— トピックス —
糖質(砂糖、炭水化物)

2022.07.15

アトキンス(糖質制限)、体重減少の長期的な効果はいかに?

<目次>

  1. アトキンスダイエットとは?
  2. 様々なダイエット法の比較試験
  3. アトキンス法の長期的な結果は?
  4. お米を食べるアジア人が痩せているのは?
  5. 私の考え

1.アトキンス・ダイエットとは?

アトキンス・ダイエットとは、アメリカの心臓病専門医であるロバート・アトキンス( Robert Atkins )が提唱した低炭水化物ダイエットの一種で、初めの2週間は糖質を1日20グラムまで(その後40グラムまで)に制限し、その代わりに「脂肪」をエネルギー源とするものです。

[The Obesity Code] の著者であるジェイソン・ファン氏によると、アトキンス博士は1963年当時100キロ近くあり、ニューヨークで心臓病専門医として働き始めたことをきっかけに減量に励んだそうである。しかし従来のカロリー制限ダイエットではうまくいかず、昔からある低炭水化物ダイエットを試したところ体重を減らすことができたそうだ。

医師

1972年には『アトキンス博士のダイエット革命』を出版し、この本は瞬く間にベストセラーとなった。

当時、米国医師会では依然として、低脂質ダイエットが基本とされ、高脂質を許す「低炭水化物ダイエット」は受け入れられなかったそうだが、2000年代の初めに、アトキンスダイエットは一大ブームとなった。

2004年には、2600万人のアメリカ人が何らかの低炭水化物ダイエットをしていると答えている。

2000年代の半ばになると、アトキンス(低炭水化物)ダイエットと、かつて標準とされたダイエット法を比較する新しい研究が行われ始めたそうですが、その結果はどうだったのでしょうか?詳しく見てみましょう。この記事の最後に私の考えを述べたいと思います。
(参考文献「The Obesity Code」Dr. ジェイソン・ファン著)

【関連記事】炭水化物が太るのか、カロリーが太るのか?論争

2.様々なダイエット食の比較試験

(【The Obesity Code 】 ジェイソン・ファン著, 2019年)より引用

2007年には、『米国医師会雑誌』がより詳細な研究結果を掲載した。この研究では、 当時よく行われていた4つの異なるダイエット法の比較試験が行われた。その結果、ひとつのダイエット法の効果が抜きんでていた-アトキンスだ。

その他の3つ脂質の摂取量を極めて低くする「オーニッシュ・ダイエット」、たんぱく質・炭水化物・脂質の割合を30:40:30にする「ゾーン・ダイエット」、標準的な「低脂質ダイエット」) は、体重の減少という点については似通った結果となった。

医師と患者

しかし、アトキンスをオーニッシュと比べると、アトキンス・ダイエットのほうは体重が減っただけでなく、全身の代謝もよくなったことが明らかになった。血圧、コレステロール値、血糖値もすべて、大幅に改善していた。

▽2008年に行われたDIRECT試験 (食事介入による無作為比較試験)で、アトキンスはごく短期間で体重を減らせることが、改めて確認された。
イスラエルで行われたこの試験では、
「地中海食ダイエット」「低脂質ダイエット」「アトキンス・ダ イエット」の比較が行われた。

その結果、地中海食ダイエットには、体脂肪減少に大きな効果があるアトキンスと同じような効果が見られたが、AHA(アメリカ心臓協会)が標準とした低脂質ダイエットは、屈辱的な結果に終わった―嘆かわしい結果で、被験者は疲れ切ってしまったし、このダイエット法を好まなかった。このダイエット法を支持していたのは、医学研究者だけだった。
   

3.アトキンス法の長期的な結果は?

引き続き【The Obesity Code 】より

アトキンス・ダイエットを長期にわたって研究したところ、長い目で見ると思ったほど効果が出なかったのだ(ダイエットは長い目で見なければいけない)。

テンプル大学のゲイリー・フォスター教授が2年にわたる研究の結果を公表したのだが、 その結果は、低脂質ダイエットをしたグループとアトキンス・ダイエットをしたグループ のどちらも体重は減少したが、その後、どちらもほとんど同じ割合で体重が元に戻ったというものだった。(略)すべてのダイエット法の試験に対して徹底的なレビューを行ったところ、低炭水化物ダイエットの利点のほとんどが、1 年後にはなくなっていたことがわかった。

スイーツ、お菓子

「カロリー計算をする必要がないのでダイエットが長続きする」というのがアトキンス法の大きなウリのひとつだった。だが、食べる物を厳格に制限するアトキンス法 は、従来どおりカロリー計算をしながら食べる方法に比べても、決して簡単ではないことがわかった。

どちらのグループも、ダイエットが続いた期間は同じで、40%近くが1年以内にやめてしまっていた。

後から考えると、この結果はいくらか予想できた。アトキンス法は、ケー キ・クッキー・アイスクリーム、そのほかのデザートなど、甘いものを厳しく制限していた。(略)

どんなダイエット法を信じていようが、こうした食べ物を食べると太るのは明らかだ。 それでも私たちが食べるのをやめられないのは、甘いものを食べると気分がよくなるからだ。アトキンス・ダイエットはこのシンプルな事実を認めないがために、理論的には正しくても失敗してしまったのだ。

何百万人もの人がアトキンス法をやめ、新しいダイエット革命は、一時期だけ流行ったダイエット法のひとつに成り下がってしまった。アトキンス博士が1989年に設立した会社は、顧客離れにより多額の負債を抱え、倒産した。減量の恩恵は続かなかった。

だが、いったいなぜだ? 低炭水化物のダイエット法のもとになった原理は、「食品に含まれる炭水化物は血糖値を最も上げる」ということだった。血糖値が高いとインスリンの分泌量も増える。インスリンが増えることが、肥満の最大原因だ。 こうした事実は、十分に合理的に見える。いったい何がいけなかったのだろう?

4.お米を食べるアジア人が痩せているのは?

引き続き【The Obesity Code 】より

炭水化物・インスリン仮説は「炭水化物が太るもとだ、なぜならインスリンが分泌されてしまうから」というもので、この説自体は間違ってはいない。だが、この説は不完全だ。様々な問題点が挙げられるが、「米を主食とするアジア人のパラドックス」が最も顕著な例だ。

お米文化

ほとんどのアジア人は、少なくともここ50年、精白した米、つまり精製された炭水化物を主食とした食事をしている。それでも最近まで、 アジアの人々が肥満になるのは極めて稀なケースだった。

1990年代末に行われた調査では、日本の炭水化物摂取量 はイギリスやアメリカと類似しているが、糖分の摂取量ははるかに少ない。炭水化物の摂取量が多いにもかかわらず、中国と日本の肥満率は、つい最近まで非常に低い値だった。(略)

よって「炭水化物・インスリン仮説」は正しくないことになるが、ここには明らかに何か他の要因がある。炭水化物の摂取量だけが問題ではなかったのだ。

精製された炭水化物そのものよりも、「糖分」のほうがはるかに肥満の原因になっているようだ。「食べるのが米か小麦かによって大きな違いが出る」という説も考えられなくもない。アジア人は米を食べることが多いが、西洋社会で食べる炭水化物は精製された小麦粉やトウモロコシ製品だ。(略)

これでは、パズルの肝心な1ピースが欠けたままだ。(引用以上)

5.私の考え

お米か小麦かという話が出たので、まずこれについて少しお話したいと思います。

Dr. Fung氏が指摘されるように、炭水化物の量だけが問題ではない。お米か小麦かと言えば、お米の方が一般的に消化が悪いため、私の理論上は、小麦より太りにくいと言えるかも知れない。

近年の日本における肥満率の増加は、小麦製品も含む消化の良い炭水化物、バランスの悪い食事、不規則な生活リズムが大きな要因だと思っている。

そしてそれらは、私の腸内飢餓理論の「3要素+1」によって説明できると私は信じています。

不規則な生活リズム

(不規則な生活リズム)

