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2023.10.30
食事回数は体重増加(又は減少)にどう影響するのか?
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目次
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- 食事の頻度と体重との関係性についての背景
- 食べる回数は腸内飢餓とも関係する
- 結論
1.食事の頻度と体重との関係性についての背景
(1)50 年以上前、食事頻度の低下は体重増加と関連していることが報告されました 。それ以来、多くの観察研究がこの考えを支持しています。代謝チャンバー(小部屋)内で実施されたランダム化クロスオーバー研究では、食事頻度を1日3食から2食(朝食と夕食)に減らすと、痩せた女性の満腹感が急激に減少した[1]。
(2)疫学報告では、食事頻度の増加、体重、代謝の健康の間に良好な関係があることが示されており、一部の研究者・栄養士の間では、少量の規則的な食事を複数回摂取することが、体重増加を制限する可能性のある食事アプローチとして認識されている 。食事の頻度を増やすことは、満腹感を高めて空腹感を軽減し、エネルギー消費を増加させ、代謝の健康を改善することによって減量を促進する食事戦略としても提唱されています。
しかし、介入試験は一般的に疫学的エビデンスを支持していません。今日の肥満が起こりやすい環境では、食事の機会を増やす処方は、誤って過剰摂取や体重増加を引き起こす可能性があるためです。
これは、エネルギー密度の高い食品を過剰に摂取する頻度が高くなると、代謝の健康状態が悪化するという最近の証拠を考慮すると、特に重要です[2]。
(3) 1996 年から 1999 年の間に4回実施されたINTERMAP研究(マクロ/微量栄養素と血圧に関する国際研究)のデータを用いた調査では、少量の食事の回数が多いほど食事の質が向上し、BMI が低下する可能性があることを示唆しています。
食事の機会(EO:eating occasion)が平均 6 EO の参加者は、4 未満の EO の参加者と比較して、食事の質(DQI)が高く、BMI が低かった。これは、頻度が全体的な健康増進行動のパターンを反映していることを示している[3]。
(4) 逆に、北米の比較的健康な30才以上の成人会員50,660人からのデータ(アドベンティスト健康調査) を基にした研究では、1 日あたり 3 食を超える食事(間食)は、BMI の相対的な増加と関連していました。EOの増加がエネルギー摂取量の増加と関連していることを示唆している[4]。
これらを勘案すると、食事の頻度は、エネルギーバランスとより広範な健康増進行動パターンの文脈にとって二次的な要素であると思われます[5]。
(5) 人間の食事パターンを解明することは栄養疫学にとっての課題となる。食事頻度アンケートは一般に、食事のタイミングではなく、指定された期間にわたる平均摂取量を把握するように設計されているが、「食事」や「スナック」の標準化された操作上の定義は依然として不足しており、食べ物摂取のタイミング、頻度、(不)規則性が関心の結果である場合は、不一致な結果が得られる可能性がある。
一部の研究者は、スナックに最低エネルギー基準(>50 kcal )を適用していますが、食事は、「朝食」「昼食」「夕食」という、あらかじめ定義された、文化的、社会的に主導されたラベルによって特徴づけられ、文化によって異なる[6]。
2. 食べる回数は腸内飢餓とも関係する
「1日に摂取するカロリーの合計が同じなら、1日に何回食事をするかは関係がない」という専門家もおられますが、私は間違いなく、食べる回数は体重の増加(又は減少)に影響すると断言します。
私は、「太る」という言葉には2つの意味があるといいましたが、その考えを基にすると、比較的簡単に説明できると思っています。下記の図の(A)(B)の部分について順に説明します。
(1)まず(B)の部分について言うと、「食べる回数」は大いに関係があります。
設定体重そのものがアップするのは腸内飢餓のメカニズムですので、回数を増やし分散して食べるほうが太りにくくなります。「お腹がすいてきたな~」という時に、また胃に食べ物が入ってくるわけですから、胃腸の中には未消化物が残りやすくなる訳です。
元々スリムな人や中型体形の人が、その様な生活習慣をつづけることで、体重増加を抑止できる可能性が高くなりますし、これは、「食事頻度の増加、体重、代謝の健康の間に良好な関係がある」という観察研究とも一致するでしょう。
逆に、一日2食のように食べる回数が減り、食事の間隔が長くなれば、食べ物の組合せによっては太りやすくなります。
私の理論の中では、食事回数というのは「食事の間隔」と同義であって、腸内飢餓が引き起こされる必要条件の1つの要素と言えます。「朝食抜き」「夜遅い食事」の記事でも言及したように、一日2食で、食事が消化の良い炭水化物やタンパク質に偏り、野菜や乳製品などが不足すれば、腸内飢餓を引き起こして体重の設定値が長期的にアップする可能性もあるのです。これは「食事頻度の低下は体重増加と関連している」という50年以上前の観察研究と一致します。
(2)次に(A)の部分について言うと、「食事の回数」はあまり関係ないと言えるかも知れません。
