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2025.02.25
肥満の増加は、超加工食品の消費量と密接に関係している
要 約
1.2009年、サンパウロ大学の研究グループは、食品加工度に基づく「NOVA分類」を提唱した。
NOVAでは、食品を以下の4つに分類している。
・未加工または最小限の加工食品
・ 加工食品原料
・ 加工食品(PF)
・ 超加工食品(UPF)
2.超加工食品(UPF)は、多数の工業的プロセスを経て作られる調合物であり、精製炭水化物、添加糖、塩分、脂肪を多く含み、エネルギー密度が高い。一方で、食物繊維や微量栄養素は少ない傾向がある。
3.アメリカやイギリスでは、一日の総エネルギー摂取量の 50%以上をUPFが占めている。多くの研究では、エネルギー摂取量に占めるUPFの割合が高いほど、肥満リスクが高いことが示されている。一方で、野菜などの未加工食品の摂取量は、肥満と逆相関していた。
4.UPF摂取量が多い人ほど、果物、野菜、ナッツ類、魚などの摂取量が少なく、食事全体の質(栄養価)が低下する傾向がみられた。
5.加工食品の食事では、ホールフードの食事に比べて食事誘発性熱産生(DIT)が低下し、実質的なエネルギー獲得量が増加する可能性がある。また、UPFの食事では、自由摂取下でのエネルギー摂取量が増加しやすいことも示された。
<私の考え>
6.世界的な肥満の増加は、単なる摂取カロリーの増加だけでは説明しきれない可能性がある。私は、「食品加工」そのものが人体に与える影響に着目している。
超加工食品は、食物繊維の減少や食品構造の単純化によって、極めて効率的に消化・吸収されやすくなっている。その結果、食事全体の質が低下すると、腸内に未消化物が残りにくい状態が形成されやすくなり、私が「腸内飢餓」と呼ぶ生理的状態につながる可能性がある。
【全 文】
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目次
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- NOVAシステムによる食品分類
- 超加工食品の問題点
- 超加工食品の消費と肥満との関連
- 超加工食品が食事全体へ与える影響
- 超加工食品と腸内飢餓との関連
低炭水化物、ケトジェニック、パレオ、低脂肪、ビーガンなど、さまざまなダイエット法をめぐる論争は、国民に大きな混乱と栄養科学への不信をもたらしている。しかし、ほとんどのダイエット法に共通する推奨事項があることは、あまり知られていない。それは、「超加工食品を避ける」ことです[1]。
実際、多くの国では、肥満率の上昇が超加工食品の消費量の増加とほぼ並行して進んでいることが報告されています。今回は、その背景にある要因について考えてみたい。最後に、私の「腸内飢餓」理論との関連についても触れます。
1. NOVAシステムによる食品分類
NOVA (頭文字ではない)とは、食品を栄養素ではなく、加工の程度や目的によって分類するシステムである。ブラジルのサンパウロ大学の研究グループによって、2009年に考案された[2]。
従来の食品分類では、食品や材料は、植物や動物の種類、あるいは含まれる栄養素に基づいて分類されてきた。
そのため、全粒穀物が「朝食用シリアル」やクッキーと同じカテゴリーに分類されたり、新鮮な鶏肉や豚肉がチキンナゲットやソーセージと一緒に分類されることもある。しかし、健康への影響を評価するうえで、従来の分類には限界があった[3]。
NOVA分類法では,食品を加工の性質、程度、目的に応じて、以下の4つのグループに分類しています。

2.超加工食品の問題点
そもそも食品加工とは、「生の食材を、消費・調理・保存に適した状態にするための操作」であり、ほとんどの食品は食べる前に何らかの加工を受けている。つまり、「加工」そのものが悪いわけではない。
しかし超加工食品 (UPF) は、グループ1の自然食品をほとんど、あるいは全く含まない場合がある。さらに、食品由来の物質や添加物を組合わせ、複数の工業的プロセスを経て作られる調合物であるため、部分的に食品の性質を変更した食品とは異なる特徴を持つ[3]。
これらの食品は、精製穀物、添加糖、塩分、脂肪を多く含み、エネルギー密度が高い。一方で、食物繊維、タンパク質、微量栄養素の供給源としては貧弱である。
さらに、最終製品の望ましくない品質を補うために、香料、着色料、乳化剤、甘味料などの添加物が加えられることも多い[5]。
それにもかかわらず、1980年代以降、超加工食品 (UPF) 消費量は、先進国だけでなく途上国においても急速に増加しており、それは主に多国籍企業によって牽引されている。
UPFは、強い嗜好性を持ち、安価で保存性が高く、いつでも手軽に食べられるため、多くの人々の支持を得ていると言えるであろう[3]。