<なぜアトキンスもリバウンドしたのか?>

これまでのどんなダイエット法でもリバウンドはつきものですが、リバウンドしないためには、私の言う基本体重(Base weight) そのものを低くしないといけないと考えています。その方法については、以下の記事をご覧ください。

正しく痩せるためには2段階のプロセスが必要


今回のリバウンドについて言うと、
必ずしもアトキンスを含め「糖質制限ダイエットに効果がない」ということにはならないと思っています。正しく痩せるための方法としては一番近いと思っています。しかし、「血糖値・インスリン」にフォーカスしすぎると、もう一つの大事なポイントを見失ってしまうと思っています。


どういうことかと言うと、(この研究の詳細は分かりませんが)いくら糖質を厳しく制限しても、肉や脂質・野菜などの増やし方が足りないと、人によっては、結局カロリー制限ダイエットと似たように空腹を我慢することになり、その場合はこれまでのダイエット同様リバウンドする可能性があると考えています。

糖質制限ダイエットでは糖質を減らすことがポイントと言われますが、私は糖質を減らすと同時に、「肉・脂質・繊維質の野菜、乳製品など含めて消化の悪い食べ物をいかに増やすか」がむしろポイントだと思っています。そしてそれによって、空腹感が減り、吸収率を下げることが必要だと思っています(カロリーを気にして、油脂を減らさないこと)。

糖質を厳しく制限すれば、痩せるスピードは早まるでしょうが、スイーツなど含め糖質をそこまで厳格に禁止する必要もなかったのではないでしょうか?大切なのは無理せず、持続できることです。

まとめ

・1990年代の低炭水化物ブームの再燃をうけて、アメリカでは2000年代の初めに、アトキンスダイエットは一大ブームとなった。短期的に見れば、アトキンス法は体重が減っただけでなく、血圧、コレステロール値、血糖値などすべての数値が、大幅に改善していた。

・しかし、長期的な研究では、低脂質ダイエットなどと同様にリバウンドし、1年後には低炭水化物のすべての利点は失われていた。「炭水化物・インスリン仮説」は不完全な理論であり、多くの研究者がこの理論を捨て去る。炭水化物の量そのものが肥満を決定しているのではなかった。

・(私の考え)このダイエットのもう一つのポイントは、炭水化物以外の「消化の悪い食べ物をいかに増やすか」である。私の言う、基本体重(Base weight) に変化がない場合、基本的に元の食事に戻せばリバウンドは起こりうる。

2017.12.22

炭水化物が太るのか、カロリーが太るのか?論争

<目次>

  1. 知ってもらいたい「炭水化物抜き」の歴史
  2. 糖質制限が医師達に受け入れられなかった理由
  3. 炭水化物と脂質は逆の性質をもつ(私の考え)
<まとめ>

まず、お断りですが、炭水化物だってkcal/gです。
ネット上では、「だから結局カロリー、食べ過ぎが原因なんじゃないの?」という意見もありますが、"カロリーが原因” と考える場合、9kcal/gの脂質を中心に全体量を減らします。一方、"炭水化物(デンプン)が太る原因" とする主張では、炭水化物以外の肉や脂質(油脂)はいくら食べても良いとされていました。

今回は、『炭水化物』と『カロリー』のどちらが太る原因なのか?という歴史的な経緯を振り返ると共に、最後に私の考えを述べたいと思います。

1.知ってもらいたい「炭水化物抜き」の歴史

日本では2015年前後から、 低炭水化物(ロカボ)ダイエットがブームとなっていたのですが、世界に目を向けると、1800年代から何度となく繰り返されていた方法でありました。引用部分が多くなってしまうのですが、ご了承ください。私の理論を説明するうえでも是非ご紹介したい内容です。
   

(「人はなぜ太るのか?」【ゲーリー・トーベス著】より引用)

1825年12月、ブリヤーサバラン(フランスの政治家、美食家)は『味の生理学(The Physiology of Taste)』という本を出版した(30章のうち、肥満に関しては2章[原因、予防])。彼は30年の間に、肥満に苦しんでいる人達と500回以上も夕食を共にし、会話の中で、太った男達は次から次にパン・米・パスタ・ジャガイモへの情熱を語った、という。

炭水化物

これによりブリヤーサバランは確実な肥満の原因を見つけた。

1番目は生まれながらの性質であった。彼は「多くの脂肪を消化できる能力をもつ人は、いわば肥満になるように運命づけられている」と書いた。

2番目は「デンプンと小麦粉であり、砂糖と一緒に使用すれば確実にこの効果を示す」と付け加えた。ブリヤーサバランは「肥満防止食は(略)・・・デンプン質または小麦由来のすべての物を多少厳しく節制する事が減量につながると推量される」と書いた。

ブリヤーサバランの書いた内容は、以来際限なく繰り返され、再発見されてきた。1960年代に至るまで、それは世間の常識で、私達の両親や祖父母が本能的に真実である、と信じたものであった。

<1844年>
ジャン・フランソア・ダンセル(フランス人、医師)は、肥満に関する彼の考えをフランス科学アカデミーで発表した。彼の書いた『肥満や過剰な脂肪蓄積』という本は1864年に英訳された。彼は「肉ではないすべての食べ物(炭素と水素が豊富な食物。つまり炭水化物)は脂肪をつくる傾向があるに違いない」と書いた。

肉食動物

彼は、肉食動物は決して太っていない一方で、草食動物はしばしば太っているとも述べ、患者が ”主に肉のみを食べ” その他の食べ物を少量食べれば、一人の例外もなく肥満を治癒できると主張した。
ダンセルは、彼の時代の医師達が『肥満は治らない』と信じた理由を、「医師達が肥満を治そうとして処方した食事(食べる量を減らすことetc)が、まさに肥満の原因になるものだったためである」とした。(※これはゲーリー・トーベス氏や私のブログのポイントとも通じます)

▽20世紀の初めまでは、一般的に医師は肥満を治らない病気と見なしており、何でも試してみることが妥当であるとされた。患者の食事の量を減らし、もっと運動させることは数ある治療法の1つにすぎなかった。

<1950年代>
ミシガン州立大学の栄養学部の主任マーガレット・オールソンは、過体重の学生に従来型の反飢餓食を与えた場合、彼らの体重はほとんど減らず、彼らは「すっかり活気がなくなり、空腹であることを常に意識していたため、やる気がなくなった」と報告した。

一方、1日数百カロリーの炭水化物と多量の蛋白質・脂肪を含む食事を摂った場合、平均週3ポンド(約1.4kg)減量し、「食間の空腹感はなく、気分の良さと満足感があった」と報告した。

このような報告は1970年代まで続いた。この食事療法を行った人達は、ほとんど努力せずに体重を減らすことができ、その間ほとんど空腹を感じなかった。(引用以上)

2.糖質制限が医師達に受け入れられなかった理由

上記の流れから行くと、炭水化物や糖を控え、その他の肉や脂質を含む食べ物を多く摂ることで、肥満の問題は解決に向かうかに思われますが・・・ここに「カロリーの原則」が出てきます。

(再び「人はなぜ太るのか?」より引用)

1960年代までに、前述した脂肪調整の科学は生理学、内分泌学、生化学の学術誌で議論されたが、医学雑誌や肥満そのものを扱った文献で見られることはほとんどなかった。1960年代から1970年代後期にかけて、医師がこれを信じなくなったとき、それはたまたま現在の肥満と糖尿病の流行の始まりと一致した。

<1963年>
米国医師会誌において、脂肪調整の科学は無視された。太っている人達が、(炭水化物や糖以外の)どんな食べ物でも大量に食べることができるという考えを基礎においた治療法を受け入れる医師はいなかった。

