— トピックス —
ダイエット・減量法

2025.12.12

減量後に体重のリバウンドを促進する生物学的反応

要 約

・カロリー制限によって個人が体重を減らすと、代謝、神経内分泌、自律神経、行動の変化の協調的な作用を伴う適応反応が引き起こされ、体重の再増加が促される。これは、減量のためのカロリー制限がしばしば失敗する理由を説明できる可能性がある。


(1) 代謝適応
カロリー制限による減量では、体組成の変化から予測される範囲を超えて、有意に安静時エネルギー消費量が低下する。この適応は、かつて肥満だった人だけでなく、もともと痩せ型の人にも見られ、体重が元に戻りやすくなる状態を生み出す。

     
(2) 内分泌機能
レプチンやグレリンなど、消化管や脂肪組織から分泌されるホルモンは、食欲、食物摂取量、およびエネルギー消費を調節している。カロリー制限は満腹感を低下させ、空腹感を増大させるため、過食を招く可能性があります。

      
(3) 食物報酬、依存症との類似性
美味しい食べ物は、ドーパミンなどの神経伝達物質を通じて、報酬に関連する神経回路を活性化させます。この快感をもう一度得たいという欲求が、さらなる摂食への動機づけとなる可能性があります。カロリー制限や断食は、特に高カロリーで非常に美味しい食品の報酬価値を高める可能性があります。

      
(4) 抑制制御、過食
短期的なダイエットの成功は、「食べたい」という欲求を一時的に抑制する抑制反応の強化によるものかもしれない。しかし長期にわたる食事制限は、報酬に関連する反応を強め、抑制制御を弱める可能性があり、その結果、食欲の衝動に抵抗することがますます困難になる。

       
(5) 脂肪細胞の大きさと数
減量によって脂肪細胞の大きさは縮小するが、数は基本的に変化しません。縮小した脂肪細胞では脂肪分解が低下し、脂肪を再び蓄積しやすくなることで、体脂肪の再増加を促す可能性があります。

       
(6) 腸内飢餓
上記の(1)~(5) の反応とは異なり、私の「腸内飢餓」仮説では、食べた物が完全に消化され、腸管内に未消化物が残らない状態を、生体が飢餓シグナルとして認識する可能性を想定しています。

       
結  論
一部の研究者は、「これらの減量後に体重の再増加を促す生物学的力は非常に強力であり、克服するのは容易ではない」と指摘する。私は、こうした反応を「克服する」のではなく、できるだけ強く起こさないような食事・生活習慣を取り入れることが、長期的な体重管理には重要だと考えます。

【全 文】

<目次>

1.リバウンドを促進する多様なメカニズム
(1)代謝適応
(2)内分泌機能
(3)食物報酬、依存症との類似性
(4)抑制制御、過食
(5)脂肪細胞の大きさと数
(6)腸内飢餓

2.結  論

<はじめに>

「肥満者は食べる量を減らし、運動するように」という処方箋は、長期的な成功率の低さが繰り返し報告されているにもかかわらず、現在でも体重管理のための一般的なアプローチとして広く用いられています[1]

一方で、近年の遺伝学・疫学・生理学などの研究から、体重や体脂肪は生体によって一定の範囲に保たれるよう調節されていることが明らかになっており、ダイエットの長期的な成功率の低さを説明する生物学的な枠組みが整いつつあります。個人が減量すると、代謝、神経内分泌系、自律神経系、さらには行動にまで及ぶ協調的な適応反応が引き起こされ、減量した状態を維持することに抵抗することが示されています[4]

     
今回は、このような減量後の体重回復(リバウンド)や、場合によってはさらなる体重増加を促す可能性のある生物学的メカニズムについて簡単に紹介します。また、これらの生物学的メカニズムと、私の「腸内飢餓」理論との関係や違いについても説明します。

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1.リバウンドを促進する多様なメカニズム

   
(1)代謝適応

エネルギー制限は安静時エネルギー消費量(REE)の減少と関連している[5]。多くの研究では、行動的な減量により、体組成の変化や食べ物の熱効果に基づいて予測されるよりも、安静時および総エネルギー消費量が有意に大きく減少すると報告されている[4,6]

この現象は適応性熱産生(AT)または代謝適応と呼ばれ、体重が戻るのに理想的な状況を作り出す[7]

      
代謝適応は、身体が飢餓状態と認識した際に、生存に必要なエネルギーコストを低下させ、延命を図る反応として目的論的に解釈することができるが、興味深いのは、肥満の人にも同様に作用し、エネルギー貯蔵量(体脂肪)の大小によって弱められないように見えることである[7,8]

基礎代謝の低下

(著作者 rawpixel.com /出典:Freepik)

しかし、その開始時期についての証拠は一貫性がない[9]。いくつかの研究では、エネルギー制限から1週間以内にATを検出した。これは、インスリンの急激な低下、グリコーゲン貯蔵の枯渇、細胞内外の液体の損失に関連している[10]

対照的に多くの証拠は、ATの発症するまでに数週間かかることを示唆しており[11]これは、貯蔵脂肪の減少によるレプチン分泌の低下やその他の生理的適応と関連している[9,12]

ATの持続性についても議論の余地が残るが[7]、減量前より低い体重でエネルギーバランスが回復した後も代謝適応が何年にも渡って続く可能性が指摘されている[13]

(2)内分泌機能

消化管と脂肪組織から分泌される多くのホルモンが、食欲、食物摂取量、エネルギー消費量、および体重の調節に関与していることがわかっています[14,15]

   
レプチンは脂肪細胞から分泌されるホルモンで、食欲を抑え、エネルギー消費に影響を与えることで体重を調節します。レプチンレベルが高いと脳はエネルギー貯蔵量が多いと解釈し、レプチンレベルが低いとエネルギー貯蔵量が少ないと解釈します[16]

レプチンは、エネルギー制限後 24 時間以内に低下すると確認されているが [17]、多くの研究では、脂肪組織の損失に対して予想されるよりも大きなレプチンの減少が報告されています[18,19]

レプチンの主な役割は、体重調節そのものではなく、飢餓の防止である可能性が示唆されており[15,20]レプチンレベルが閾値(特定の反応の起こる境界値)未満になると、まだ豊富な脂肪が蓄積しているにもかかわらず、飢餓防御反応が誘発され[17]、代謝率と身体活動性が低下し、空腹感が増加する[ 21,22]

(注1)この閾値は脂肪組織の増加に伴い上昇すると提案されている[17]

   
さらに、減量した人において、食欲促進ホルモンであるグレリンの増加と、食後満腹シグナルであるペプチドYY(PYY)とコレシストキニン(CCK)の減少が観察されています[23]

したがって、食事療法による減量は満腹感の低下と空腹感の増加を同時に引き起こし、過食を促す可能性があります[15]

(3)食物報酬、依存症との類似性

食物報酬とは、食物に対する脳の報酬的な反応であり、食事をすることで得られる喜びや満足感と、「また食べたい」という動機付けを生み出します。脳内の報酬系という神経回路が活性化され、ドーパミンなどの神経伝達物質が放出されることで、幸福感や食欲増進につながります。

ドーパミン

(著作者 rawpixel.com /出典:Freepik)

食物摂取量の調節には、恒常性因子非恒常性(快楽的)因子の密接な相互関係があります。

前者は栄養必要量に関連し、血液と脂肪貯蔵庫内の利用可能なエネルギーを監視し、エネルギーバランスを維持する。後者の多くは脳の報酬系に関連しています[24,25]

食物摂取量は、多くの場合は恒常性によって調整されるが、報酬関連シグナルは、本来は安定した体重を維持するために働く恒常性シグナル(満腹感)を容易に上書きするため、過食につながる可能性があります[25,26]

現代の神経画像技術(機能的磁気共鳴画像法:fMRI) を用いた実験により、栄養状態(例:空腹時 vs. 摂食時)と食物刺激(例:高カロリー vs. 低カロリー、食欲をそそる vs. 味気ない食品)は、どちらも脳報酬系の活動を変化させることが知られている[27-29]

健康的な人を対象とした最近の研究では、短期又は長期のカロリー制限や絶食は、特に高カロリーで美味しい食品の報酬価値を高める可能性があることが示された[27,30]

これらの研究結果は、カロリー制限ダイエットがしばしば失敗する理由を説明できるかもしれません[28,30]

<食物依存と薬物依存:その共通点と違い>

薬物と食品は共通する特性を持つ一方で、重要な点において異なる。

コカインなどの乱用薬物は脳のドーパミン回路に直接作用するが、食物は同じ回路により間接的に影響を与える。味覚や嗅覚からの情報、消化管に存在する栄養センサー[31]、さらに食物の消化・栄養吸収の過程で分泌されるホルモンは、いずれも脳へ情報を伝え、ドーパミン系を活性化します[25]

食物中毒

砂糖・甘味料・塩・脂肪などの食品成分に依存性の様なプロセスを引き起こす可能性があるかどうかは議論されているが[25]、脂肪や糖分を含む高カロリーな食品(例えば、チョコレート、アイスクリーム、クッキー)や塩味のスナック菓子などは、ストレスの多い現代社会では快楽と満足感を生み出す強力な報酬となるため、「食品依存」という概念で薬物依存との類似性が指摘されている[32,33]

 
(4)抑制制御、過食

食物摂取は、主として、恒常性維持系、報酬関連系、抑制系という3つの相互作用する神経系によって調節される[15]抑制系は、主に自制心や意思決定をつかさどる脳領域が関与しており、食行動を調整し、過剰な食物摂取を抑制するのに役立っている[34]

食物報酬の認知制御

人間において、美味しい食べ物を求め摂取したいという衝動は、実行機能(自制や意思決定に関わる認知プロセス)によって抑制される。

日常生活における中心的なジレンマの一つは、自分の内的目標(例えば、健康維持や体重管理のためにスイーツを控える)と、食欲をそそる食物を摂取するという目先の報酬とのバランスを取ることです。この葛藤は、食べたくて仕方ない食べ物(例えば、ドーナツやピザ)がすぐに手に入る場合に特に困難です[25]

過食

(著作者及び出典: Freepik)

ダイエットの短期的な成功は、抑制性神経反応の亢進が、おいしく高カロリーな食品を消費するという神経生物学的衝動を一時的に克服できることを示唆している[35]

しかし、近年の研究では、報酬関連の神経活動も、抑制系の神経活動と並行して増加することが示されています[36]