これまでのNOVAに基づく研究では、最小限に加工された食品や家庭での調理が減少し、食生活が超加工食品中心へ移行することは、不健康な栄養プロファイルや、いくつかの食事関連疾患の増加と関連していることが示されている[3]。
3.超加工食品の消費と肥満との関連
「総エネルギー摂取量に占める超加工食品 (UPF) 由来のエネルギーの割合」を報告した成人を対象とした研究では、アメリカやイギリスで 50%を超えており、カナダでも約 45~52%に達している。一方、フランス、スペイン、ブラジル、マレーシアなどでは比較的低いものの、それでも 20~36% 程度を占めていた[6]。
♦アメリカの成人を対象とした横断研究(2005~2014年)では、参加者は平均して総エネルギー摂取量の 56.1% をUPFの形で摂取していた。UPF摂取量が最も多い五分位(注1)のグループでは、UPFが総エネルギー摂取量の 84.5%を占めていたのに対し、最も少ない五分位のグループでは 25.4%であった[7]。
(注1)五分位とは、データを低い順に並べて5等分した各グループを指す。
UPF摂取量の増加は、多くの国で肥満率の上昇と関連していることが報告されている。
♦ブラジルの 2008~2009 年の家計調査に基づく横断研究では、UPFの家庭内消費量は、平均BMIおよび肥満の有病率の両方と正の相関を示した。UPF消費量が最も多いグループでは、最も少ないグループに比べて、肥満となる確率が 37% 高かった[9]。
♦イギリスの国民食事栄養調査(2008~2016年)を用いた横断研究では、UPFから摂取されるエネルギーの割合は、総摂取カロリーの約 35%(第1四分位)から約 74%(第4四分位)の範囲であった。
UPFの摂取量が多いほど、BMI、腹囲、肥満率は高く、総摂取カロリーに占めるUPFの割合が 10% 高くなるごとに、肥満リスクは 18%増加していた。また、UPFの摂取量は、男性、喫煙者、より若い人、社会階級の低いグループで高い傾向がみられた[10]。
♦スペインのナバラ大学卒業生を対象にした前向きコホート研究では、8,451人を約9年間追跡した。
UPF摂取量が最も多いグループの参加者は、最も少ないグループの参加者に比べて過体重または肥満を発症するリスクが 26% 高かった。このグループでは、UPF摂取量とは対照的に、平均して野菜の摂取量が最も低かった。
全体的にみて、UPFの摂取量が多いほど、地中海式ダイエットへの遵守度は低くなる傾向がみられた[11]。
同様の関連は、ラテンアメリカ15カ国を対象とした研究や、アメリカ・カナダを含む他国の研究でも報告されている[4,7,8]。
4. 超加工食品が食事全体へ与える影響
(1)食事全体の質の低下
♦アメリカの研究グループは、国民健康栄養調査(2015~2018年)のデータを用いて、UPF摂取量と「食事全体の質」との関連を調査した。対象は、5,919人の子供と 10,064人の成人であり、食事の質は、米国心臓協会(AHA)食事スコアおよび健康的な食事指数(HEI)-2015を用いて評価された[12]。
その結果、UPFの摂取量が多いほど、食事全体の質は大きく低下していた。
不健康な食生活を送っていると推定された子供の割合は、UPF摂取量が最も少ないグループでは 31.3%だったが、最も多いグループでは 71.6%に達していた。成人でも同様の傾向がみられた。