そもそも、人がなぜ太るのかについての明確な理由として、現在も受けいれられている『太っている人達は食べ過ぎているからだ』という理由に反するものであったからである。

そこには別の問題もあった。
アメリカの保健局の専門家は、食事に含まれる脂質が心臓病の原因であり、炭水化物は「心臓によい」と信じるようになっていた。(~略~)炭水化物が「心臓によい」という考えは1960年代に始まり、炭水化物が私達を太らせるという考えと相容れることはなかった。

脂

食事に含まれる脂質が心臓発作を引き起こすとすれば、炭水化物をもっと多くの脂質に置き換える食事法は、たとえ私達を細身にするとしても命を脅かす。その結果、医師と栄養士は炭水化物を制限する食事法を攻撃し始めた。

医師2

<1965年:ニューヨークタイムズ>
「栄養学者に非難された新しい食事法:炭水化物の低摂取は危険である」は、炭水化物を制限した食事は高脂質の性質をもっているため、それを処方することは「大量殺人に等しい」というハーバード大学のジャン・マイヤー(Jean Mayer)の主張を引用した。

まずタイムズは「ダイエットをする人達は、カロリーの摂取量を減らすか、それを燃やすかのどちらかによって過剰なカロリーを削減しない限り、体重を減らせないことは医学的な事実である」と説明した。

今や、それが医学的な事実でないことはわかっているが、1965年の段階では栄養学者たちはそれを知らず、今もなお、彼らの多くはそれを知らない。(~略~)

次に、この食事法は炭水化物を制限するため、より多くの脂肪を摂取することで埋め合わせをする。マイヤーが大量殺人という非難をしたのは、その食事が高脂質の性質をもっていたためとタイムズは説明した。(引用以上)

3. 炭水化物と脂質は逆の性質をもつ(私の考え)

この論争について、少しお話したいと思います。
これまでいくつかの研究で、3大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)を食事にどう組み合わせるかにより、体脂肪のつき方に違う結果をもたらすとことが明らかになってきています。そして、それらは「代謝上の優位性」「ホルモン分泌」などにより説明されると言われています。

もちろんこれらの研究も素晴らしいと思うのですが、私の理論上で付け加えると、「炭水化物と脂質は逆の性質を持つ」ということがポイントとなります。

まず、炭水化物は消化が良く、それのもつ「希薄効果」「プッシュアウト効果」によって消化はさらに早まり、私達はより空腹になります。野菜・脂質・乳製品などが不足するバランスの悪い食事では、最終的には腸内飢餓を引き起こしやすくします。

【関連記事】炭水化物が人を太らせる、血糖値・カロリー以外の特性

meat,fat,oil

それに対し、脂質・肉などは消化が悪く、胃の中に長時間滞在します。特に脂質は腸内飢餓を抑止する効果があります。

炭水化物が少なくタンパク質・脂質の多い食事では、濃密な栄養を腸に送ることになるので、消化が遅くなり空腹感を押さえ、順に吸収率も低下します。

つまり食事の組合せによっては、カロリー摂取量が増えても体重減少効果があると言ってもいいでしょう(脂肪を早く消化できる人にとっては、体重減少効果が薄いことがありうる)。

「私たちを太らせるのは、炭水化物かそれともカロリーか?」という議論は少し極端だと思いますが(どちらにも幾分の真実が含まれるので)、同じ1カロリーであっても、その食べ方によっては体重管理において異なる影響を及ぼすことを理解する必要があるでしょう。

まとめ

・1800年代初期から1960年代に至るまで、いくつかの研究では、太った人たちが食事中の炭水化物を肉や脂肪の多い食事に置き換えることで、無理なく痩せれるということが証明されていた。しかしその頃までに、肥満は摂食障害として理解されるようになり、このダイエット法は生理学、内分泌学などでのみ議論された。

・1960年代から1970年代後期にかけて、ほとんどの医師は、太った人が肉や脂肪をたくさん食べて痩せれるというダイエット法を受け入れなかった。なぜならそれは「カロリーの原則」に反していたからである。

・また、健康の専門家は食事に含まれる脂質が心臓病の原因であり、炭水化物は「心臓によい」と信じるようになっていた。その結果、医師・栄養士は炭水化物制限ダイエットを攻撃し始めた。

・(私の考え)両者の言い分には一理あるが、カロリーの数値がすべてを決める訳ではない。同じカロリーであっても、食べ物の組み合わせによって体重管理において異なる影響を及ぼす。特に、炭水化物と脂質は逆の性質をもつ。

2017.07.10

炭水化物が人を太らせる、血糖値・カロリー以外の特性

目次

  1. もし炭水化物がなかったら
  2. 消化の悪い食べ物は "太りにくい" と言える
  3. 炭水化物が人を太りやすくする効果
(1)希薄効果
(2)プッシュアウト効果
まとめ
ご飯

私達が 「たくさん食べると太る・・・」と考える時、パンやご飯・麺のような炭水化物のイメージだと思います。
今回は、カロリーが増えるからでもなく、血糖値が上がるからでもなく、炭水化物(注1)が人を太りやすくする、もう一つの間接的な意義について説明します。
(注1)厳密には砂糖なども炭水化物の仲間ですが、ここではデンプン、穀類など「多糖類」のことを指して使っています。

1.もし炭水化物がなかったら(私にとって)

私の体重が30kg代に落ちた時、炭水化物の力がなければ全く太ることは出来なかったと思います。私の場合、それは油脂でも砂糖でもできない・・・。つまり私が生クリームたっぷりのケーキや、脂っこいトンカツや中華を食べて太ることはなかったはずです。今回は、その理由を説明します。

正確には、「炭水化物」なら何でもいい訳ではなくて、精製されたもので、消化の良い炭水化物(デンプン)のことです(パン、白米、ポテト、澱粉など)。

ですから、玄米や五穀米、麦飯、アルデンテのパスタ、冷やご飯、チャーハンなどは除外して考えて下さい。これらは、血糖値をあげにくい食品(低GI食品、レジスタントスターチ)としても知られていますが、簡単に言うと、”消化が悪い” ということです。

2.消化の悪い食べ物は  "太りにくい" と言える

先程述べたような血糖値をあげにくい炭水化物、油脂(脂質)、食物繊維たっぷりの野菜、海藻、乳製品を含めて、消化の悪いものを常に食べていると太りにくいと言えます。(私の言う、 基本体重〔Base Weight〕 がアップしずらいという意味)

【関連記事】→「私の言う ”腸内飢餓” の定義」

既に説明済ですが、『腸内に消化されないものが常に残る状態 =食べ物がまだある』ということであり、人それぞれの現状維持のレベルがアップしないからです。
あくまで、痩せている人が毎日きちっと食べれば 「太りにくい」 ということです。既に太ってしまった(太っている)人が少しくらい食べたからと言って、痩せれる訳ではありませんが、これらは常にダイエットで話題にされる食品であり、摂取の仕方によっては痩せることも可能です。

3.炭水化物が人を太りやすくする効果

空腹

それとは逆に、精製された消化の良い炭水化物(白米、粥、パン、ポテト、澱粉など)と水分を一緒に摂ると消化を早めます。よって、消化の良いおかず(タンパク質)などの組合せで、より空腹をつくりやすくします。つまり、「腸内飢餓状態」ができやすくなるのです。

私が今の時点で考えるのは、次の2つの効果です。

(1)希薄効果

たまご飯

消化の良い炭水化物を相対的に多くすると、食事全体の割合で見ると肉や魚、野菜などのおかずの占める割合は相対的に低くなります。
大さじ1杯の油もごはんを2倍にすれば、相対的に油の濃度は低下します。生卵は消化が悪いですが、卵かけ御飯にし、味噌汁・お茶などを一緒に飲めば卵の濃度は低下します。

つまり、消化の良いデンプン水分を加えて攪拌(ミキシング)しているようなものです。おかずの量が全員同じとしたら、ごはんや水分を相対的に多く摂取した方が希薄された栄養を腸に送っているということになります。

バーガー3
炭水化物のミキサー

■例えば、ハンバーガとポテト(ドリンク付き)をおにぎりと一緒に食べたとします。

これを、ミキサーにかけ攪拌すると、肉をデンプンで伸ばしたようなものになる。

ごぼうサラダ

一方、おにぎりをやめて、牛蒡のマヨサラダを加えると・・・炭水化物の希薄効果は薄れ、食物繊維や脂質がプラスされます。
※牛蒡のマヨサラダのカロリーは(158kcal /100g)で、おにぎり(1個、215kcal)とはさほど変わらないけど、その意味あいは大きく違うわけです。だからカロリーベースで考えると間違いが起きるのです!!