つまり簡単に言えば、食事制限が長引くに連れ、食欲をそそる美味しい食品を食べたいという衝動が抑えられなくなる可能性がある。

若者を対象とした前向き研究、並びにげっ歯類による動物実験の結果は、24時間の断食や無脂肪食を特徴とする著しいカロリー制限は、将来の無茶食い神経性過食症の発症リスクを高める可能性を示唆している[37,38]

(5)脂肪細胞の大きさと数

減量ダイエットでは脂肪細胞の大きさは縮小するが、脂肪細胞の数は減らない[39]。体重が抑制されていた人の体重再増加が、過形成(脂肪細胞数の増加)によって促進されるかどうかはまだはっきりと分かっていないが[15]、肥満ラットによる研究では、絶食後の再給餌で脂肪細胞数の増加(過形成)が観察された[40]

人においても、以下の可能性が指摘されている。

通常、エネルギーが不足しているときには、脂肪貯蔵庫のトリグリセリドは分解され、細胞にエネルギーを供給します。

しかし、脂肪分解の速度は脂肪細胞の大きさと細胞表面積に関連しているようであり[41]、脂肪細胞が小さくなることで脂肪分解の速度が低くなります。

  
縮小した脂肪細胞が、脂肪の分解よりも蓄積を促すように機能的に変化すると、それらは再び徐々に肥大化し、失われた体脂肪の再増加を促す可能性があります[15,42,43]

体脂肪増加

(著作者 brgfx /出典 Freepik)

(6)腸内飢餓

上記の(1)~(5)の反応は、エネルギー制限や減量に伴って生じる一連の抗飢餓(あるいは抗減量)メカニズム(注2)と考えられています[15]。その一方で、私の「腸内飢餓」仮説では、食べた物が完全に消化され、腸管内に未消化物が残らない状態を、生体が飢餓シグナルとして認識する可能性を想定しています。

腸内飢餓は、減量目的の厳格な食事制限(食事を抜く、極少量しか食べないetc)で引き起こされる場合もあるが、より気軽なダイエットや、減量とは直接関係のない生活習慣(朝食抜き、軽い昼食、遅い夕食、一日二食など)でも、引き起こされる可能性があります。

    
また私は、腸内飢餓による適応反応によって、体重の設定値上昇を示唆する体重増加が起こりうると考えていますが、この体重増加には、体脂肪だけでなく筋肉などの除脂肪組織も含まれると想定しています。そのため、このメカニズムは、主として体脂肪の増加によって説明される従来の肥満形成メカニズムとは異なる可能性があります。

【関連記事】なぜ、腸の飢餓状態で太るのか?


(注2)これらの反応は、十分なエネルギー貯蔵量があるにもかかわらず作動するため、一部の研究者は「抗飢餓」ではなく「抗減量」メカニズムという表現を用いています[15]

2.結 論

今回紹介した (1)~(5) の生物学的反応と減量後の体重回復(リバウンド)との因果関係は、現時点では十分に証明されているわけではない[15]。しかし、ダイエット後にリバウンドを経験した多くの人にとって、実感として納得できる点が少なくないのではないでしょうか。

一部の研究者は、「これらの減量に抵抗し、失った体重を取り戻そうとする生物学的力は非常に強力であり、行動介入によって減量を試みる人のほとんどにとって克服することは難しい」と指摘しています。一方で、長期的な減量を実現するためには、こうした生物学的反応そのものを弱める介入法の開発が必要であるとも述べています[15]

   
私の考えも基本的な方向性は同じですが、アプローチが少し異なります。
私は、生物学的反応を弱める介入法の開発だけでなく、そもそも抗飢餓(抗減量)メカニズムをできるだけ誘発しない食事・生活習慣を選択することが、長期的な減量にはより重要ではないかと考えています。

具体的には、精製炭水化物や超加工食品を減らしながらエネルギー摂取量を適切に調整することは重要です。

一方で、野菜、海藻、乳製品、加工度の低い肉・魚、ナッツ類などの自然由来の食品は、むしろ積極的に摂取することが望ましいと考えています。特に、消化されにくい成分を含む食品や、消化に時間を要する食品(注3)を十分に摂ることに意味があります。

注3)脂質を多く含む食品も、食事全体の内容や摂り方によっては、必ずしも避ける必要はないと考えています。

季節の食材

このような食事を継続することで、満腹感が持続し、空腹感が軽減されます。長期的に、腸脳軸を介して「食べ物が十分に存在する」という情報が脳へ伝わりやすくなる可能性があると、私は考えています。

【関連記事】リバウンドしない減量には、2ステップ必要
          

<参考文献>

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[2-3](削除)

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2025.08.07

ダイエットの普及が肥満の増加に拍車をかけている可能性

要 約

      
(1) 過体重や肥満の有病率の増加と並行して、ダイエットの普及率も過去数十年間にわたり増加している。ダイエットが逆説的に肥満を助長しているのではないかと懸念されている。

   
(2) いくつかの観察研究は、ダイエットと体重増加の間に少なくとも部分的な因果関係がある可能性を示唆している。一方、一部の研究者は、ダイエットは食べ過ぎ傾向を反映する代理マーカーにすぎないと主張している。

   
(3) いくつかの前向き研究では、青少年や中年女性、さらには正常体重の人が行う減量ダイエットが、将来の体重増加を予測する強力な因子であることが示唆されている。

    
(4) 青少年を対象とした研究では、不健康な体重管理行動(断食、食事を抜く、極少量しか食べない、食事代替品の使用など)を継続した男女で、10年後のBMI増加が最も大きかった


考  察

(5) 観察研究だけで、ダイエットと体重増加との因果関係を証明することは難しい。

しかし、長期追跡研究や双子研究では、ダイエット自体が体重増加に関与している可能性が示されている。特に、不健康な体重管理行動を行った人では、その後の体重増加が有意に大きいことが繰り返し報告されている。


結  論

(6) すべてのダイエットが体重増加につながるわけではない。しかし、一部の人が行う不健康な体重管理行動は、体重増加に関与している可能性がある

     
(7)近年の研究では、大幅な減量を伴う厳格な食事制限は、生物学的な飢餓反応を引き起こし、減量後の体重回復や、場合によっては減量前を上回る体重増加につながる可能性があることが明らかになってきた。

また、不健康な体重管理行動は、「腸内飢餓」を助長することで、体重の設定値を上昇させる方向に働く可能性がある

【全 文】

<目 次>

  1. ダイエットと肥満に関する近年の背景
  2. 観察研究における問題と注意すべき点
  3. ダイエットは体重増加につながるのか?
  4. 結  論

<はじめに>
近年、世界中で減量の為にダイエットをする人は増加傾向にありますが、ダイエットが肥満の増加に拍車をかけているのではないかと一部で懸念されています

例えば、テレビに出演する女性の俳優やアナウンサーの中には、以前より体重が増えたように見える人もいる。しかし、彼女たちが日常的に過食をしているとは考えにくく、むしろ体重管理のために食事制限を行っている可能性もある。

今回は、ダイエットの普及と肥満の増加に関連性があるのかについて、観察並びに介入研究の結果を基に考えてみたいと思います。

1.ダイエットと肥満に関する近年の背景

(1) 1992年、アメリカ国立衛生研究所が招集した専門家委員会は、次のように結論づけた:「管理された環境下での減量プログラムを継続すれば、参加者は通常、体重の約 10%を減らすことができる。しかし、体重減少後1年以内に体重の1/3から2/3が戻り、5年以内にほぼ全部が戻る」のだと[1]

また、長期的な結果に関する研究では、ダイエットをした人の少なくとも1/3は、減った体重よりもリバウンドする体重が多いことが示されており[2]、ダイエットが逆説的に、本来の目的とは正反対の結果を招いている可能性があるのではないかと懸念されている[2, 3]

     
(2) 1983年に出版された本「ダイエットは太る」では、ダイエットで体重を減らすことは体重管理には逆効果であり、体重が増減を繰り返すたびに、減った脂肪より多くの脂肪が戻ってしまうという考え方が提唱された[4]。それ以来、ダイエットが長期的な体重増加を引き起こすかどうかは、科学者の間では物議を醸し、活発な議論が続いている[5, 6, 7]

(3) 1998年時点で、米国人はダイエットに関連する製品やサービスに年間 330 億ドル以上 を費やしているにもかかわらず[8]、肥満 (BMI≧30) の有病率は 30.5%(2000年)から 35.7% (2010年)、42.4% (2018年)と着実に増加してきた[9]

ダイエットの普及率も、過体重や肥満の有病率の増加と並行するように、過去数十年間、継続的に増加している[10] (表-1 参照)

ダイエット普及率の推移

表-1:ダイエットの普及率の推移(アメリカ)

・イングランドで行われた横断調査 (1997-2013) では、減量を試みる人の割合は 1997年の 39%から、2013年には 47%へ増加した。

すべてのBMIカテゴリーにおいて、減量を試みる人の割合は調査期間を通じて増加傾向を示していた[15]

(2013年の、BMIカテゴリー別の減量を試みる人の割合は [表-2] の通り)

BMI別の減量の試み普及率

表-2:減量の試み普及率 (2013年 イングランド )

(4)このように、肥満の有病率の増加と並行して、減量を試みる人の割合も増加している。しかし、このことだけで両者に因果関係があるとは言えない。

一部の研究者は、ダイエットと体重増加との関連性は、少なくとも部分的には因果関係によるものだと示唆している[16,17]。一方で他の研究者は、ダイエットは体重増加傾向の強い人々を反映する代理マーカーに過ぎず、ダイエットをしなければ体重はさらに増加していた可能性が高いと主張している[18]

    
(5) いくつかの前向き研究では、青少年 [17,19,20]や中年女性 [21]、さらには当初正常体重であった人[5,21,22] が減量目的でダイエットを行うことが、将来の体重増加を予測する強力な因子であることが示唆されている。

・ミネソタ州で行われた 10年間の前向き研究(1998~2009年)では、青少年 1,902名(男性 819名、女性 1,083名)を対象に、ダイエットの実施状況とBMIの変化が5年ごとに追跡された。

その結果、調査開始時と5年後の両方でダイエットや不健康な体重管理行動(注1)を報告した男女は、ダイエットをしていなかった人に比べて、10年後のBMI増加が大きかった[17]


注1) 不健康な体重管理行動には、断食、食事を抜く、極少量しか食べない、代替食品やダイエット薬の使用、嘔吐など、通常は推奨されない減量行動が含まれる。

思春期の女学生

出典:Freepik (photo by Prostooleh)

特に、「食事を抜くこと」や「極少量しか食べないこと」は最も多く報告された不健康な体重管理行動であり、男女ともに有意な BMI 増加と関連していた。さらに、男性では食事代替品(粉末や特別な飲料)の使用が、女性ではダイエットピルの使用が、その後の BMI の大きな増加と関連していた。

興味深いことに、調査開始時に過体重(25≦BMI<30)であった女子では、不健康な体重管理行動を継続した群で10年間の BMI 増加が最も大きく(5単位以上)、そのような行動を全くとらなかった群では BMI の増加はごくわずかであった[17]

結論として、この調査結果は、青少年期のダイエットや不健康な体重管理行動が、長期的な体重増加につながる可能性を示唆している[17]

(6) 2003年には、1998年の国民健康面接調査のデータが分析され、米国成人における具体的な減量方法の実態が報告された (表-3参照)

減量に取り組んでいた人のうち、「摂取カロリーを減らし、運動量を増やす」と回答したのはわずか3分の1であった [23]

米国成人における減量戦略

表-3:米国成人の減量方法の実態

2.観察研究における問題と注意すべき点

ダイエットとその後の体重変化に関するこれまでの観察研究では、一貫性のない結果が得られている[22]

数年に及ぶ観察研究の多くでは、自己申告によるダイエット実施者で、その後の体重増加が報告されているが[17,20,21,22]、一方で、ダイエットが減量と体重増加の両方を予測するという結果も報告されている[24,25]。こうした結果の違いには、いくつかの要因が関係している可能性がある。

(1) どの様なダイエットか?