多くの人が「より多くのカロリーを摂ると太る」と思っているのは、この設定体重に戻ることを意味します。ですから、食べる回数よりも一日トータルでのカロリーや炭水化物の摂取量が問題になるはずです。普段からダイエットで体重を低くキープしている人や、運動で無駄な体脂肪を落としている人などは、食べる頻度が増すことによって、摂取カロリーが必要量以上に増えれば太ると考えることができます。
上記の第1節-(2) で引用したように、介入試験における「過体重や肥満者に食事の機会を増やす処方は、誤って過剰摂取や体重増加を引き起こさせ代謝の健康状態が悪化する可能性がある」という研究結果は、この(A)の部分について当てはまると考えます。
3. 結 論
(1)私の腸内飢餓の理論を基にすれば、上記の第2節の様に「食事の頻度」と体重の関係性をより具体的に説明できると考えています。
腸内飢餓が引き起こされる条件の中で一番大切な要素は「何を食べるか?」ですが、食事の頻度(食事の間隔)によって、全く同じ摂取量であっても体重に異なる影響を及ぼす可能性があるのです。食事の頻度は、「エネルギーバランスとより広範な健康増進行動パターンの文脈にとって二次的な要素である」という事実は否めませんが、重要な要素でることは間違いありません。
(2)私の考えでは、1日2食が太りやすい(設定体重がアップするという意味で)傾向はあるのですが、1日4~5食でも体重の設定値はアップする場合があります。
私の友人で、大学受験の浪人時代に1日4~5食で10キロ以上太った男性がいます。(高校時代は柔道部に属し、たくさん食べていたのにガリガリだった。)
彼に体重の増加について話を聞くと、受験勉強中はパンやおにぎり、カップめんなどの軽い食事が一日の食事の半分以上を占めていたそうです。
第1節-(5) の引用でも示したように、「食事」「スナック」の定義が曖昧であり、炭水化物が多く野菜の乏しい軽食でさえ「一回の食事」とカウントするのであれば、食事回数(頻度)を議論することに意味はありません。アンケートなどを用いた観察研究においても、不一致な結果が出ることは当然予想されます。
(3)観察研究の対象によって、食事頻度と体重の関係性においてチグハグな結果が起こりえます。
元々痩せた人や中型体形の人が、バランスの良い3度の食事をし、間食でドーナツやクッキーを食べたとしても、設定体重がアップする理由とはなりません。
それに対し、体の大きな人や肥満の人がお腹が空き過ぎて、結果的に4~5回食べてしまう場合があります。体が大きくなるにつれて胃腸も大きくなり、消化力も強くなると仮定すると、彼らが他の人と同じ物を食べても、早く空腹を感じると考えられるからです。
(4)食事の頻度を増やすことで、体重減少に役立つ可能性が大いにあると考えます。
もちろん、ファーストフードやラーメン、スナックパンなどの炭水化物やお肉に偏った食事はいけませんが、糖質制限食に見られるように、炭水化物の量を減らし、野菜・タンパク質・乳製品・オイル・ナッツなどを増やした食事を毎日のベースにすることです。(炭水化物も完全に精白されていないものやアルデンテのパスタなどが望ましい。)
腸内に未消化物を多く残して、空腹感を減らすことが主なポイントであり、それによってエネルギー消費(食事誘発性熱産生)が増えるだけでなく、吸収率が低下すると考えています。
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<参考文献>
[1][2]Hutchison AT, Heilbronn LK. Metabolic impacts of altering meal frequency and timing - Does when we eat matter? Biochimie. 2016 May;124:187-197. doi: 10.1016/j.biochi.2015.07.025. Epub 2015 Jul 29. PMID: 26226640.
[3]Aljuraiban GS, et al. The impact of eating frequency and time of intake on nutrient quality and Body Mass Index: the INTERMAP Study, a Population-Based Study. J Acad Nutr Diet. 2015 Apr;115(4):528-36.e1. doi: 10.1016/j.jand.2014.11.017. Epub 2015 Jan 22. PMID: 25620753; PMCID: PMC4380646.
[4]Kahleova H et al., Meal Frequency and Timing Are Associated with Changes in Body Mass Index in Adventist Health Study 2. J Nutr. 2017 Sep;147(9):1722-1728. doi: 10.3945/jn.116.244749. Epub 2017 Jul 12. PMID: 28701389; PMCID: PMC5572489.
[5][6]Flanagan A, et al., Chrono-nutrition: From molecular and neuronal mechanisms to human epidemiology and timed feeding patterns. J Neurochem. 2021 Apr;157(1):53-72. doi: 10.1111/jnc.15246. Epub 2020 Dec 10. PMID: 33222161.