健康な食事

▽一方、おかずを増やし、炭水化物を相対的に減らせばどうなるのか?
糖質制限ダイエットで重要なのは、「主食の炭水化物は1/2にしても、おかず(タンパク質や油脂)はむしろ増やすこと」だったはずです。

 「糖質制限ダイエット(ロカボ)の本質とは?」

この場合は、密度の濃い栄養素を腸内に送り込むことで、栄養は確保して空腹になりにくい。しかも常に食物繊維などの難消化性のものが腸内に残るという、逆の効果が発生する訳です。

(2)プッシュ・アウト効果

炭水化物を水分などと一緒に摂取すると、胃が膨らみます(胃の「風船効果」)。そして、消化が良い副菜(おかず)と組み合わせれば胃の滞留時間は短くなり、勢いよく押し出されます。そして腸が活発に動き出します。

親子そばセット

▽例えば、親子丼セット(そば付き)を考えて下さい。
食べて胃は膨れますが、消化が良いために胃が活発にスムーズに動き出します。私は胃腸の調子が悪く、便秘や下痢で苦しむことがよくありましたが、何度かこれで解消されたことがありました。

それに対し、揚げ物や中華料理などを食べると ”スタミナがつく” と思うかも知れませんが、それは 「腹もちがいい、エネルギーが持続する」 ということです。つまり消化スピードは遅くなり、胃の滞留時間が長くなるため、腸内飢餓状態をつくりにくくします。

まとめ

▽以上の理由から、私は以下の様に考えます。

(1)砂糖などの糖類(単糖、二糖)と、多糖類(穀類などのデンプン)は明確に分けて考えるべきである。これらは私の理論上、性質の異なるものです。今話題の糖質制限ダイエットは、主に糖質を減らし血糖値を下げることに重きを置いているので、それだけでは、なぜある人はカロリー量に関わらず痩せることができるのかを説明するには不十分です。

(2)世界的に起きている貧困層での肥満も、安価な炭水化物(穀類、デンプン)やバランスの悪い食事(野菜不足など)が影響していると考えます。彼らの場合、カロリーの摂り過ぎでも、砂糖の摂り過ぎでもないことは容易に想像できるのではないでしょうか?

(3)また、力士(お相撲さん)が体を大きくするためにあっさりした ”ちゃんこ鍋”と白ご飯を食べるのも理にかなっている訳です。

【関連記事】
「豊かだから太るのか、貧困が太るのか?」

「お相撲さん(力士)が太るのも、飢餓メカニズムと言える」

2017.04.29

糖質制限ダイエット(ロカボ)の本質とは?

<目次>

  1. 糖質制限におけるポイントとは?
  2. なぜ、食べて血糖値が上がりにくくなるの?
  3. 私の考える、糖質制限の本質とは?
  4. 血糖値が下がる、単純な理論

1.糖質制限におけるポイントとは?

■直接的な意義

やはり血糖値を上げる唯一の物質、糖質の量を減らすことです。

(「糖質制限の真実」山田 悟著より引用)

糖質は体の中で、基本的にブドウ糖(人間を含むあらゆる動物が活動するための、エネルギー源となる物質の一つ)となります。(~略~)血糖を上げるのは糖質だけです。三大栄養素のうち、タンパク質、脂質、炭水化物に含まれる食物繊維に血糖を上げる機能はありません。(引用以上)
  

■間接的な意義

よくある糖質制限

(おかずも減らした糖質制限ダイエット)

しかし、糖質(炭水化物)だけを減らして、おかずも減らせばこうなります。しかし、これではこれまでのカロリー制限食(空腹をがまんしている)と同じです。大半の人は未だにこういうダイエットをしているのです。

健康的な食事3

(おかずたっぷりの食事)

実は糖質制限(ロカボ)では糖質(炭水化物)は減らしても、副菜となる「おかず」は減らしてはいけない(むしろ増やす)のです。

血糖値の推移

(食事による血糖値の上がり方の比較)

(再び「糖質制限の真実」山田 悟著より)

※食事方法を4パターンにわけ、食後の血糖値を180分にわたり観測したデータです。
S食:主食のみ(白米200g)
M食:S食+主菜(豆腐、ゆで卵)
F食:M食+油脂(マヨネーズ)
V食:F食+野菜(ほうれん草、ブロッコリー)

▽つまり、白米200gだけを食べた時の血糖値の上昇よりも、タンパク質である卵、豆腐を加えたほうが、血糖値のピークを低く抑えられます。マヨネーズをかけて油を加えれば、カロリーは増えますが、血糖の上昇はより緩やかになります。さらに野菜をつけて食物繊維を加えたほうが、より血糖値があがりにくくなるのです。

チャーハン

タンパク質、脂質、食物繊維など、糖質以外の栄養素はすべて、糖質摂取に伴う血糖値の上昇を抑制する方向に働くからです。つまり単純に言えば、白いご飯で食べるよりもチャーハンのほうが(カロリーの摂取を増やすほど)、血糖値の上昇を抑制できるのです。(引用以上)

■山田先生(北里研究所病院 糖尿病センター長)が出演されたNHKの放送です。
「ためしてガッテン」(2016年7月6日放送)

『追跡!糖質制限ダイエットの落とし穴』より

<ポイント1>
糖質は減らしすぎない(1/2程度までに)※ケトン体が出ない程度に

<ポイント2>
糖質は1/2程度に減らしても、エネルギーとなるカロリーは減らさないために、タンパク質や脂質はむしろ増やすこと。

<ポイント3>
空腹を我慢するのではなく、満腹感が出るまで食べる。
タンパク質、脂質は満腹感が出やすいのだそうです。食物繊維もしっかり摂る。

2.なぜ、食べて血糖値が上がりにくくなるの?

(再び「糖質制限の真実」より引用)

それではなぜ、糖質以外の栄養素を含んだ食事をした方が、血糖値の上昇を抑えられるのでしょうか?タンパク質を食べるとGLP-1、脂質を食べるとGIPという消化管ホルモンの分泌量が増えます。

<それらの特徴>

  • インスリンの分泌を促す(血糖値が上がりにくくなる)
  • 腸のぜん動運動を促す(糖の吸収速度がゆっくりになる)
  • 食物繊維は元来、消化吸収されにくいものなので、同時に食べることで糖の吸収を抑えられる効果があります。また食物繊維は、大腸の中で菌の働きにより短鎖脂肪酸という脂に変えられ、そのことが血糖上昇の抑制につながるということが、2014年にフランスのグループにより明らかにされました。(引用以上)

3.私の考える、糖質制限の本質とは?