多くの研究では、開始時点での「ダイエットの実施状況」や「過去のダイエット歴」は調査されているが、具体的にどのような方法でダイエットを行ったのかについては、あまり調査されていないようである[21,22,26]。 

また、「ダイエット」や「減量の試み」という言葉はやや曖昧であり、人によって解釈が異なる可能性がある[17]
健康的な食事や運動習慣(例:自然由来の食品を多く摂る、超加工食品を減らす、朝食を摂る、運動を行う)を実践した人は減量を維持できるかもしれない。

一方、一時的な効果しかもたらさない不健康な体重管理行動をとった人は、最終的に減量を維持できず、体重が増加する可能性もある。

(2) 調査期間とダイエットを行った時期

また、調査期間やダイエットを行った時期によっては、長期的な体重変化を適切に評価できない可能性がある。

いくつかの研究では、調査開始時のダイエット状況を基に、その数年後(例えば、2年・5年・10年)の体重やBMIの変化が評価されている[20,21,22,26]

しかし、ダイエットとリバウンドを繰り返している人では、体重変動が大きいことが考えられる。

体重の恒常性(体重の設定値理論)の観点からみれば、調査開始時にダイエット中であった人は、本来の体重(設定値)よりも一時的に体重が低下していることがあり、その後ダイエットを中止しただけでも体重は増加しうる。一方、調査期間の終了間際からダイエットを開始した人では、一時的な減量効果によって体重が大きく減少していることも考えられる

さらに、調査間隔が5年や10年と長い場合、その間に開始または中止した体重管理行動が把握されていない可能性もある。

<その他の注意点>

今回は取り上げなかったが、観察研究においては、自己申告の限界や、体重増加に関与する「交絡因子の影響」などにも注意する必要がある。また、成長期には筋肉量や体重が自然に増加するため、青少年を対象とした研究では、その影響も考慮する必要がある。
        

3. ダイエットは体重増加につながるのか?

結論から言えば、観察研究だけでダイエットと肥満リスクの増加との因果関係を特定することは難しい。しかし、私は以下の観点から、ダイエットが体重増加を助長している可能性は高いと考えている。

(1)ダイエットは単なる代理マーカーなのか?

一つの考え方として、「ダイエットは世界的な体重増加傾向を反映する代理マーカーにすぎず、それ自体が体重増加を引き起こすわけではない」というものがある。むしろ、ダイエットをしなければ体重はさらに増えると考えられている[18]

しかし、第1節 (5)の思春期の青少年を対象とした10年間の調査では、開始時でダイエットを行っていたものの、5年後の時点で中止した人と、継続した人の軌跡を調べることができた。研究者らは、ダイエットを中止した人の体重増加は、それらを継続した人に比べはるかに小さかったことから、「ダイエットをしなければ人はさらに体重が増える」という主張は支持していない[17]

(2) 遺伝的に肥満傾向にある人がダイエットをしているのか?

ダイエットと肥満に関するもう一つの考えは、「ダイエットをすると太るのではなく、遺伝的に肥満傾向にある人ほどダイエットをする可能性が高くなる」というものだ[6]

   
これについても、思春期の青少年を対象とした10年の調査で、その主張とは異なる結果が出た。

調査開始時に既に過体重であった女子では、不健康な体重管理行動を継続した群は、そのような行動を全くとらなかった群と比較して、BMIの増加が有意に大きかった。この研究では、ダイエットそれ自体が、体重増加に影響している可能性があると示唆された[17]

           
さらに、フィンランドにおける双子研究では、5kg以上の意図的減量回数の異なる双子の体重の変化が縦断的に調査された。この研究では、体重増加に遺伝や家族的要因が関与することは否定できないものの、ダイエットそれ自体も体重増加に影響している可能性があると示された [16]


(3) 減量後に体重増加を促すメカニズム

近年の研究により、体重を調整するエネルギー恒常性への理解が進んでいる。
大幅な減量を伴う制限食は、代謝・ホルモン・脳神経系の変化を伴う生物学的な飢餓反応を引き起こし、食欲の増進や過食につながる可能性がある。その結果、体重は元に戻ろうとし、場合によっては減量前を上回ることもある[27,28]

また、体重管理を目的とした断食(24時間何も食べない)では、比較的軽度のダイエット行動よりも、将来的に過食症を発症するリスクが高くなる可能性が示唆されている[29]

さらに、古典的なミネソタ飢餓実験や米国陸軍レンジャーの多重ストレス実験において、正常体重の被験者の体重が、回復期間中に一時的に過剰増加することが報告されている[30,31]


(4) 腸内飢餓との関連

私の腸内飢餓理論では、食べた食品が腸内で完全に消化されてしまう状況を、身体が「食べ物がない」と認識する可能性を示唆している。これは、食品加工の進展や超加工食品の普及によって生じやすくなった可能性のある、豊かな社会でも起こりうる「現代的な飢餓」とも言える。

カロリー制限ダイエット、特に不健康な体重管理行動(食事を抜く、極少量しか食べない、食事代替品の使用など)は、この腸内飢餓をさらに助長している可能性がある。

4.結  論

すべてのダイエットが体重増加につながるわけではない。
健康的な食事パターンや運動習慣を取り入れることで、減量に成功し、その後も減った体重を維持できる人もいる。実際、地中海式ダイエットの遵守は、過体重や肥満のリスク、さらには長期的な体重増加と逆相関することが報告されている[32]

野菜を調理する男女

出典:Freepik (Photo by Katemangostar)

一方、断食、食事を抜く、極少量しか食べない、食事代替品の使用といった不健康な減量戦略を行った人では、ダイエットをしなかった人や健康的な減量戦略を実行した人よりも、その後の体重増加が有意に大きいことが繰り返し報告されており[17,33]、本来の目的とは逆の結果を招いている可能性がある。

近年の研究により、大幅な減量を伴う厳格な食事制限は、代謝・ホルモン・脳神経系の変化を伴う生物学的な飢餓反応を引き起こすことが明らかになってきた[27, 28, 34]。これらの変化は、減量後の体重回復や、場合によっては減量前を上回る体重増加を説明できる可能性がある。

       
私は、こうした生物学的反応に加え、食事制限などの不健康な体重管理行動が「腸内飢餓」を助長することで、体重の設定値を上昇させる方向に働いている可能性が高いと考えている。

<参考文献>

[1]「自発的な体重減少とコントロールの方法」. NIH Technology Assessment Conference Panel. Ann Intern Med. 1992 Jun 1;116(11):942-9. 

[2] Mann T et al. 「メディケアの効果的な肥満治療の模索:食事療法は解決策ではない」. Am Psychol. 2007 Apr;62(3):220-33. 

[3] Bacon L, Aphramor L. 「体重科学:パラダイムシフトの証拠を評価する」. Nutr J. 2011 Jan 24;10:9. 

[4]Cannon G, Einzig H. Dieting makes you fat. London: Century Publishing; 1983.

[5] Jacquet P et al. 「ダイエットによって太る人がいる理由:体組成の自己調節の観点から体重増加をモデル化する」. Int J Obes (Lond). 2020 Jun;44(6):1243-1253. 

[6] Hill AJ.  「ダイエットをすると太りますか?」 Br J Nutr. 2004 Aug;92 Suppl 1:S15-8. 

[7] Lowe MR. 「ダイエット:将来の体重増加の代理か原因か?」 Obes Rev. 2015 Feb;16 Suppl 1:19-24. 

[8] Cleland R et al. 「市販の減量製品とプログラム:消費者が得るものと失うもの」. Crit Rev Food Sci Nutr. 2001 Jan;41(1):45-70. 

[9] National Center for Health Statistics, National Health and Nutrition Examination Survey, 1999–2018.

[10] Montani JP et al. 「心臓代謝疾患の危険因子としてのダイエットと体重増加:本当に危険にさらされているのは?」 Obes Rev. 2015 Feb;16 Suppl 1:7-18. 

[11] Williamson DF et al. 「成人の減量の試み:目標、期間、減量率」. Am J Public Health. 1992 Sep;82(9):1251-7. 

[12]Serdula MK et al. 「減量を試みる頻度と体重管理戦略」. JAMA. 1999 Oct 13;282(14):1353-8.

[13] Weiss EC et al. 「2001~2002年の米国成人の体重管理習慣」. Am J Prev Med. 2006 Jul;31(1):18-24. 

[14] Yaemsiri S et al. 「米国成人の体重認識、過体重診断、体重管理:NHANES 2003-2008調査」. Int J Obes (Lond). 2011 Aug;35(8):1063-70. 

[15] Piernas C et al. 「減量の試みの最近の傾向:イングランドの健康調査から」. Int J Obes (Lond). 2016 Nov;40(11):1754-1759. 

[16]Pietiläinen KH et al. 「ダイエットは太る?双子研究」. Int J Obes (Lond). 2012 Mar;36(3):456-64. 

[17] Neumark-Sztainer D et al. 「思春期のダイエットと不健康な体重管理行動:10年間のBMIの変化」. J Adolesc Health. 2012 Jan;50(1):80-6. 

[18] Stice E, Presnell K. 「ダイエットと摂食障害」. In: Agras WS, editor. The Oxford Handbook of Eating Disorders. Oxford University Press; USA: 2010. pp. 148–179.