また、UPF摂取量の増加に伴い、精製穀物・加糖飲料・添加糖などの摂取量は増加したが、逆に、果物・野菜・ナッツ類・魚などの健康的な食品の摂取量は減少した。
研究グループは、UPFの摂取量が多いほど、子供と成人の食事全体の質(栄養価)が大きく低下すると結論づけている。この結果は、これまでの数カ国で実施された先行研究と一致しているという[12]。
♦イタリアの研究グループは、「食事のタイミング」と食品加工度との関連について調査した。イタリア栄養健康調査(2010~2013年)の 8,688人のデータを分析した結果、朝食・昼食・夕食の時間が遅い人ほど、未加工または加工度の低い食品の摂取量が少なく、加工食品やUPFの摂取量が多い傾向がみられた[13]。
さらに、遅い時間の食事は、地中海式ダイエットの遵守とも逆相関していた[13]。地中海式ダイエットは、主に果物・野菜・豆類・ナッツ・オリーブオイル・魚を中心とする食事パターンであり、体重増加の抑制との関連が報告されている[14]。
(2)実質的な摂取エネルギーの増加
アメリカの研究グループは、加工食品(PF)とホールフード(WF)が身体のエネルギー消費に与える影響を比較するため、クロスオーバー試験を実施した。18名の被験者は、加工度のみが異なる等カロリーの2種類のサンドイッチを摂取した。
WF食は、マルチグレインパン(全粒穀物やヒマワリの種を含む)とチェダーチーズで構成され、一方 PF食は、白パンとプロセスチーズ製品で構成されていた。
その結果、PF食を摂取した後の食事誘発性熱産生(DIT)(注2) は、WF食と比べて 46.8%低下していた。研究グループは、このDITの差によって、PF食では実質的なエネルギー獲得量が約 9.7%増加すると結論づけている[15]。
(注2)食事誘発性熱産生(DIT)とは、食後に消化・吸収・代謝のため、数時間にわたってエネルギー消費が増加する現象を指す。
研究グループは、その理由として、加工食品は自然食品よりも構造的・化学的に単純で、消化しやすいことを挙げている。
例えば穀物の精製では、ふすまや胚芽が除去されることで、微量栄養素、食物繊維、フェノール類なども失われる。
その結果、消化管の活動や代謝に必要なエネルギー消費が減少し、DITの低下につながる可能性がある[15,17]。
さらに、食物繊維の減少は食事量の「かさ」を減らし、満腹感を遅らせるため、結果として総摂取カロリーの増加につながる可能性も指摘されている[15,18]。

(3)自由エネルギー摂取量に与える影響
2019年、アメリカ国立衛生研究所(NIH)の研究グループは、超加工食品(UPF)が自由摂取下でのエネルギー摂取量に与える影響を調べるため、体重が安定している成人20名を対象とした無作為化比較試験を実施した[19]。
被験者はNIH臨床センターで、UPFの食事と未加工食品の食事を、それぞれ2週間ずつ摂取した。両食事は、カロリー、エネルギー密度、主要栄養素などが可能な限り一致するよう設計され、被験者には「好きなだけ食べてよい」と指示された。
その結果、UPFの食事期間中には、未加工食品の期間中と比べて、一日あたりのエネルギー摂取量が平均 459 kcal増加し、体重はベースラインから平均 0.9 kg増加した。一方、未加工食品の期間中には、平均 0.9 kgの体重減少がみられた[19,20]。
特筆すべきは、超加工食品を摂取した際の摂取速度が、未加工食品の場合と比べて有意に高かったことである。
さらに、未加工食品の摂取中には、食欲抑制ホルモンであるPYYが増加し、空腹ホルモンであるグレリンが低下していた。
研究グループは、超加工食品の口腔感覚特性(例えば、噛みやすさ、飲み込みやすさ)が、摂食速度の増加と満腹シグナルの遅延につながり、結果として、エネルギー摂取量の増加につながった可能性があると分析している[19,20]。
5. 超加工食品と腸内飢餓との関連
これまで、世界的な肥満の増加は、摂取カロリーの相対的な増加によって説明されることが多かった。実際、超加工食品(UPF)には、その考えを支持する特徴が多くみられる。
・エネルギー密度が高いこと
・高い嗜好性と食べやすさ
・食事誘発性熱産生(DIT)の低下によって、実質的な獲得エネルギーが増加すること
・満腹感が遅れやすく、結果として自由摂取下でのエネルギー摂取量が増加しやすいこと
しかし同時に、NOVA研究によって、カロリー以外の側面も明らかになりつつある。
多くの国で実施された研究では、摂取カロリーに占めるUPFの割合が増えるほど、肥満リスクは大きく上昇することが示されている。しかし、この変化は単なる「摂取カロリーの増加」だけでは十分に説明できない。
特に注目すべき点は、野菜などの未加工食品の摂取不足や、食事全体の質の低下、食事タイミングの乱れが、いずれもUPF摂取量の増加と関連していたことである。
つまり、問題はUPFの摂取そのものだけではなく、それによって未加工食品の摂取が減少し、食事全体のバランスが崩れることにある可能性がある。

効率性が重視される現代の食環境では、精製炭水化物や超加工食品(UPF)など、調理済みで食べやすい食品を摂取する機会が増えている。これらの食品は、柔らかく、咀嚼が少なくて済み、素早く食べれるという特徴を持つ。一方で、未加工食品または最小限の加工食品の摂取機会は減少している。
その結果、食物繊維や消化されにくい成分が減少し、腸内に未消化物が残りにくい状態が形成されている可能性がある。
「腸内飢餓」理論では、摂取した食物が腸管内で完全に消化されたときに、身体が「食物が存在しない状態」と認識する可能性を想定している。私は、1970年代以降の食品加工技術の発展と超加工食品の増加が、このような状態の発生に関与している可能性があると考えている。
<参考文献>
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