糖質制限食は古くから、糖質以外なら肉や脂肪をいくら食べても良い(逆に食べないと効果がない)とされてきました。

カロリーは気にせず、肉や脂身を食べてるにもかかわらず、血糖値も下がったし、痩せることができたのです。しかし、何故か私にはしっくりきませんでした・・・。それは「制限」とか「ローカーボ」という言葉が "減らす" イメージだからです。

私の考える、糖質制限の本質はズバリ、 『食べるダイエット』 であると考えています。もちろん血糖をコントロールするという点では、糖質(炭水化物など)の量を規定することに意味はありますが、”痩せる” という効果においては 『食べるダイエット』そのものです。

糖質を減らすだけで、おかず(副菜)を増やさなければ、痩せる効果が生まれないのです。もちろん、一時的には痩せますが、それではカロリー制限と同じように「空腹」を我慢することになります。

主食(ご飯やパン)を少なくし、おかずを増やすメリット

(1)糖質そのものが少なくなること(上述の通り)
(2)おかずが相対的に増え、消化に時間のかかる栄養素や消化不能な食物繊維をより多く腸内に送り込むことです。

炭水化物を多めに食べれば、お腹がふくれても消化が早いため、『食べるダイエット』の効果が薄れます。脂質や肉、魚、豆、食物繊維などが相対的に増えれば消化が遅くなり、満腹感が持続します。空腹感を少なくして、朝昼夕と食べ続けることが重要なのです。

つまり、炭水化物(デンプン)が間接的につくる空腹(腸内飢餓)のメカニズムが緩和されることです。
原因が間接的なので、間接的に処方することが痩せるためには重要と言う訳です。
『ロカボ』(緩い糖質制限、副食を増やすこと)は、私の考え方と処方箋的に近い、と言ったのはその為です。

4.血糖値が下がる、単純な理論

上記の説明(GLP-1, GIPなど)では、何故チャーハンを食べて血糖値が下がるのか、一般人には理解できない点が多いと思います。なので、難しい理論ではなく、単純な理屈を書きたいと思います。

おにぎり (2)

■例えば、空腹を何時間も我慢して、おにぎり2個とジュースを食べたとします。

おにぎり(白米)は消化が良いので、胃を2~3時間ででてしまいます。体が栄養を摂ろうと欲している所に、消化のよいデンプン(糖)が一気に来るわけですから、当然、血糖値もあがってしまいます。

そして、消化がいいのでまた空腹を我慢することになり、当然、血糖はスパイクのような動きになることが予想されるでしょう。

チャーハン

▽逆に、白米をチャーハンにかえれば、肉や卵・油がプラスされるので、胃での滞留の時間が長くなります。つまり簡単に言えば「消化の悪い食べ物」ほど、血糖は急激には上がらず緩やかに持続するというこではないでしょうか?

【参考】消化のスピードと血糖値上昇の関係には、G.I.値(グリセミック・インデックス)やレジスタントスターチなどがあります。

また、チャーハンを食べて3時間後に、先程と同じようにおにぎり2個を食べたとします。
一気に血糖は上がるでしょうか?たぶんNOです。
空腹や運動後で吸収率はアップしますが、さっき食べた物がまだ十分に消化されずお腹の中にあるので、体は栄養を欲してはいません。全く同じものを食べても、食べるタイミングによって、血糖値などもコントロールできるのです。

2017.02.11

糖質制限(炭水化物抜き)賛成派 VS 反対派の言い分

<目次>

  1. 糖質制限、反対派の意見(まとめ)
  2. 賛成派の意見(まとめ)
  3. 糖質制限の欠点を補う『ロカボ』
  4. 制限ではなく、与えること(私の意見)

【関連記事】いま話題のロカボ。炭水化物を減らす意義

古くから糖質制限食(炭水化物抜き)をめぐっては、意見が対立してきました。それは、カロリーが太る原因なのか、それとも糖質(炭水化物)が太る原因なのか?ということだと思います。

そこで、糖質制限食の賛成派と反対派の意見をまとめました。その理論は、今となっては少し古いものも含まれますが、過去の経緯としてまとめましたのでご覧ください。

1.糖質制限、反対派の意見(まとめ)

こわい糖質制限
(参考文献:「本当は怖い糖質制限」 岡本卓 著)

<2001年>
アメリカ心臓協会が、国際的に評価の高い医学誌の中で、「今日あまりにポピュラーとなった低糖質・高たんぱく質食について反対を表明し、強い警告を発する」と公表した。

その理由は、「肉や脂肪などに偏った糖質制限食ではビタミンなどのミネラルが不足し、結果として心臓、腎臓、骨、肝臓に由々しき問題を抱えることになる」と強調している。

高たんぱく食
■反対派の主な意見

)糖質制限に対するオフィシャルな定義(糖質をどこまで抑えれば良いか)、ガイドラインが示されていないうえ、長期的に糖質制限を行った場合の体への影響に対する科学的データはほとんどない。

)糖質以外なら、肉や脂肪をたくさん食べて良いという糖質制限食は、カロリーの原則に反する。

)糖質制限食は高脂質食でもあるため、コレステロール値を上げて、心筋梗塞や脳卒中などの心血管病を引き起こすだろう。(2012年、アテネ大学etc)

)ミネラル・微量元素不足を引き起こす。タンパク質を多く摂ると、腎臓からのカルシウム排泄が増え、骨粗しょう症になりやすい。

)厳格な血糖コントロールは低血糖のリスクを高め、死亡率を上昇させる。血糖コントロールはほどほどが良い。(2008年、アメリカ国立衛生研究所)

)低血糖がうつ病・認知症のリスクを高める。

日本では、2012年に第55回糖尿病会で糖質制限食を食事療法の一つのオプションとして認めるという画期的なものだったが(糖質1日最低130gは摂る)、2013年には従来のカロリー制限食優先に戻り、糖質制限食については安全性などの確保の面から勧められないとのスタンスに変わった。(「本当は怖い糖質制限」(2013年)より)(引用以上)
  

2.賛成派の意見(まとめ)

■賛成派の主な意見

(参考文献:「人はなぜ太るのか?」 ゲーリー・トーベス著)

)人類の歴史上、炭水化物(穀物)を食べているのは僅かで、それまでは主に肉や脂身、野菜で生活していた

(2)カロリー制限食では均等にカロリーを減らすか、脂肪からのカロリーを優先的に減らすことになる。これは太ることのない脂肪やタンパク質を減らし、太りやすい炭水化物を相対的に多く食べることとなる。この食事法はあまり効果がなく、常に空腹がつきまとう

)食事に炭水化物がなくても、肉や脂肪をとっているから脳の栄養源として「ケトン体」を燃料とすることができる。

摂取する脂肪(脂質)=『体脂肪』ではない。低脂肪・高炭水化物食が公式に承認されたことで、心臓病の発症は減るどころか、肥満や糖尿病はむしろ増えている。

)野菜やチーズ・魚・肉などは制限していないので、ミネラルなどが不足することはない。カロリー制限食の方が均等にカロリーを減らすとすれば、すべての必須栄養素も減ることとなる。

)カロリー制限食も、体重減少に関する明確なエビデンス(科学的根拠)がないのに、なぜ糖質制限食のみに厳格なエビデンスを求めるのか?