[19] Neumark-Sztainer D et al. 「なぜダイエットは青少年の体重増加を予測するのか? :5年間の縦断的研究」. J Am Diet Assoc. 2007 Mar;107(3):448-55. 

[20]Viner RM, Cole TJ. 「思春期から成人期にかけて体重が変化する人は誰でしょうか?1970年英国出生コホート」. Int J Obes (Lond). 2006 Sep;30(9):1368-74. 

[21]Korkeila M et al. 「減量の試みと大幅な体重増加のリスク:フィンランド成人を対象とした前向き研究」. Am J Clin Nutr. 1999 Dec;70(6):965-75. 

[22] Sares-Jäske L et al. 「自己申告によるダイエットとBMIおよびウエスト周囲の長期的変化」. Obes Sci Pract. 2019 Mar 26;5(4):291-303. 

[23] Kruger J et al. 「減量の試み:米国成人の具体的な実践」. Am J Prev Med. 2004 Jun;26(5):402-6. 

[24] Bild DE et al. 「若年成人の体重減少の相関関係と予測因子」. Int J Obes Relat Metab Disord. 1996 Jan;20(1):47-55. PMID: 8788322.

[25] Coakley EH et al. 「男性の体重変化の予測因子:医療専門家追跡調査の結果」. Int J Obes Relat Metab Disord. 1998 Feb;22(2):89-96.

[26] French SA et al. 「働く成人の2年間の体重変化の予測因子:健康な労働者プロジェクト」. Int J Obes Relat Metab Disord. 1994 Mar;18(3):145-54. PMID: 8186811.

[27]Maclean PS et al. 「ダイエットに対する生物学的反応:体重増加のきっかけ」. Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol. 2011 Sep;301(3):R581-600. 

[28]Ochner CN et al. 「肥満者の減量後に体重が戻ることを促進する生物学的メカニズム」. Physiol Behav. 2013 Aug 15;120:106-13. 

[29]Stice E et al. 「断食は過食症および過食症の発症リスクを高める:5年間の前向き研究」. J Abnorm Psychol. 2008 Nov;117(4):941-6. 

[30] Keys A et al. (1950) 『人間の飢餓の生物学』. Minnesota: University of Minnesota Press.

[31] Nindl BC et al. (1997) 「長期間のエネルギー不足後の、痩せ型で健康な男性における身体能力と代謝回復」. Int J Sports Med 18, 317–324.

[32]Lotfi K et al. 「地中海式ダイエットの遵守、5年間の体重変化、および過体重と肥満のリスク」 .Adv Nutr. 2022 Feb 1;13(1):152-166. 

[33]Savage JS, Birch LL. 「体重管理戦略のパターンは、女性の4年間の体重増加の違いを予測する」. Obesity (Silver Spring). 2010 Mar;18(3):513-20.  

[34]Mann T et al. 「肥満の流行」という文脈における公衆衛生の促進:誤ったスタートと有望な新たな方向性」. Perspect Psychol Sci. 2015 Nov;10(6):706-10.  

2024.01.28

低炭水化物 (ロカボ)ダイエット: 糖質を減らすことだけが重要ではない

目次

  1. ロカボって何?
  2. ロカボの効果(まとめ)
  3. 増加する糖尿病・血糖異常
  4. ダイエットの鍵はインスリンの制御なのか?
  5. 日本で広がる食事の偏り、質の低下

   <まとめ>

アメリカでは1990年代後半から、低炭水化物食のブームがあったと言われていますが、日本では、2015年前後から糖質制限(ロカボ)ダイエットが多くの人に受け入れられブームとなっています。日本では伝統的にお米の文化ですが、戦後は米食よりもパンや麺類を好む人が増え、西洋化の食事と共に肥満が増えてきていると、多くの人が感じているようです。

今回は、痩せるだけでなく、血糖値異常、その他の生活習慣病にも有効とされる、話題のロカボ・ダイエットについて説明したいと思います。


【 私のスタンス:肥満と血糖異常症の問題を分けて考えます。】
一般的に、糖質制限を推奨する専門家は、肥満の原因はカロリーの過剰摂取ではなく、血糖値を上昇させインスリン(注1)の分泌を促す炭水化物(糖質)であると考えているようだ(炭水化物-インスリンモデル

加えて、肥満が一因とされるインスリン抵抗又はインスリンの分泌能力低下などによって糖代謝異常となり、最終的に糖尿病などの生活習慣病が発症すると考えられている。

つまり、肥満の問題も血糖異常などの症状も同じインスリンを中心とした一連の流れとして考えられているのですが、私は肥満は炭水化物の異なるメカニズムが原因だと考えているので、分けて説明したいと思っています。

注1:食後に血糖値が上昇すると、それに反応して膵臓から分泌されるホルモンで、唯一、血糖値を下げる作用があります。余ったブドウ糖はグリコーゲンや中性脂肪に合成され蓄えられるが、その合成を促進するのもインスリンの働き。)

1.『ロカボ』って何?

『糖質制限の真実』(2015)より

日本では、「糖質制限ダイエット」という言葉が一般的には使われていましたが、「制限する」という言葉はどうしてもネガティブな印象を与えてしまいます。そういう訳で、これまでにない別の言葉を使う必要がありました。英語の Low carb から『ロカボ』という言葉をつくり、日本でも普及させたいと考えているのです。

ロカボとは、厳格ではなく "緩い” 糖質制限を意味します。糖質を1食あたり20~40グラムで3食、それとは別に1日10グラムまでのスイーツを食べて、1日の糖質摂取量をトータル70~130グラムにしましょう、というのが定義です。

少しづつ、多種のおかず

厳格な糖質制限と違うのは、最低でも70gの糖質を摂取することで、ケトン体が出てくるような極端な低糖質状態になることを避けていることです。

また厳格な糖質制限は食事の幅が狭まりますが、ロカボでは食べられるものの幅はぐんと広がるのです。炭水化物の摂取量(を減らすこと)さえ守れば、肉料理、魚料理、チーズや野菜など様々な料理を食べることができるのです。

(参考文献:山田悟,「糖質制限の真実 :日本人を救う革命的食事法ロカボのすべて」, 幻冬舎, 2015, P.114)

2.ロカボの効果(まとめ)

日本での低炭水化物ダイエット推進の第一人者である、山田先生の考えをまとめると以下のようになります。

(1)食事によって血糖値が上昇すると、膵臓からインスリンが分泌されるが、インスリンの分泌が過剰だと体重増加につながる可能性がある。日本人は欧米人に比べインスリンを分泌する能力が弱く、太っていなくても血糖異常になる人が多い。2型糖尿病を発症する人の半分以上は肥満 (BMI≧25)ではない。(P.33, 70)


(2)インスリン分泌の頻度が高いほど、また血糖値の上限値が高いほど、膵臓に負担がかかり、やがてインスリンの分泌に支障をきたし糖尿病の発症につながる可能性がある。また血糖の激しい上下動は、老化や細胞の癌化 、認知症(アルツハイマー)、心臓病発症リスクの増加などにつながる可能性がある。(P.35, 63, 68, 70)

(3)血糖値を上げるのは糖質だけである。低糖質の食事にすることで、血糖値の上昇を穏やかにすることができる。
糖質以外の蛋白質、脂質などの栄養素、繊維質には血糖値の急激な上昇を抑える働きがある。つまり白米よりチャーハンの方が血糖値の急激な上昇を抑えれるのである。(P.42, 47)

炒飯

(4)健康の為に油脂を控えるべきという考えは、日本では疑われることなく長く一般に信じられてきたが、21世紀になってからの様々なデータは、たとえ食べる油脂を控えても、血液中の脂質の指数の改善、心臓病や肥満の予防につながらないと言うことを、明らかにしてきました。

トランス脂肪酸については避けるべきだが、その他の脂質については無理に控える必要はない。肉などの動物性脂肪(飽和脂肪)の摂取についても、日本人だけに限定すると、心筋梗塞や脳卒中の発症率との関連性はみうけられない(2013年データ)。(P.53)


(5)糖質を減らしても、脳はケトン体(脂肪酸から作られる)をエネルギーとして使うことができる。極端な糖質制限では、体にケトン体がたまってくることで血液が酸性に傾き、ケトアシドーシスという状態を引き起こす可能性がある。このようなリスクがある以上、極端な糖質制限はするべきではない。(P.75)


(6)厳格なカロリー制限や低脂肪食を長期に渡り続けられる人はまずいない。緩い糖質制限はカロリーも気にしなくていいので取り組みやすく、他の食事療法と比べても結果が出やすい。その人にはどんな食事療法があっているのかというオプションを広げていくことが大切である。(P.92)

(参考文献:「糖質制限の真実 :日本人を救う革命的食事法ロカボのすべて」)

3.増加する糖尿病・血糖異常

国民健康・栄養調査によると、炭水化物の摂取量は過去60年以上に渡り減少し続けている。一日の摂取エネルギーも、1970年代初頭までは増加しているが、それ以降減少傾向にあります。

それにもかかわらず、近年、糖尿病患者や血糖異常などの糖尿病予備軍は増え続けているのです。

これについてのより詳細なデータ (1955~2019) と、私の考える摂取量以外の原因については、以下の記事をご覧ください。

【関連記事】減少する糖質摂取量、増える糖尿病(血糖異常)

   

4.ダイエットの鍵はインスリンの制御なのか?

血糖値をコントロールするという意味では、緩めの低炭水化物ダイエットは効果的と思うのですが、肥満の問題についてはどうでしょうか?

