今は言及を避けます。それ以外に、私の理論上で追加して言いたいのは以下です。
脂肪が完全に消化されるまでの時間は、食べる量や食材の組合せなどによって異なりますが、6~8時間に及ぶ場合もあります。それゆえ、こまめに(4~5時間おきに)脂肪分・オイルを摂り続けることで、腸の広範囲にわたり未消化物が残ることとなります。そうすると、空腹感が抑えられ、相対的に吸収力が低下していきます(人によっては、膨満感、下痢などの症状を引き起こすことがある)。
また、低炭水化物ダイエットで見られるように、炭水化物をある程度減らし、脂肪や肉・野菜・ナッツなどを増やすことで、濃密な栄養が腸に送られるため、さらに消化に時間がかかり、それを継続することでダイエット効果は高まると考えています。
【関連記事】炭水化物が人を太らせる:希薄効果、プッシュアウト効果
参考文献:
[1]ジョン・ブリッファ, 「痩せたければ脂肪をたくさん摂りなさい」, 2014, Page 45
[2] Pages 53, 57
まとめ
(1)脂質が1gあたり9キロカロリーだからと言って、脂質を摂ると必ずしも太る訳ではない。
脂肪に対する消化力の強い人、中でも普段から体重を低く抑えている人にとっては太る原因だが、食べる対象(誰が)や食べ方(量、回数)によっては、体重増加の抑止やダイエット効果として働く。
(2)脂肪は、他の栄養素に比べ消化に時間がかかるため、未消化物が腸内に残りやすくなる。それによって腸内飢餓は起こりにくくなるため、体重の設定値がアップしないという意味において、体重増加を抑止する傾向がある。
(3)低炭水化物で高たんぱく・高脂質の食事ではダイエット効果がある可能性がある。脂質は炭水化物と異なりインスリン分泌を促進しないことが主な理由として一般的に考えられている。
私の理論上で付け加えれば、消化の悪い脂質を4~5時間おきに摂取することで、腸内に未消化物が広範囲に残るため、空腹感を抑え、吸収率が低下する。その状態を継続すればダイエット効果がありうる。