3.糖質制限の欠点を補う『ロカボ』

白米2
(「糖質制限の真実-日本人を救う革命的食事法 ロカボのすべて-」山田悟著より引用)

ロカボは、1日あたりの糖質量を70~130gに抑えて食べる食事法です。(1食あたりの糖質量を20~40gにし、それを3食、間食で10g )

【食事の幅が広がった・続けられる】
現在の日本人は平均的に、1日では270~300gの糖質を食べていますので、ロカボではその半分弱に抑えるという感覚になります。
つまり、緩やかな糖質制限であるということです。これにより、食べられるものの幅はぐんと広まり、美味しく楽しく食べて健康になれる食事法と言えます。
また、糖質を食べるのをやめるのではなく、いかに上手に食べるかという考え方がベースにあります。低糖質な素材でつくったパンやパスタ、うどんなどのロカボメニューもあります。基本的に食べてはいけないものがないうえに、満腹になってもいいので続けやすいのです。

ダイエット

【ダイエットのみなら緩く】
例えば糖尿病の患者が治療としてやる場合は、やはり糖質の制限値にはある程度こだわった方が有効性は高くなります。
その一方、健康増進やダイエット、美容として取り入れたいという健常者に関しては、制限値に厳密にこだわらなくてもいいと思います。たまに高糖質なものを食べる日があっても、それまでの努力が全く無になることは起こりません。

【ケトン体が出るのを防ぐ】
普通の糖質制限と違うのは、最低でも1食あたり20g以上の糖質を摂ることで、ケトン体が出るような極端な低糖質状態を防いでいます。極端な糖質制限のリスクが示唆されている以上、まだ積極的にやるべきではないというのが私(山田医師)のスタンスです。

<ケトン体>

人間を含め、動物はブドウ糖と脂肪酸を主なエネルギー源にしています。しかし人間の脳は脂肪酸が入っていけないため、ブドウ糖を好みます。また赤血球はエネルギー源としてブドウ糖しか使うことができません。長期間ブドウ糖が摂れない状態が続くと、脳はブドウ糖を赤血球にゆずります。

その時、脳がエネルギー源として使うのが脂肪酸を分解してつくられる『ケトン体』という物質です。確かに脳はケトン体で生きていけますが、一方で血中にケトン体が溜まってくると、体が酸性に傾きケトアシドーシスという意識障害が起こることがあります。

【エビデンスレベル1での証明】
歴史の中で、糖質制限はエビデンスレベル4(症例報告)だけで世の中に広まってしまったので、糖質制限食事法は叩かれ、信頼を築くことができず、民間療法の扱いに留まっていました。

しかし、2007年~2008年にかけてのエビデンスレベル1(無作為比較試験)の論文により、「カロリーは気にせず、糖質のみを控える(1日あたり120g以下に設定)」という食事法が「カロリーや油を控える」食事法よりも肥満、血糖管理、血液中の脂質の改善に有効であるということが証明されたのです。
つまり、民間療法扱いから確固たる根拠のある食事法とかわったのです。(引用以上)
  

4.制限ではなく、与えること(私の考え)

肥満や糖尿病等の治療において、『カロリー制限』による食事療法には効果がないことが実証されつつあります。

だからと言って、『炭水化物が悪者だ』と言うような厳格な糖質制限にも賛成はできません。糖質(炭水化物)は私達の貴重なエネルギー源であることには変わりはないし、そこは医者などが言うようにバランスに一理あると思います。

私のスタンスとしては、糖質をある程度減らすことは有効だと思いますが、極端な方法は良くないと考えます(ロカボに近い)。「炭水化物が私たちを太らすのか、それともカロリーか?」ではなく、もう少し考え方を変える必要があるのです。


私の理論上、太る原因は糖質(炭水化物)そのものではなく、精製された炭水化物(デンプン)と偏食、野菜不足などにより作られやすくなる、腸の『飢餓状態』です。つまり炭水化物(デンプン)が直接的ではなく、間接的に飢餓状態を作りやすくし、肥満に寄与しているということです。おのずと治療法は、「炭水化物を減らし、おかず(副食)を増やす」ことが必要となります。原因が間接的だから、その対処法も間接的という訳です。

依然としてダイエットといえば、「カロリー を減らすか、 炭水化物を減らす」など、何かを減らすことが必要だと考えられています。この考え方はもっともらしく聞こえますが、私の理論上は正しいとは言えません。一定の法則に従い "食べる(=与える)"ことで痩せることが可能という、私なりの考えを今後も書いていきます。


▽そういう視点でみると、糖質制限食は実は「(その他の食材をたっぷり) 食べるダイエット」と考えられ、賛成派と反対派の主張は、【カロリー制限 VS 糖質制限】という対立の構図ではなく、(カロリー制限は、炭水化物などの糖質も控えますから)【食事制限 VS 食べるダイエット】の構図とも言えます。

(ロカボ)の本質は、実は食べること

2016.12.20

今話題のロカボ(糖質制限)。炭水化物を減らす意義

目次

  1. 『ロカボ』って何?
  2. カロリー制限の限界
  3. 炭水化物抜きの歴史は古い
  4. シュガーバスター(Suger Busters)
  5. 炭水化物を減らす間接的意義(私の考え)
    <まとめ>

日本では、2015年前後から糖質制限ダイエットが多くの人に受け入れられブームとなっています。日本では伝統的にお米の文化ですが、戦後は米食よりもパンや麺類を好む人が増え、西洋化の食事と共に肥満が増えてきていると、多くの人が感じています。今回は、痩せるだけでなく、血糖値異常、その他の生活習慣病にも有効とされる、話題のロカボ・ダイエットについて説明したいと思います。

このブログの最後に私の考えを述べたいと思います。結論から言いますと、このダイエット法は私のアイデアと近いのですが、この食事法の一番のポイントは「インスリン」である、ということには疑問をもっています。

1.『ロカボ』って何?

ロカボ
(『糖質制限の真実・日本人を救う革命的食事法ロカボのすべて』 山田悟著 より引用)

そろそろ混同されがちな「糖質制限」と「ロカボ」、また「低糖質」「炭水化物抜き」について整理しておきたいと思います。
もっとも分かりやすく、ダイエット法として最初に広まったのは、「炭水化物抜き」でした。しかし、炭水化物抜きだと、食物繊維までも抜くことになってしまいます。一緒に食べることにより血糖上昇をなだらかにすることのできる食物繊維は控えるべきではないので「炭水化物抜き」はあまり良くないということになります。

糖質制限」という言葉は正確性は増すものの、「制限」という言葉はどうしてもネガティブな印象を与えてしまいます。そこで「低糖質」という言葉に置き換えればいいのですが、それは消費者庁の定める「低糖類」(糖類が食品100g中に5g未満)という言葉と混同されやすく、誤解が生じがちです。

糖類、糖質、炭水化物

そういう訳で、これまでにない別な言葉の必要性が高まりました。低糖質を英訳した「ロー・カーボハイドレート」から『ロカボ』という言葉をつくり、普及させたいと考えているのです。

ロカボとは、緩やかな糖質制限であるということです。糖質を1食20~40グラム(3食)、それとは別に1日10グラムまでのスイーツを食べて、1日の糖質摂取量をトータル70~130グラムにしましょう、というのが定義です。

普通の糖質制限と違うのは、最低でも70gの糖質を摂取することで、ケトン体が出てくるような極端な低糖質状態になることを避けていることです。また極端な糖質制限は食事の幅が狭まりますが、ロカボでは食べられるものの幅はぐんと広がるのです。(引用以上)

2.カロリー制限の限界

(再び『糖質制限の真実・・・』より引用)

<2015年の真実>
とにかく、健康の為にを控えるべきという考えは、一般に疑われることなく長く信じられていました。ところが、21世紀になってからの様々なデータは、例え食べる油を控えても、血液中の脂質の指数は良くならないし、食べるコレステロールを控えても、血中のコレステロール値は下がらないということを明らかにしてきました。

2015年になり、日本の厚労省にあたるアメリカの政府機関は、約40年ぶりに『食事摂取基準』を改訂しました。その内容は「食べるコレステロールは制限しません。食べる油も制限しません。なぜならば、それらを控えても心臓病の予防にも肥満の予防にもつながらないからです」というものでした。(~略~)

日本でもアメリカと同様、かつて糖尿病の増加は、身体活動量の低下と油の摂取の増加が原因であると考えられていました。しかし現実には、21世紀に入ってからは油の摂取量を減らしたにもかかわらず、糖尿病は増える一方だったのです。

グラフ

具体的な数値でいうと、
【1997年】血糖異常者 :1,370万人
【2007年】  〃   :2,210万人

に激増しています。このグラフから読み取れることは、食べる油を減らしたがために、加速度的に血糖異常者を増やしてしまったのではないかということです。(~略~)