「人はなぜ太るのか?」の著者であるゲーリー・トーベス氏によると、「カロリーの摂り過ぎが太る原因なのか?それとも炭水化物か?」は1800年代から議論されており、その理由として、低炭水化物ダイエットではその他のカロリー源(肉・脂質など)の量を気にすることなく食べても痩せることができたからです。

これが、カロリー理論を絶対的に信じ、脂質が心臓に悪いと考える専門家の猛反対を受けた訳ですが[1]、今では介入試験などによって低炭水化物ダイエットの高い減量効果が示され[2]、一定の地位を獲得していると言われています。

【関連記事】炭水化物が太るのか、カロリーが太るのか?論争


低炭水化物を推奨する専門家は、炭水化物が血糖値を上げ、インスリンの分泌を促すから太る原因だと考えているようであり、炭水化物さえ減らせば、インスリン分泌を促さない蛋白質・脂質はカロリーを補うためにも食べても良いとされていますが、私はその説明では不十分だと思っています。

私が付け加えたいのは以下です。

消化の良い精製された炭水化物や蛋白質(加工食品)に偏る食事はすばやく消化され、そういう食事が続くと空腹感が増し、いくつかの条件が重なると腸内飢餓が引き起こされやすくなるのです。

炭水化物のもつ特殊性(希薄効果、プッシュアウト効果)が腸の飢餓状態をさらに加速します。(つまり、腸内飢餓と関係するのはデンプンなどの多糖類であり、砂糖などの単純糖質ではない。)

【関連記事】
炭水化物が人を太らせる:希薄効果、プッシュアウト効果

ですからその対処法として、痩せるためには逆の事、つまり炭水化物をある程度減らすだけでなく、その他の消化に時間のかかる食品(蛋白質、油脂、乳製品など)や繊維質を多く含む食品などを相対的に増やすことによって、未消化の食べ物が常に腸内に多く残るようにしないといけないのです。(この点において、グリセミックインデックス[GI]、グリセミック負荷[GL]の考え方はとても重要である。)

健康的なおかず

もちろん、肉や動物性脂肪(飽和脂肪酸)をいくらでも食べていいというアドバイは個人的に正しいとは思えないが、GI値の低い炭水化物、豆類・ナッツ類などの植物性タンパク質、魚・植物油などの不飽和脂肪酸、乳製品、繊維質の野菜などを組合せ、満腹感を高めることが大切だと考えます


結果的に緩い糖質制限と似たような食事法になるのですが、炭水化物は肥満の直接的な原因ではなく、腸内飢餓を引き起こしやすくするという間接的な原因であるというのが私のスタンスなので、ケトジェニックの様な厳格な糖質制限には疑問を感じる。

また、私はインスリンが脂肪蓄積を促すとしても、それが根本的な肥満の原因ではないと思っています。
糖質制限を推奨する人の中には、「インスリンの分泌さえ下げれば、カロリーを気にせずに、ステーキ・魚のグリル・チーズ・オイルなど何でも食べてしかも痩せれるのだから、カロリー摂取量ではなく炭水化物が肥満の原因であったんだ。」と説明する方もいますが、その説明は間違っていると考えます。

5.日本で広がる食事の偏り、質の低下

近年、世界中で肥満の増加が深刻な問題となるなかで、太る人にとってはその原因の中心にあるのは間違いなく消化の良い精製された炭水化物であると考えます。

しかし、炭水化物を食べたから全員が太る訳ではなく、炭水化物のタイプ(GI値の高いもの)、食事の偏り、不規則な食生活(朝食抜き、夜遅い食事など)などの要因も関連しているのです。

例えば、カロリーや糖質の「摂取量」だけに着目すると、朝食を抜いたり、昼食をカップ麺・「スナックパンとおにぎり」又はファーストフードなどの簡単な食事で済ませてしまったりすることも悪くない選択に思えるかも知れません。さらに、野菜を食べないことも多少の糖質又はカロリーを減らすことに役立つと思われるかも知れません。

カップ麺

しかし、このような繊維質・栄養に乏しく炭水化物の多い「質の低い食事」と「空腹」を繰り返すことは、肥満や糖尿病・血糖異常症などの発症リスクを増大させる可能性があるのではないでしょうか?

データとしては示すことはできないが、私の知る限り、日本においても工場や作業所における派遣労働者や低所得層における「食事の質」の低下が近年著しいと感じる。

食費を抑えようとする時、一番安くすんで量が多い(一時的な満足感を得られる)のが炭水化物なのである。
            

まとめ

(1)(2)は「減少する糖質摂取量、増える糖尿病(血糖異常)」の記事からの要約


(1)日本での糖尿病患者は、推計を始めた1997年の690万人から右肩上がりで推移し、2016年には1,000万人に達している。血糖異常などの糖尿病予備軍も含めると2016年で2000万人を超える(約6人に1人)。日本人は欧米人に比べインスリンを分泌する能力が弱く、2型糖尿病を発症する人の半分以上は肥満(BMI≧25)ではない。


(2)日本では、糖質摂取量やカロリー摂取量が50年以上前から減少傾向にあり、少なくとも日本において、肥満・糖尿病・血糖異常者の増加は、糖質やカロリーの摂取量だけでは説明できない。グリセミック・インデックス(GI値)の高い食品、砂糖類、バランスの悪い食事、朝食抜きなど不規則な生活などの要因が関係している可能性がある。


(3)カロリーや糖質の「量」だけに着目すると、朝食を抜いたり、昼食をカップ麺・ファーストフードなどの簡単な食事で済ませたり、野菜を抜くことさえも合理的に思えるかも知れませんが、消化の良い炭水化物に偏る「質の低い食事」と空腹の繰り返しは、血糖異常などの病気発症リスク、肥満リスクを増大させる可能性があるのです。


(4)近年の、(A) 肥満リスクの増大と、(B) 血糖異常者の増加は、炭水化物の異なる性質によるものであるというのが私のスタンスです。(B) に関しては、炭水化物を含む食事が血糖値をどの様に上げるのかということと、インスリンとの関係が大きく影響する。それに対し(A) は、消化の良い炭水化物が食べた物(栄養)を希薄にし、いくつかの条件が重なれば、腸内飢餓が引き起こされることと関連している。

つまり私の理論上では、肥満の根本的な問題は、腸内飢餓により設定体重そのものがアップすることであり、炭水化物は間接的にそれに影響しているのです。


(5)肥満や血糖異常のリスクを低下させるためには、炭水化物の量を減らすことだけが重要ではない。
低GIの穀類の摂取、他の食材(肉・魚・野菜・ナッツ類、乳製品、海藻など)を食事に組合わせること、規則正しく食べる(例えば、一日3回)ことなども重要である。

これらはすべて消化を遅らせ、吸収の速度を緩やかにし、血糖値を安定的に保つことに役立つ。「セカンドミール効果」や「レジスタントスターチ」の概念もこの点において重要である。


特に痩せるためには、消化に時間のかかる食品(蛋白質、脂質など)や繊維質を多く含む食品を増やすことによって未消化の食べ物が常に腸内に多く残るようにすることがむしろ重要なのです
。これによって空腹感が抑えられ、順に吸収率は低下するので、空腹感をコントロールすることが減量達成の鍵となる。


(6)砂糖などの単純糖質は血糖異常などとは大いに関係があると考えるが、腸内飢餓を引き起こす原因となるのはデンプン、小麦などの多糖類である。

参考文献:

[1] ゲーリ・トーベス, 2013,「人はなぜ太るのか」, メディカルトリビューン,  P.177-8.

[2] ジェイソン・ファン, 2019, The Obesity Code, サンマーク出版,  P.178-9.

2022.07.15

アトキンス(糖質制限):体重減少の長期的な効果はいかに?

目次

  1. アトキンスダイエットとは?
  2. 様々なダイエット法の比較試験
  3. アトキンス法の長期的な結果は?
  4. お米を食べるアジア人が痩せているのは?
  5. 私の考え

<まとめ>

1.アトキンス・ダイエットとは?

アトキンス・ダイエットとは、心臓病専門医であるロバート・アトキンス( Robert Atkins )が提唱した低炭水化物ダイエットの一種で、エネルギーとなる「糖質」を制限し、その代わりに「脂肪」をエネルギー源とするものです。初めの2週間は糖質を1日20~25グラムまでに制限し、その後、徐々に増やすことを特徴としています。

[The Obesity Code] の著者であるジェイソン・ファン氏によると、アトキンス博士は1963年当時100キロ近くあり、ニューヨークで心臓病専門医として働き始めたことをきっかけに彼自身が痩せる必要があった。しかし従来のカロリー制限ダイエットではうまく体重を減らすことができず、昔からある低炭水化物ダイエットを試したところ上手く行き、そこで患者にも勧めたそうです。

医師

1972年には『アトキンス博士のダイエット革命』を出版し、この本は瞬く間にベストセラーとなった。

当時、米国医師会では依然として、食事中の高脂肪は心臓病や脳卒中を引き起こす原因と考えられており、高たんぱく・高脂質を許す「低炭水化物ダイエット」は受け入れられなかったそうだ。しかしそれをものともせず、1990年代から再燃した低炭水化物ダイエットの人気を背景に、アトキンスダイエットは一大ブームとなった。

2004年には、2600万人のアメリカ人が何らかの低炭水化物ダイエットをしていると答えている。[1]

2005年前後から、アトキンスダイエットと、かつて標準とされたダイエット法を比較する新しい研究が始まったそうですが、その結果はどうだったのでしょうか?詳しく見てみましょう。
この記事の最後に私の考えを述べたいと思います。

【関連記事】炭水化物が太るのか、カロリーが太るのか?論争

2.様々なダイエット食の比較試験

(【The Obesity Code 】 より引用

"2007年には、『米国医師会雑誌』がより詳細な研究結果を掲載した。この研究では、 当時よく行われていた4つの異なるダイエット法の比較試験が行われた。その結果、ひとつのダイエット法の効果が抜きんでていた-アトキンスだ。

その他の3つ(脂質の摂取量を極めて低くする「オーニッシュ・ダイエット」、たんぱく質・炭水化物・脂質の割合を30:40:30にする「ゾーン・ダイエット」、標準的な「低脂質ダイエット」) は、体重の減少という点については似通った結果となった。

医師と患者

しかし、アトキンスをオーニッシュと比べると、アトキンス・ダイエットのほうは体重が減っただけでなく、全身の代謝もよくなったことが明らかになった。血圧、コレステロール値、血糖値もすべて、大幅に改善していた。

▽2008年に行われたDIRECT試験 (食事介入による無作為比較試験)で、アトキンスはごく短期間で体重を減らせることが、改めて確認された。
イスラエルで行われたこの試験では、「地中海食ダイエット」「低脂質ダイエット」「アトキンス・ダ イエット」の比較が行われた。

その結果、地中海食ダイエットには、体脂肪減少に大きな効果があるアトキンスと同じような効果が見られたが、AHA(アメリカ心臓協会)が標準とした低脂質ダイエットは、屈辱的な結果に終わった―嘆かわしい結果で、被験者は疲れ切ってしまったし、このダイエット法を好まなかった。このダイエット法を支持していたのは、医学研究者だけだった。
ジェイソン・ファン, 2019,「The Obesity Code」, Pages 178-9.)    

3.アトキンス法の長期的な結果は?

