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2017.03.07

カロリー意味あるの?カロリーの歴史はやはり神話なのか?

<目次>

  1. 「入るカロリー / 出るカロリー」説の誕生
  2. 今もなお、増え続ける肥満
  3. ノールデン氏の書物

私はリサーチのプロにお願いし、国立国会図書館で『カロリーの摂取量が消費量よりも多いから太る』というような関連の論文を1900年前後から探してもらいましたが、今回は探すことはできませんでした。(このブログの最後に若干の成果を報告します。)
やはり頼りになるのは、この本(「人はなぜ太るのか」)しかありません。ほとんどが引用になるのですが、ご了承ください。

1.「入るカロリー/出るカロリー」説の誕生

(「人はなぜ太るのか?」ゲーリー・トーベス著より引用)

1900年代初期にドイツ人の糖尿病専門家 カール・フォン・ノールデン(carl von Noorden)「私たちは消費するよりも多くのカロリーを摂取するから肥満になる」と初めて主張して以来、専門家もそうでない人も、ともかく熱力学の法則(エネルギー保存の法則)により、これが真実だと決められていると主張してきた。

そうでないと主張すること、つまり私たちが過食と座りがちな行動と対をなす「罪」以外の原因によって肥満になるかも知れないこと、あるいは意識的に食べる量を減らさなくても、あるいは運動を増やさなくても脂肪が減るかもしれないことは、コロンビア大学の医師ジョン・タガートが1950年の肥満に関する会議の挨拶で「感情的で無根拠」と断言したように、いつも「インチキ」として扱われてきた。彼は「私達は、熱力学の第一法則 の妥当性に絶対的な確信をもっている」と付け加えた。

宇宙

そのような確信は誤りではない。しかし、それは肥満になることについて「熱力学の法則」が他の物理学の法則以上に物語ることを意味するのではない。

ニュートンの運動の法則、アインシュタインの相対性理論、量子論などが宇宙の特性を示すものであることはもはや疑問の余地はない。しかし、熱力学の法則は 「なぜ人は太るのか?」 については説明していない。

このたった1つの単純な事実(熱力学の法則)を専門家達が理解できなかったために、驚くほど間違った助言がなされ肥満問題の拡大につながった。

熱力学の法則が肥満の説明になっているという誤った解釈がなかったら、「消費するよりも多くのカロリーを摂取するから太るのである」という見解そのものが存在しなかったであろう[1]。(~略~)

▽1934年、ヒルデ・ブルッフ(Hilde Bruch)というドイツの小児科医が米国(ニューヨーク)に移住した。彼女はそこでの肥満の子供の数に驚嘆したという。診療所だけでなく、街頭、地下鉄、そして学校に肥満の子供があふれていた。それは、マクドナルドの1号店の生まれる20年も前のことであり、さらに付け加えると、その年は大恐慌の真っ只中である。

ブルッフは肥満の子供の治療のために尽力した。多くの肥満の子供たちは、医師から指示される通り、食べる量を減らし体重をコントロールすることに多大な労力を費やしたにもかかわらず、結局は太ったままであったという。

医者

ブルッフの時代の医師も今日の医師たちも考えが足りないわけではない。彼らは単に、私達が太る理由は明白で議論の余地のないとする『欠陥のある信念体系(パラダイム)』を持っているだけである。

太る理由は、食べ過ぎているか運動が少なすぎるか、その両方であり、したがってそのをすることが治療になると医師たちは言う。(~略~)

▽世界保健機関 (WHO) は「肥満と過体重の根本的な原因は摂取したカロリーと消費したカロリーのエネルギー的不均衡である」といっている。

消費する以上のエネルギーを摂取すれば (科学用語ではプラスのエネルギーバランス)太り、摂取する以上に消費すれば (マイナスのエネルギーバランス)やせる。

食物はエネルギーであり、私たちはそれを「カロリー」として測定する。したがって「消費する以上のカロリーを摂れば太り、消費するよりも少なく摂ればやせる」のである。

運動

体重に関するこの考え方は非常に説得力があり広く普及しているため、 現在それを信じないというのは、ほとんど不可能である。たとえ私達がそれに反する証拠 (日常生活でいくら意識的に食べる量を減らし、 運動量を増やしても成功しない)をたくさん持っていたとしても、「私たちが摂取・消費するカロリーによって肥満が決まる」 という概念よりも、自分たちの判断と意志の力のほうを疑うだろう。[2]

2.今もなお、増え続ける肥満

肥満女性
(引き続き「人はなぜ太るのか?」より引用)

肥満の流行を考えてみよう。
50年前、表向きは米国人の8~9人に一人が肥満と考えられていたが、今日では3人に1人が肥満であり、過体重まで含めると3人に2人となる。

この数十年間の肥満の蔓延において「入るカロリー/ 出るカロリー」のエネルギーバランスの概念が幅をきかせたため、公衆衛生を担当する役人たちは、その原因を、私達が彼らの指示(運動をすること、食事を減らすこと)を守らないからだと思い込んでいる。

1998年マルコム・グラッドウェル(ジャーナリスト)は、雑誌 ”The New Yorker” でこの矛盾をついた。

彼は「私達は摂取するカロリーを減らし、運動をしなければ体重が減らないことを教えられてきた」と書いた。さらに、「実際にこの勧告についていける人がほとんどいないということは、私達の力不足、あるいは勧告に欠陥があるからである。医学の通説は自然と前者の立場を、ダイエット本は後者の立場をとる傾向にある。医学の通説が過去にどれほどの間違いを犯したかを考えると、それは不合理ではない。彼らの勧告が正しいかどうかを検証する価値はある」 と述べている[3]

(ゲーリー・トーベス氏)
肥満は、エネルギーバランス、あるいは「入るカロリー/ 出るカロリー」または過食による異常、熱力学とは何の関係もない。もし私達がこれを理解できなければ、「なぜ太るのか?」という問題に対し、これまでの慣習的な考え方へと後退し続けてしまう。それがまさに1世紀にわたって続く泥沼である[4]。(引用以上)

<参考文献>
[1] ゲーリ・トーベス, 「人はなぜ太るのか」, 2013, Page 82-83
[2] page 10-14 
[3] page 14-15
[4] page 83

3.ノールデン氏の書物

テレビ番組ではあいかわらず、医師や栄養士が「消費された以上に食べれば太るのは小学生でも分かることです・・」「太る原因は食べ過ぎか、運動不足です・・・」と自信満々に言っているのを見ると、私は本当に嫌な気持ちになるんです。
しかしそれって、凄く薄っぺらで、いかに根拠のない事柄であるかがお分かり頂けたかと思います。

以下の記事で「熱力学の法則」についてより詳しく説明します。

【関連記事】→『肥満とカロリーの関係は熱力学で説明できるのか』

また冒頭で、若干の成果といいましたが、カール・フォン・ノールデン氏の書(論文?)を入手することができました。
これも翻訳して、皆さんに紹介いたします。

ノールデンの書
ノールデン書(メタボリズム)

「代謝と実践医学」(Chapter Ⅲ、”Obesity(肥満)” )

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