確かに2008年のアメリカ糖尿病学会のガイドラインでも「腎臓を保護したかったら、蛋白質を制限しなさい」と言われていました。しかし、2013年には「タンパク質の制限はしてはいけません。なぜなら制限しても何もいいことがないからです」となりました。

この急激な変化に戸惑われるかもしれませんが、この10年間で、油についても糖質についても蛋白質についても、それまで常識だと思われていたことが軒並み打ち消され、正反対になりました。これが今の栄養学です。(引用以上)

3.炭水化物抜きの歴史は古い

上述の話だけを聞いた人にとっては、ロカボ(糖質制限)が真新しい治療法のように思われるかも知れませんが、実は1800年代から何度となく繰り返されていた方法でありました。

これについては、詳しくは以下のブログをご覧ください。
炭水化物が太るのか、カロリーが太るのか?論争

4.シュガーバスター(Suger Busters)

1990年代後半からアメリカ(ニューオーリンズ)を中心に、『食の革命』とも言われブームとなったシュガーバスターを紹介します。いわば、ロカボの前身のようなものですね~。

「シュガーバスター:カロリー神話をぶっつ飛ばせ」(2001年)より抜粋
シュガーバスター

Sugar Bustersのポイントは「インスリン」の分泌を調整することです。インスリンのコントロールは糖質の摂取を制限することにかかっています

逆にそれさえ守れば、カロリーは気にせずにステーキや魚のグリル、チーズなども食べれるということで、街のレストランなどもこぞってシュガーバスター・メニューを作り、街ぐるみで盛り上がったそうです。

fish dish

著者の一人であるスチュワード氏(会社社長)はシュガーバスター食事法に出合ってから、(5年余りで)10キロ近く減量し、その体重も維持していますし、血液検査の結果も良好です。これがカロリーは気にせず(1日3千kcalの日も)に食べながらの成果なのです。(~略~)

『シュガーバスター』ではその食事法が紹介されて以来、痩せることができた人、血管をきれいにできた人、糖尿病が改善した人、何万人もの実践者がその効果を身をもって証言してくれています。(引用以上)

5.炭水化物を減らす間接的意義(私の考え)

糖質制限ダイエットの食事の摂り方は、私の勧めようとするダイエット方法と近いのですが、私の腸内飢餓の理論の観点から言うと、少し意味合いが異なります。それについて説明します。

このダイエット法では、砂糖も含めた炭水化物がインスリン分泌を促すので「人を太らせる犯人」のような扱いをされている気がするのです。血糖値異常が様々な病気に関連していることや、炭水化物が肥満の大きな一因という点ではもちろん同感です。しかし、私はインスリン分泌は脂肪蓄積を促すとしても、肥満の人と痩せている人の根本的な違いを生み出すものではないと信じています。

このブログで何度も言うように、私が考える肥満の根本的な原因は「基本体重が高くなっていること」であり、それは腸の飢餓のメカニズムによって起こります。

これは消化の良い炭水化物を多く含むバランスの悪い食事によって起こりやすくなります。
そういった食事は血糖値を上げ、インスリン分泌を促す傾向はあるのですが、基本体重をアップさせ人を太らせるのは別のメカニズムであり、私の理論上、インスリン分泌はあまり関係ないと考えています。

では何が影響するのかと言うと、炭水化物(特に多糖類)のもつ「希薄効果」「プッシュアウト効果」です。それが他の要因と重なって、間接的に腸内飢餓を引き起こしやすくします(間接的にということが重要です)

▽一方、痩せたいと思う場合は、私もロカボ・Sugar Bustersなどと同様に、食事中の炭水化物の割合を減らし、逆に脂質や肉、野菜、乳製品などを増やすことが効果的であると考えています。

この場合、炭水化物を減らす直接的な意味としては、即効性のエネルギーとなる糖質を減らすわけですから、体はエネルギーを得るためにタンパク質(アミノ酸)や脂肪からエネルギーを得ないといけません。こういった食事には「代謝優位性」があると言われています。また、血糖値の上昇が抑えれるわけですから、生活習慣病の改善にも役立つと言われています。

meat,fat,oil

間接的な効果としては、逆に消化の良くない食べ物(特に脂質)の割合を増やすことで、濃密な栄養を腸内に送ることです。
それにより消化にかかる時間が長くなり、未消化物を長時間にわたり腸内にとどめます。結果として、空腹感が抑えられ、順に吸収率が低下します。

単に炭水化物も肉も脂質も減らすだけなら「少なく食べ、空腹を我慢する」ということであり、これまでの研究結果が示すように、そのようなダイエット法は長期的に上手くいかないのです。

つまり、炭水化物が直接的に人を太らせる悪者ではなく、お肉・野菜・チーズやオイルを相対的に多くし、バランスよく食べ、空腹感を減らすことが重要になってくると思っています。

【関連記事】脂質(脂肪)についての3つの視点

糖質制限を推奨する人の中には、「インスリンの分泌さえ下げれば、脂っこい食事・チーズ・肉であっても、カロリーを気にせずに何でも食べてしかも痩せれるのだから、カロリー摂取量ではなくインスリン(炭水化物)が原因であったんだ。」と説明する方もいますが、その説明は間違っていると考えます。

まとめ

(1) 日本では、2015年頃から糖質制限が、一時的な流行ではなく、息の長いブームとなっている。その背景には、多くの人が炭水化物(米、パン、麺など)を多く含む食事を好み、それと共に、肥満や糖尿病が増えてきていることにある。
(実際のところ、多くの人は「カロリーの原則」をまだ信じているので、カロリーも減らしつつ、炭水化物も減らしている。)

(2) アメリカ(ニューオリンズ)では1990年代の後半からSugar Bustersダイエットがブームとなった。日本でブームとなる、15年以上も前のことである。

(3) 低炭水化物ダイエットを推進する医師などの中には、「インスリンの分泌を調整することが、このダイエット法の鍵である」と言うが、私は少し意見が異なる。炭水化物を減らしつつも、他の肉や、油料理、野菜、乳製品を相対的に増やすことに意義がある。

2016.06.03

豊かだから太るのか、貧困が太るのか?

目次

  1. 豊かさが肥満の原因と言われるが・・・
  2. 貧困なのに肥満が多かった事例
  3. なぜ彼らは太っていたのか?
  4. 豊かになったと言っても、『食べ物の質』はどうだろう?

私のブログの内容とも関連する、興味深い話があったので紹介します。大部分は本からの引用ですが、この最後に私の考えを述べたいと思います。
【関連記事】→貧困層における、低栄養(痩せ)と肥満の共存は矛盾していない

1.豊かさが肥満の原因と言われるが・・・

「人はなぜ太るのか?」【ゲーリー・トーベス著】より引用

1990年代半ば
米国疾病予防管理センター(CDC)の研究者が、米国において肥満が流行しているというニュースを発表して以来、専門家達は過食座りっぱなしの行為が肥満の要因であると非難し、これら2つを比較的豊かな現代社会のせいにした。

<2003年>
ニューヨーク大学の栄養学者マリオン・ネッスルは、雑誌サイエンス(Science)において「改善された豊かさ」が食べ物と娯楽産業に支えられ、肥満の流行を引き起こしたと説明した。

彼は、「これらの産業は人々を、誇大広告で売り込まれた高エネルギーで低栄養価の食物の消費者、座りっぱなしを助長する車やテレビ・パソコンの消費者へと変えた。体重が増えることは、こうした商売に都合がよい」と述べている。

■エール大学の心理学者ケリー・ブラウネルは、バーガーやスナック菓子、子供を運動不足にするテレビやゲームなどに囲まれた生活を「毒性環境」という言葉で説明した。

彼は、「チーズバーガーやポテト、スーパーサイズの食べ物、ジュースやキャンディ、ドライブスルーなどは、昔は滅多に見かけなかったが、今や草や木、雲のようなものである」と言った。さらに「パソコン、テレビ、ゲームは子供を家に閉じこもらせ、運動不足にする」と説明した。