引き続き【The Obesity Code 】より

"アトキンス・ダイエットを長期にわたって研究したところ、長い目で見ると思ったほど効果が出なかったのだ(ダイエットは長い目で見なければいけない)。

テンプル大学のゲイリー・フォスター教授が2年にわたる研究の結果を公表したのだが、 その結果は、低脂質ダイエットをしたグループとアトキンス・ダイエットをしたグループ のどちらも体重は減少したが、その後、どちらもほとんど同じ割合で体重が元に戻ったというものだった。(略)すべてのダイエット法の試験に対して徹底的なレビューを行ったところ、低炭水化物ダイエットの利点のほとんどが、1 年後にはなくなっていたことがわかった。

スイーツ、お菓子

「カロリー計算をする必要がないのでダイエットが長続きする」というのがアトキンス法の大きなウリのひとつだった。だが、食べる物を厳格に制限するアトキンス法 は、従来どおりカロリー計算をしながら食べる方法に比べても、決して簡単ではないことがわかった。

どちらのグループも、ダイエットが続いた期間は同じで、40%近くが1年以内にやめてしまっていた。

後から考えると、この結果はいくらか予想できた。アトキンス法は、ケー キ・クッキー・アイスクリーム、そのほかのデザートなど、甘いものを厳しく制限していた。(略)

どんなダイエット法を信じていようが、こうした食べ物を食べると太るのは明らかだ。 それでも私たちが食べるのをやめられないのは、甘いものを食べると気分がよくなるからだ。アトキンス・ダイエットはこのシンプルな事実を認めないがために、理論的には正しくても失敗してしまったのだ。

何百万人もの人がアトキンス法をやめ、新しいダイエット革命は、一時期だけ流行ったダイエット法のひとつに成り下がってしまった。アトキンス博士が1989年に設立した会社は、顧客離れにより多額の負債を抱え、倒産した。減量の恩恵は続かなかった。

だが、いったいなぜだ? 低炭水化物のダイエット法のもとになった原理は、「食品に含まれる炭水化物は血糖値を最も上げる」ということだった。血糖値が高いとインスリンの分泌量も増える。インスリンが増えることが、肥満の最大原因だ。 こうした事実は、十分に合理的に見える。いったい何がいけなかったのだろう?"
(「The Obesity Code」, Pages 182-4.)

4.お米を食べるアジア人が痩せているのは?

引き続き【The Obesity Code 】より

"炭水化物・インスリン仮説は「炭水化物が太るもとだ、なぜならインスリンが分泌されてしまうから」というもので、この説自体は間違ってはいない。だが、この説は不完全だ。様々な問題点が挙げられるが、「米を主食とするアジア人のパラドックス」が最も顕著な例だ。

お米文化

ほとんどのアジア人は、少なくともここ50年、精白した米、つまり精製された炭水化物を主食とした食事をしている。それでも最近まで、 アジアの人々が肥満になるのは極めて稀なケースだった。

1990年代末に行われた調査では、日本の炭水化物摂取量 はイギリスやアメリカと類似しているが、糖分の摂取量ははるかに少ない。炭水化物の摂取量が多いにもかかわらず、中国と日本の肥満率は、つい最近まで非常に低い値だった。(略)

よって「炭水化物・インスリン仮説」は正しくないことになるが、ここには明らかに何か他の要因がある。炭水化物の摂取量だけが問題ではなかったのだ。

精製された炭水化物そのものよりも、「糖分」のほうがはるかに肥満の原因になっているのかもしれない。「食べるのが米か小麦かによって大きな違いが出る」という説も考えられなくもない。アジア人は米を食べることが多いが、西洋社会で食べる炭水化物は精製された小麦粉やトウモロコシ製品だ。(略)

これでは、パズルの肝心な1ピースが欠けたままだ。"
(「The Obesity Code」, Pages 184-8.)

5.私の考え

お米か小麦かという話が出たので、まずこれについて少しお話したいと思います。

Dr. Fung氏が指摘されるように、炭水化物の量だけが問題ではない。お米か小麦かと言えば、お米の方が一般的に消化が遅いため、私の理論上は、小麦より太りにくいと言えるかも知れない。

近年の日本における肥満率の増加は、消化の良い炭水化物や超加工食品、バランスの悪い食事、不規則な生活リズムが大きな要因だと思っている。

そしてそれらは、私の腸内飢餓理論の「3要素+1」によって説明できると私は信じています。

不規則な生活リズム

(不規則な生活リズム)

<なぜアトキンスもリバウンドしたのか?>

これまでのどんなダイエット法でもリバウンドはつきものですが、リバウンドしないためには、設定体重(set-point weight) そのものを低くしないといけないと考えています。その方法については、以下の記事をご覧ください。

正しく痩せるためには2段階のプロセスが必要


今回のリバウンドについて言うと、必ずしもアトキンスを含め「糖質制限ダイエットに効果がない」ということにはならないと思っています。正しく痩せるための方法としては一番近いと思っています。しかし、「血糖値・インスリン」にフォーカスしすぎると、もう一つの大事なポイントを見失ってしまうのです。


どういうことかと言うと、(この研究の詳細は分かりませんが)私は
糖質制限ダイエットのポイントは、糖質を減らすことだけでなく、「繊維質の食品や肉・脂質・乳製品などの消化に時間のかかる食品をいかに増やすか」だと思っています。

未消化の食べ物が腸内に多く残ることで満腹感が持続し、空腹感が減る。長期的に見ると吸収率が低下すると思っています。特に、油脂は減らすべきではなく、毎食そして間食でもしっかりと摂るべきです。

   
糖質を厳しく制限すれば、痩せるスピードは早まるでしょうが、スイーツなどの甘い物をそこまで厳格に禁止する必要もなかったのではないでしょうか?大切なのは無理せず、持続できることです。

                    

<参考文献>

[1]ジェイソン・ファン, 2019,「The Obesity Code」, Pages 171-6.

まとめ

(1) 1990年代の低炭水化物ブームの再燃をうけて、アメリカでは2000年代の初めに、アトキンスダイエットは一大ブームとなった。短期的に見れば、アトキンス法では体重が減っただけでなく、血圧、コレステロール値、血糖値などすべての数値が、大幅に改善していた。

  
(2) しかし、長期的な研究では、被験者は低脂質ダイエットなどと同様にリバウンドし、実験終了から1年後には低炭水化物のすべての利点は失われていた。
Fung氏は「炭水化物・インスリン仮説」は不完全な理論であるという。炭水化物の摂取量そのものが問題ではなかった。

   
(3)(私の考え)体重の設定値 に変化がない場合、基本的に元の食事に戻せばリバウンドは起こりうる。正しく痩せるためには、体重の設定値そのものを下げる必要がある。

   
(4) 糖質制限ダイエットのポイントは、分泌されるインスリン量のコントロールだけではない。
精製炭水化物を減らすと同時に「繊維豊富な食品や、消化に時間のかかる食品の摂取をむしろ増やす」ことが大切です。未消化の食べ物が腸内に多く残ることで、満腹感が持続し、空腹感が和らぐ。長い目で吸収率が低下していくと考えます。
                     

2019.04.05

リバウンドしない減量には、2ステップ必要

要 約

(1)太る場合と同様に、「痩せる」場合にも、生理学的に異なる2つのプロセスが存在すると考えられる。一般的なカロリー制限では、身体がエネルギー不足と認識し、従来の体重水準を維持しようとする適応反応が生じるため、体重減少は持続しにくく元の体重に戻りやすい。

リバウンドなく長期的に痩せた体重を維持するには、体重の「設定値」そのものを低下させる必要がある。

      
(2)体重の設定値そのものを下げるためには、少なくとも次の2つの生理学的ステップを踏む必要がある。
第一に、体重を減らす前に、身体がエネルギー欠乏と認識しない生理的環境を整えること。第二に、その環境のもとで、体脂肪が自然に減少していく過程を経ることである。

      
ステップ1
栄養密度が高く、かつ消化に時間を要する食品(野菜、乳製品、ナッツ、特定のタンパク質など)を食事の中心として選択する。

腸管内に消化されにくい成分を含む内容物が長時間残ることは、身体にとって「食物が十分にある」というシグナルとして認識され、その結果、全体のエネルギー収支がわずかにマイナスになっても、強い適応反応が生じにくくなる可能性がある。

     
ステップ2
:満腹感が持続することで食べ過ぎが抑えられるだけでなく、吸収効率も徐々に低下する可能性がある。
長期的には、視床下部を中心とした脳と、末梢の臓器・組織との協調的な作用により、体脂肪が段階的に減少していく可能性がある。

      
(3)「2ステップ法」は、結果として低炭水化物ダイエットと似た食事内容になる場合があるが、目的は本質的に異なる。

低炭水化物ダイエットは、主にインスリン分泌を低下させることを目的として、糖質の摂取量を制限する。一方、2ステップ法では、腸内飢餓(長時間にわたる空腹)とは逆の生理的環境を整えることを目的とし、炭水化物の摂取を抑えつつ、それ以外の栄養密度が高く消化に時間を要する食品を十分な量摂取することが重要となる。

【全文】

<目次>

  1. 「痩せる」にも2つの異なるプロセスがある
    (1)体重は減るが、リバウンドする場合
    (2)体重の「設定値」そのものを下げる場合  
      
  2. 体重の設定値を下げるには何が必要か?
  3. 低炭水化物ダイエット(糖質制限)との違い

このブログはダイエットを目的としたものではありませんが、体重増加のメカニズムを考察する以上、その逆である「痩せる過程」についても理論的に整理する必要があると考えました。

今回の記事では、私の仮説に基づき、持続可能な減量のための理論のみを述べます。実践に基づくものではありませんが、従来の考えにとらわれず、一つの新しい考え方を共有することを目的としています。

1. 「痩せる」にも2つの異なるプロセスがある

『太る』に生理学的に異なる2つのプロセスがあるように、『痩せる』にも生理学的に異なる2つのプロセスが存在すると考えられる。

【関連記事】同じ「太る」でも意味が違う:2つの異なるプロセスとは?