▽世界保健機関(WHO)は、世界的な肥満の流行を説明するために全く同じ理論を使い、収入の増加や都市化、「体を動かすことの少ない仕事への移行」、「受け身な娯楽の追及」が原因であると非難した。

肥満の研究者たちは、この状態を正確に述べるために準科学的な用語を使う。彼らは、私たちが現在生きている環境を「肥満の原因となる」環境と呼び、これは、「瘦せた人を太った人へと変化させやすい環境」を意味する。(引用以上、p.24-25)

現在も基本的にこの考えが世界中で支持され、高カロリーな食べ物や運動不足が肥満の原因であると、大半の専門家は説明します。

2.貧困なのに肥満が多かった事例

しかし、ここで私達が考えなければならない問題は、貧困層においても肥満が拡大しているという事実です。

(再び「人はなぜ太るのか」(ゲーリ・トーベス著)より引用)

しかし、この背景のなかで考慮されるべき1つのエビデンスは、肥満が豊かさではなく貧困と関連している(特に女性において。そしてしばしば 男性においても)という十分に証明された事実である。
私たちは貧しければ貧しいほど太りがちになる。

1970年代の初期まで、栄養学者と研究熱心な医師達の間では、肥満は「栄養失調」の問題で、今日のような「栄養過多」の問題とは考えられていなかったのである。

1901年~1905年
2人の人類学者(ラッセル、フルドリカ)がアメリカアリゾナ州に住むピマ族を調査し、ピマ族の特に女性に肥満が多いことを述べた。ピマ族は1850年代を通じてきわめて成功した狩猟者・農民であったが、1870年までには最も貧しい民族の1つとなり、「飢餓の時代」を生きるようになった。

20世紀の初頭に2人の研究者が訪れたとき、ピマ族は育てることができる作物をまだつくってはいたが、毎日の暮らしは政府の配給に頼っていた。

この観察において非常に注目すべきところは、当時、ピマ族が最も豊かな米国先住民族の1つから、最も貧しい民族の1つになったばかりだった ということである。なにがピマ族を太らせたにせよ、豊かさと収入の増加 はそれとは何の関係もなく、むしろその逆であったように思われる。

四半世紀(25年)後
シカゴ大学の2人の研究者が米国先住民のスー族を調査した。
スー族は「住むのにはふさわしくない」掘っ立て小屋に、しばしば1部屋に4~8人の家族が住む状況にあった。その多くには水道の設備もなく、子どもたちの40%はトイレのない家に住んでいた。子ども32人を含む15家族は「おもにパンとコーヒー」で生活していた。これは私たちの想像を絶するほどの貧困である。

それにもかかわらず、現在、肥満の流行のまっただ中にある私たちの肥満率と彼らには大きな差がなかった。シカゴ大学の報告では、成人女性の40%、男性の25%以上、子どもたちの10%「もれなく肥満と定義されるだろう」と記されている。

1950年~1980
西インド諸島、南アフリカ、チリ、ガーナなど世界各地で貧困で低栄養なのに肥満率の高い集団が見つかった。
(引用以上)

3.なぜ彼らは太っていたのか?

(引き続き「人はなぜ太るのか?」より引用)

(事例1:1960年代初頭、マンハッタン)

1960年代初期、ニューヨーク(マンハッタン中心部)の住民を調査した結果、肥満女性は富裕層より貧困層で6倍多く、肥満男性は2倍多かった。

肥満の流行は豊かさが原因で金持ちになるほど太り、その一方で肥満は 貧困と関係し貧しくなるほど太る可能性が高くなることがありうるだろうか?

それは不可能ではない。おそらく貧しい人たちには金持ちのように、やせたままでいなくてはという周囲からのプレッシャーがない。驚くべき ことに、これが矛盾に対する明確な説明の1つとして受け入れられてきたのである。

さらに一般的に受け入れられている別の説明は、太っている女性ほど社会の下流の男性と結婚するため下の階級に集まり、やせている女性は上流の男性と結婚するから、貧困層で肥満の女性が多いというものである。

3番目の説明は、貧しい人たちは金持ちのように運動をする暇やスポーツクラブに入会するお金がないといったものや、公園や歩道がない地域に住んでいるため、彼らの子どもたちは運動や散歩をする機会がないというものである。

これらの説明はあてはまる部分もあるかもしれないが、 無理があり、深く掘り下げて調査するほどよけいに矛盾が目立つものである。(P.26)

(事例2:1900年初頭、ピマ族)

それでは、なぜ彼らは太っていたのか? このピマ族に訪れたような長年の飢餓は、体重を増やしたり維持したりするのではなく、逆に減らすはずである。そして、政府の配給が飢餓をなかったものとするほど多かった のであれば、なぜピマ族は過剰な配給で太り、飢餓時代以前の豊富な食物では太らなかったのだろうか?

身体活動量から見れば、以前の活発な生活から座りがちな生活になったとはいえ、ピマ族の女性が村でほとんどの重労働(収穫、運搬)を行っていたのに、女性の方が太っていたのである。(P.29)

配給

おそらく答えは、摂取した食物の種類、つまり量よりもに問題がある。

これこそが、ラッセルが「食物の中のあるものが、きわだってぜい肉の原因になっているように思われる」と書いたときに示唆したことである。

また、フルドリカも同様に、ピマ族はこの時すでに「白人の食糧に含まれる」すべてを食べており、これが問題の鍵であったかもしれないと指摘している。

1900年のピマ族の食事は、その1世紀後に私たちの多くが食べているものと非常に似ていたが、それは量的にではなく、質的にであった。(引用以上)

4.豊かになったと言っても、『食べ物の質』はどうだろう?

▽1~3を踏まえて、私なりの考えを述べたいと思います。
まず肥満を考える上で、”豊かになったから肥満が増えた”と考えるのは安直ではないでしょうか?

デスクワークと炭水化物

確かに私達の生活は自由で、物にあふれているという点では "豊か" である。ある程度の収入があれば、自由に活動し、好きなものを買い、好きな物を食べることができます。仕事もデスクワークが増え、それほど動かなくても良い。

しかし、少ない給与の中でやり繰りしていると、食費にばかりお金をかけれる訳でもなく、もちろん忙しければ時間もなく、朝はトーストとコーヒ、昼はおにぎりやカップ麺などと炭水化物に偏ることもあります。朝食または昼食を抜くこともあります。

夕食で補完

特に逆三角形型の食事(図参照)では、夕食は比較的豪華であっても、朝~夕にかけては質素で飢餓状態が生まれ易くなります。
さらに太りやすいという人(ダイエット中の人)に限って、『昨日は食べ過ぎたから、今日は少なくしよう』という様に、食事を抜いたり、簡単なもので済まそうとする。昨日の過剰なカロリーを今日で相殺しようとする考え方も間違っていると言えるでしょう。

つまり、腸の内面(飢餓状態)という視点で見ると、『豊か』と言われる我々の社会も、貧困で肥満が多かった集落と共通する部分があるのではないでしょうか?

極論すれば、貧困層での肥満は、『ダイエットをして食べるのを我慢していたにもかかわらず、最終的に体重が以前より増えてしまう』メカニズムで説明できる、と言えるでしょう。
  

(再び「人はなぜ太るのか」より引用)

炭水化物を食べたからと言って全員が太る訳ではないが、太る人にとってその原因は "炭水化物" である。

炭水化物

(~略~)これらは入手可能な食べ物のうち最も安価なカロリー源でもある。これは貧困な人ほど肥満になる可能性が高い理由をはっきりと説明している。これらの集団の人達は、食べ過ぎや動かないことにより肥満になるのではなく、彼らが依存している食べ物(食事の大部分を構成するデンプン精製された穀物)が彼らを太らせるのである。(引用以上)

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