(1)体重は減るが、リバウンドする場合

一般的なカロリー制限や低脂質食は、摂取エネルギーを減らし、消費エネルギーを増やすことで体重を減少させることを目的としています。この方法では慢性的な空腹を伴うことが多くなります。

このブログでは、体重の恒常性を説明する概念として「体重の設定値」仮説[1,2]を使用しています。

摂取エネルギーを大きく制限して体重が減少すると、身体はエネルギー不足と認識し、貯蔵エネルギーを維持しようとする適応反応が生じます[3,4]。これは、代謝・神経内分泌・自律神経・行動における変化が相互に作用する反応として理解されています[5]

加えて、私の考えでは、空腹状態が長く続くと、体は食べ物から最大限に栄養を摂ろうとするために吸収効率はアップするのです。

減量の設定値モデル

ほとんどの場合、体重の設定値自体は変化しないため、体重減少は持続せず、最終的には元の体重の範囲に戻る可能性が高くなります。
【関連記事】
減量後に体重のリバウンドを促進する生物学的反応

(2)体重の「設定値」そのものを下げる場合

私は、肥満の本質的な問題は体重の「設定値」が高くなっていることにあると考えています。

体脂肪として十分なエネルギー貯蔵がある肥満者でさえ、カロリー制限に対して代謝的抵抗を示すことから、肥満は一部の人にとって生理学的に安定した状態であると考えられています[1]。動物実験においても、肥満は高い設定値で調整されたエネルギー恒常性の状態として捉えられています[1]

したがって、長期的に痩せた体重を保つには、短期のエネルギーの収支のみに焦点をあてるのではなく、体重の設定値そのものを低下させる必要があります。これに関連する文献を以下に引用します。

”体重や肥満に関しては『設定値』というものがあると考えられているが、肥満の問題点は、「設定値が高くなっている」ということにある。(略)

長年にわたる研究で分かったことが二つある。
一つは「どんなダイエット法も効果的であるということ」。
もう一つは「どんなダイエット法も効果的でない」ということ。


ういうことかと言うと、地中海式ダイエットもアトキンス・ダイエット(糖質制限)も低脂質、低カロリーダイエットも、短期的には体重はおちる。それはそうだろう。摂取量を控えているのだから・・・。

しかし、しばらくすると体重は減らなくなり、その後、無常にも増え始める。(略)こうしてどんなダイエット法も失敗する。実は半永久的に体重を減らすには「2段階のプロセス」が必要だ。肥満には「短期的な問題」と「長期的な問題」がある。(引用以上)

(参考文献: ジェイソン・ファン. 2019.「The Obesity Code 」. Pages 120, 358.)

2.体重の設定値を下げるには何が必要か?

Fung氏が述べる「2段階のプロセス」とは、肥満治療(減量)を「短期的な課題」と「長期的な課題」から成るものと捉える概念的枠組みであり、主に臨床的・実践的な観点から整理されたものだと、私は理解しています。

一方でこの記事では、この「長期的な問題」、すなわち、なぜ身体が体重減少に抵抗し、長期的に体重が元に戻ってしまうのか[6]という点を、生理学的な観点からさらに掘り下げて考察します。

その結果、私は、長期的に痩せた体重を維持するためには、少なくとも以下の2つの生理学的ステップを踏む必要があると考えました。

(1)体重を減らす前に、身体がエネルギー欠乏と認識しない生理的環境を整えること

(2)その環境のもとで、体脂肪が自然に減少していく過程を経ること

私の理論では、体重の設定値上昇を伴う体重増加は、身体が「飢餓状態にある」と認識した結果生じる適応反応と関連しており、持続的な体重減少には、その逆の生理的環境を作る必要があると考えています。

多くのダイエットは、初期段階から体重減少を狙いますが、(1)のステップを飛ばすことで、恒常性を取り戻そうとする適応反応が生じ[6]、結果として長期的な減量に失敗する可能性が高いのです。

具体的には以下の通りです。

<第一のステップ>

食事量を減らして空腹を我慢するのではなく、栄養密度が高く、かつ消化に時間を要する(又は部分的に消化されない)食品を中心に食事を構成します。

具体的には、精製炭水化物の摂取量を減らし、その代わりに全粒穀物、食物繊維の多い野菜、ナッツ類、乳製品、脂質、加工度の低いタンパク食品などの摂取量を増やすことが望ましいと考えています。

栄養価の高い食品

(出典:Freepik)

これにより、腸管内に消化されにくい成分を含む内容物が長時間残り、空腹感が軽減されるだけでなく、身体にとって「食物が十分にある」というシグナルとして認識される可能性があります。そのため、全体的なエネルギー収支が若干悪化しても、身体はエネルギー欠乏と判断する可能性は低いと考えています。

<第二のステップ>

空腹感の軽減に伴い食欲が低下し、吸収効率も徐々に低下していきます。最終的には、視床下部を中心とした脳と末梢の臓器・組織の協調的な作用により[7]、体脂肪が減少していく可能性があると推測しています。

吸収率の変化は直感的に分かりにくいかもしれませんが、例えば、強い空腹状態で炭水化物を摂取すると血糖値は急上昇しやすく、一方で食後数時間経過した状態では上昇が抑えられます。アルコールについても、空腹時は酔いが早く回り、食後では緩やかになります。

このように、空腹を避け、消化に時間のかかる食品を適切な間隔で摂取することにより、吸収効率は相対的に低下していく可能性があるです。

3.低炭水化物ダイエット(糖質制限)との違い

私の考える「2ステップ法」は、結果として低炭水化物ダイエット(糖質制限)と似た食事内容になる可能性があります。しかし、両者は出発点と目的が異なります。ここでは、その違いを整理します。

  
▽低炭水化物ダイエットは、炭水化物(糖質)の摂取を制限することで血糖値の急上昇を抑え、脂肪蓄積に関与するインスリン分泌を低下させることを主な目的とします。

糖質由来のエネルギーが不足すると、体は脂肪を主要なエネルギー源として利用するようになり、いわゆるケトーシス状態に移行します。その結果、体脂肪が利用されやすくなり、比較的短期間で体重が減少しやすいと考えられています。また、厳密なカロリー計算を必要とせず、高タンパク・高脂質の食事により満腹感が得られやすい点も特徴です。

▽これに対し、私の理論でも、精製炭水化物や高度に加工された食品に偏った食事が、現代の肥満蔓延に関与している可能性は高いと考えています。ただし、その理由は、炭水化物そのものが直接的に悪いからではありません。

私が重視しているのは、炭水化物が持つ消化の速さや、炭水化物と水分を同時に摂取した際に生じる「希薄効果」、さらに胃内容物が腸へ急速に送り出される「プッシュアウト効果」といった性質です。

これらの要因が重なることで、食べた物が比較的早く消化され、特定の条件下で、腸内飢餓が生じやすくなる可能性があると考えています。

【関連記事】
炭水化物で太る?:希薄効果、プッシュアウト効果

炭水化物

(著作者:brgfx/出典:Freepik)

のため、2ステップ法では、腸内飢餓とは逆の生理的環境(腸管内に消化されにくい成分を含む内容物が長時間残る状態)を整えることを目的として、希薄効果やプッシュアウト効果を弱めるために炭水化物の摂取を減らし、その他の食品(繊維質の野菜、乳製品、脂質、加工度の低いタンパク食品など)を相対的に増やすことが必要となります。

低炭水化物ダイエットでは、糖質の摂取量そのものを減らすことが中心的な方針となり、タンパク質や脂質は代替的なエネルギー源として比較的自由に摂取されます。ここに、2ステップ法との本質的な違いがあります。
      

【参考文献】

[1]Richard E. Keesey, Matt D. Hirvonen, 「体重設定値:決定と調整」, The Journal of Nutrition, Volume 127, Issue 9, 1997, Pages 1875S-1883S, ISSN 0022-3166.

[2]Ganipisetti VM, Bollimunta P. 「肥満とセットポイント理論」. 2023 Apr 25. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2025 Jan–. 

[3]Hall KD, Guo J. Obesity Energetics: .「肥満エネルギー学」. Gastroenterology. 2017 May;152(7):1718-1727.e3. 

[4]Egan AM, Collins AL. 「栄養不足に対するエネルギー消費の動的変化:レビュー」. Proc Nutr Soc. 2022 May;81(2):199-212.

[5] Rosenbaum M, Leibel RL. 「ヒトにおける適応的熱産生」. Int J Obes (Lond). 2010 Oct;34 Suppl 1(0 1):S47-55. 

[6] Ochner CN et al. 「肥満者の減量後に体重が戻ることを促進する生物学的メカニズム」. Physiol Behav. 2013 Aug 15;120:106-13. 

[7] Wilson JL, Enriori PJ. 「体重をコントロールするために脂肪組織、腸、膵臓、脳の間で対話する」. Mol Cell Endocrinol. 2015 Dec 15;418 Pt 2:108-19. 

2016.09.29

ダイエットは、運動よりも食事の改善

目次

  1. 消費するカロリーの僅かな利益
  2. 食事内容を改善することの方が重要

 (1)広告におどらされて
 (2)運動を謳うダイエットは、必ず食事指導をしている
 <まとめ>

まずは「痩せるためには運動は必要ないとしたら?」を先にお読みください。

上記の記事で「運動が本当に、体重を軽くするのに役立つのか?」という事について見てきましたが、、それについてもう少し詳しく見てみましょう。

1.消費するカロリーの僅かな利益

(「人はなぜ太るのか?」より引用)

"1942年にミシガ ン大学のルイス・ニューバーグが計算したところ、体重 250ポンド(約110kg)の男性はひと続きの階段を上がるのにkcalを消費する。

つまり「(薄くスライスした)食パン1枚に含まれるエネルギーを消費するために、一続きの階段を20回上がる必要がある」のである。

では、なぜ階段を上がることを止め、パンを抜いて1日を終えないのか?

もしその男性が1日に20の階段を余計に上るとして、その日のうちに1枚のパンと同等の何かを食べない確率はどのくらいだろうか?

(ゲーリ・トーベス. 2013.「人はなぜ太るのか」. Page 57.)

▽その他の専門家たちは、ランニングのような純粋にカロリー消費の増加を狙った有酸素運動よりも、ウェートリフティングやレジスタンス運動で体重を減らせると議論するようになった。

ここでの発想は、筋肉を増やして脂肪を減らすというもので、脂肪と筋肉を入れ替えることで体重は変化しなくても、より健康になるというものである。また筋肉は脂肪よりも代謝的に活発で、より多くのカロリーを消費するため、余分な筋肉は減少した脂肪を維持することに役立つだろう。

筋トレ、女性

しかし専門家たちはこのような議論をするときに、いつも実際の数値を無視した。それは数値が見栄えしなかったからである。

もし私たちが約2キロの脂肪を2キロの筋肉に置き換えたとすると(これはかなりの成果であるが)、エネルギー消費の増加量は1日あたり24kcal である。

この量は、またしてもパン1切れと等価のカロリーについて話すことになり、消費エネルギー量が24kcal 増えても24kcal 分余計に空腹にはならないという保証はない。

そしてまたしても、パンとウェートリフティングの両方をやめておいたほうが楽かもしれないという見解に戻ってしまうのだ。"
(Pages 64-5.)

2.食事内容を改善することの方が重要

ウォーキングやジョギングなどの運動は、慢性疾患の予防や心身の健康の為に必要なのは間違いないと思うのですが、上記「1」で詳しく見たように、"カロリー消費" という観点からはそれほど有効とは思えません。運動で瘦せたという人は、むしろ、食事の改善(栄養バランスや食べる回数などの摂取方法)をセットで行っているのではないでしょうか? 

これに関して、運動の専門家が書かれた本がありますので、今回はそれを元に少し深堀りしてみたいと思います。

運動指導者が断言。ダイエットは運動1割、食事9割」【森 拓郎著】

森さんは自らがフィットネスクラブに5年間在籍し、運動指導者でありながらも、痩せるのには運動だけでは無理だと言われています。

(1)広告におどらされて
(「ダイエットは運動1割、食事9割」より引用)

"運動指導者として沢山のクライアントを見てきました。しかしそこで見たものは、長く在籍しているのに痩せないクラブ会員様、そして何よりそこで働いているのに痩せないスタッフでした。(略)

ダイエットの中心にくるのはあくまで食生活の改善であり、それを支えるためのメンタルも大切になってきます。運動に関しては、それらのウェイトに比べて非常に小さくて、食とメンタルさえ何とかなれば、運動指導を省いてもほぼ良い結果がでてしまうと考えます。

さまざまなダイエット関連の誇大広告に騙され、効果的な運動をすれば誰でも痩せられると、知らないうちに思わされていた自分がいたのも事実です・・・。(略)それはあくまで広告のお話ですから、客を惹きつける誇張であって当然。そのせいで、良識ある一般人の感覚までがおかしくなっている。

(2)運動を謳うダイエットは、必ず食事指導をしている

私の今までの運動指導、ダイエット指導の経験を通して痛感することは、実はほとんどの人は、運動だけのダイエットで結果をだせないということです。
多くのクライアントと接するうちに成果の出なかった人の傾向が見えてきました。彼らは、「好きな物を食べながら痩せたい」「食生活は変えたくない」・・・という食生活に問題のある人ばかりだったのです。

体の痩せるメカニズムを考えると、食事のコントロール以上に効果的なダイエット法はなく、そこに必要な分の運動を足すという考え方が適切です。

巷のダイエット本を手に取ってみても、ある特定の運動法の説明をしていても、食事について少なからず書いてあるものがほとんど。

ダイエット成功者は運動ではなく、食事の改善でやせているのです。(略)

体の綺麗なスタイルは運動がつくり、体重やサイズを減らしたいのであれば、食生活を中心に改善していくという大前提を理解することが必要です。"
(森 拓郎. 2013.「ダイエットは運動1割、食事9割」)

これは私も伝えたかったことですが、運動の専門家の話のほうが、より説得力があると思い引用させて頂きました。

「運動で痩せれる」と謳っている本は、必ず食事の改善についても言及しています。最近の傾向としては、炭水化物・ジャンクフードなどを減らしつつ、肉・卵などの蛋白質、野菜、乳製品などをしっかり食べて運動するという様になってきているように感じます。

引き締まった体

しっかり食べて痩せたんだから、運動が体重を減らすことにかなり貢献しているように思われるかもしれませんが、それは誤解です。

食事の習慣を変えることで実は痩せることができ、運動はむしろ痩せた後の筋肉質で引き締まったボディーをつくると考えた方が良いかもしれません。

まとめ

(1) 運動で消費されるカロリーはそれほど多くない。運動はしていてもダイエットで結果を出せない人は、「好きなものは食べながら痩せたい」など、食生活に何らかの問題をかかえていることが多い。

  
(2) 痩せるためには、バランスの摂れた食事や摂取回数を増やしたりして、毎日の食事習慣を改善することの方がより効果的である。炭水化物の摂取量をある程度減らし、タンパク質・脂質・乳製品・野菜などを増やすことはすことは減量に役立つ。一方運動は、健康の増進、体力の維持、痩せた後の引き締まった体をつくることに役立つ。

  
(3) 運動が根本的に体重の減少に役立たないのは、「食事・運動・体重」の関係性が間違えて認識されている為である。

【関連記事】 食事・運動・体重の関係性を間違えている

       

2015.07.30

ダイエット(カロリー制限と運動)は、長期的にはほぼ成果なし

目次

  1. 失敗は必ずしも意思の弱さではない
  2. 長期的なダイエットの結果は?
  3. 認知的不協和

ダイエットというと運動食事(カロリー)制限
でもこの方法で、すんなり痩せたっていう人に余りお目にかからないですよね。

▼ブル中野さん(女子プロレスラー)も、ダイエットとリバウンドを繰り返されてたのですが、重度の膝の病気がきっかけで痩せることが必要となり、最終的に胃の切除手術を受けられたそうです(2015年6月23日「解決ナイナイアンサー」より)。ブル中野さんも「運動と食事制限では痩せない」と言われています。

▼お笑い芸人の杉ちゃんも、ビリーズブートキャンプで7キロ減量に成功した後、すぐに7キロリバウンドされたそうです。

今回は、従来のカロリーに基づくダイエットが、如何に効果がないのかということを、「瘦せたければ脂肪を沢山とりなさい」「人はなぜ太るのか」という2冊の本から紹介したいと思います。ほとんどが引用になりますがご了承ください。

1.失敗は必ずしも意思の弱さではない

(「瘦せたければ脂肪を沢山とりなさい」ジョン・ブリファ著より)

”肥満の原因についてはいろいろな意見があります。しかし結局のところ、問題の原因はカロリーの アンバランス、つまり摂取するカロリーが代謝と活動によって燃焼するカロリーを上回っているせいだ、という意見がよく知られています。体重問題の解決策は単純に、食べる量を減らして運動量を増やすことにより、そのバランスを回復することだ、という意見もよく聞かれます。

このアドバイスはもっともに思えます。
しかし困ったことに、このアドバイスを採用しても長期的にはたいして体重が減らないことが、大勢の人たちの経験だけでなく科学的研究からもわかっているのです。

ここで出てくるのはたいてい、従来のやり方で失敗する人は意志の力と自制心が足りないのだ、という話です。

しかし実際のところ、カロリーにもとづくダイエット戦略はうまくいかないだけでなく、ごく少数の人以外にはうまくいくはずがないのです。

食べる量を減らして運動量を増やすと、体が減量に抵抗し、そのうちに実は体重が増加しやすくなるおそれがあります。”
(ジョン・ブリファ. 2014.「瘦せたければ脂肪を沢山とりなさい」. Pages 21, 29.)

2.長期的なダイエットの結果は?

(引き続き「瘦せたければ脂肪をたくさん取りなさい」より引用)

“減量努力を始めてから2年以上、対象者をモニターしている研究に限定することで、従来の方法の 長期的成功を評価できます。食べる量を減らして運動量を増やすことによる 短期的な勝利については、わかっている人も大勢いると思いますが、ここで知りたいのは長期的な勝負のことなのです。

low-calorie diet
<研究1 >

平均年齢36歳、平均BMIが35.0の人たちに、低カロリー食(安定した体重を維持するのに必要な量より1日1000キロカロリー少ない食事)を指示。
一部の人はこの食事制限に加えて、運動として45分間のウォーキングを週に4~5回。

の介入を1年続け、介入終了から1年後、体重を測定しました。
長期(1年以上)の食事制限を始めてから2年後、
平均減少体重はわずか2キロ程度です。 定期的な運動を加えても、体重減少は平均でたった約3キロです。

この結果は、多くの被験者の体重に照らすと、よけいに微々たるものに思えます。平均身長の人のBMIが35だとすると、体重は約101キロになります。この体重の人が、つらい食事制限と運動という投資の見返りとして2~3キロの減量に満足するとは、私にはとうてい思えません。

もうひとつ意外かもしれないのは、食事制限を補助するものとして用いられる運動が、減量という目的には役に立たないことです。先程の研究結果から、定期的に運動していた人たちの体重はたった1キロよけいに減っただけであることがわかります。” (P 30-32.)
(引用以上)

                         

(「人はなぜ太るのか」ゲーリー・トーベス著より引用)

“タフツ大学(アメリカ、マサチューセッツ)の2007年のレビュー(1980年以降に医学雑誌に掲載された食事療法の試験に関連する論文の分析)によると、肥満および過体重の患者に対する低カロリー食の処方は、よくても「一過性」、つまり一時的な軽度の減量をもたらすだけである。

典型的な例では当初の6か月間に約4~4.5kgの減量となる。 しかし、1年後に体重は元に戻っていた。

また、今までで最も大規模な試験においてもこれに非常に近い答えが得られている。

その試験は、ハーバー ド大学およびルイジアナ州バトンルージュにある米国内で最も影響力のある学術的な肥満研究施設であるペニングトン生物医学研究センターに所属する研究者らによって行われた。

800人以上の過体重および肥満者を被験者として試験に登録し、4種類の食事群にランダムに割り付けた。4種類の食事は栄養成分(蛋白質、脂肪、炭水化物の割合)がわずかに違っていたが、1日あたり750キロカロリーという大幅な減食を前提としているという点では実質的に同じであった。

食事療法が続けられるよう”徹底的な行動カウンセリング”が行われた。これは減量しようとしたときに、決して受けることのないような専門家からの支援であった。また、カロリーが十分 に低くてもおいしい食事をつくれるように、被験者には2週間ごとに食事計画も与えられた。

試験開始時の被験者たちは平均約23kgの過体重であったが、試験中に平均でわずか約4kg減量しただけであった。

またタフツ大学のレビューで示されていたように、今回も約4kg減量の 大部分は当初の6か月に起こり、被験者の多くは1年後に元の体重に戻りつつあった。

少なく食べること、つまり減食はたとえ効果があったとしても数か月以上は続かないのだから、肥満がめったに治らなくても不思議はない。”(ゲーリー・トーベス. 2013.「人はなぜ太るのか」. Pages 44-5.)

3.認知的不協和

(引き続き「人はなぜ太るのか」より)

”しかし、このような現実がありながらも、専門家たちは減量法の推奨をやめたことがなく、そのような推奨を受けることは、心理学者たちが認知的不協和と呼ぶ、矛盾する2つの信念を同時に保とうと努力することから生じる葛藤をもたらすことになる

たとえば、この分野で最も著名な3人の専門家、ジョージ・ブレイ 、クロード・ブシャール、および W.P.T.ジェームスが編集し、1998年に出版された教科書『肥満ハンドブック (Handbook of Obesity)』を見てほしい。

「食事治療は今なお治療の基本であり、エネルギーの摂取を減らすことは、減量成功の原則であり続ける」と記されている。

一方で、この記述の少し後には、そのようなエネルギーを制限した食事は「効果があまりなく、長続きしない」と書かれているのである。それでは、なぜそのような効果のないものが治療の基本になっているのか? 同書はその説明を怠っている。”(Page 45)

   

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