トピックス

2019.10.23

寝たきりなのに、食べても痩せるのは?(病院・介護編)

目次

  1. 寝ていれば(動かなければ)太る訳ではない
  2. 『運動』は太る方向への力、『寝たきり』は吸収を低下させる
  3. もう一つの原因は『食事の摂り方』
<まとめ>

読者から、「お年寄りや病人がベッドで寝たきりなのに、食べても痩せるのはなぜでしょうか?」「ほとんど動いいていないから、カロリー消費は少ないはずなんですけど・・・」という主旨のメールを頂きました。
今回はそれについて書きたいと思います。

実は私の父も、平成29年の秋に体の硬直化と幻視が出て(私は薬のせいだと思っているのだが)、普通の生活からわずか4か月で「介護5」まで落ちてしまったんです。

昔は「塩をなめても働け・・・」と言っていた父が、今は食べて寝ての繰り返し。

施設での3回の食事は、お粥がベースだけどほぼ食べていますが、体重は、以前は60キロ台だったのが今は40キロ台になっています。(確かにお粥になり糖質なども減っていますが、それ以外の原因を書きます。)

1.寝ていれば(動かなければ)太る訳ではない

このブログを通して何度も言っているように、「カロリーの摂り過ぎ、運動不足が太る原因である」というメッセージそのものが間違っているのである。痩せるために「カロリーを減らしなさい、運動しなさい」というアドバイスがどれほどの間違いをおかして来たかはこのブログで再三説明している通りである。

【関連記事】ダイエット(カロリー制限)は、長期的にはほぼ成果なし


私も若い時に10日ほど入院したことがあるが、朝食も普段なら食べないような量がある。11時半にもなれば昼食が運ばれて来て、お腹もすかないのに、丸々1食ある。夕方5時半になれば「また飯~?」という具合で、何も動いていないのに食事ばかりが運ばれてくる。

もし、動かなければ太っていくのであれば、入院して3回食べている患者はどんどん太っていくことになるが、そんな事はない。普段から仕事で忙しくしていた人やダイエットをしていた人が、動かなくなって数キロ太ることはあるかも知れないが、それは私の言う基本体重(Base Weight)に戻ることを意味しているのです。

2.『運動』は太る方向の力で、『寝たきり』は吸収を低下させる。

『運動』は一時的にカロリーを消費したとしても、最終的にはむしろ太る方向の力です。

食事・運動・体重の関係性を間違っている


一方、病院・施設などで寝たきりになると、これと逆の状態になる訳です。体は動かさない(脳も使わない)から、栄養を摂り込む力(吸収力)は減っていきます。

植物で例えるなら、運動している時は ”太陽があたる” 状態で、寝たきりは  ”太陽があたらない日陰の状態” です。その状態で肥料や水をいくら与えても十分に育ちません。

ヒマワリ

牛乳を例にとって説明すると、寝たきりの人が牛乳グラス1杯を3~5時間おきに飲んだとしても、カルシウムの吸収が増え、骨が強くなるわけではありません。むしろ運動したり、飲んでから何も食べずに8時間、9時間空腹で過ごす方が吸収はアップしていくのです。

以前、引用した部分だけど、もう一度引用させて頂きます。

<「人はなぜ太るのか?」ゲーリ・トーベス著より引用>

肥満治療をする臨床医の多くは、1960年まで、運動により減量できる、また座りっぱなしの生活は体重を増やすという考え方は幼稚だとして退けていた。肥満と治療の専門家ラッセル・ワイダーが行った1932年の肥満に関する講義では、「肥満患者たちがベッドで安静にすることでより多く減量し、その一方、極端に激しい身体活動は減量の速度を低下させる」と語った。
「運動をするほどより多くの脂肪が消費され、減量できるはずであるという患者の理屈きわめて正しいが、体重計が何の進歩も示していないことを見て患者はがっかりする」とワイルダーは述べた。(引用以上)

3.もう1つの原因は『食事の摂り方』

もちろん、70、80歳になってくれば、胃腸(消化、吸収)や体の様々な機能が低下してくると思います。そういう人達が、短い間隔で無理して食事を摂ることは "痩せる方向" にも働きます(もちろん、食欲が旺盛ですぐ空腹になる人は太るかもしれない)。

私が、ダイエットで正しく痩せるためには『空腹をつくらないように、野菜・脂質・肉類などを食べることが必要である』と説明しましたが、その状態になる訳です。以下、2つの点について説明します。

(1)”食べて、すぐ寝る” を繰り返すのが良くない。

まず皆さんも経験があるかも知れないけど、夜寝る直前に食べてすぐ寝ると、朝起きて胃腸がもたれているような経験はないだろうか?これは私の考えですが、立って動いているから、胃がスムーズに蠕動(ぜんどう)運動をして腸に食べ物を送るけど、ずっと寝ていると胃にたまりやすくなるのではないかと思うのです。

つまり胃下垂の人のような感じで、食べ物が胃に残ってしまうのです。胃に前の食事が残っている状態で、次の食事を摂ることを何度も継続して繰り返すと、間違いなく痩せていきます。

(2)脂質や繊維質を多量に摂るのはヘルシーではない

私は、老人ホームで食事をつくる仕事もしていたのですが、栄養士がつくる献立に対しいつも疑問に思うことがある。これも間違ったカロリーや栄養の理論に基づいている。

♦まず1つ目は、油脂を使う料理が本当に多い。
栄養士はカロリーの帳尻を合わすために、朝食から炒め物などを献立に入れることが多い(もちろん、昼・夕食も多い)。

炒め物

健康な人でも朝から炒め物は食べないだろう。まして、胃腸の弱くなるご老人などに対しては、これらは、食欲を落とすだけでなく下痢などの原因にもなる。

また、ムース食などにしても、ソフトにするために油脂が加えられることがあるが、消化が悪くなり、胃腸の弱ってきた人には健康的とは言えない。

♦2つ目は、毎食たっぷりの繊維質の野菜や海藻類がはいること。

若い人でも食べないような量の野菜・海藻が毎食の献立に入る。特にキノコ、レンコン、ゴボウ、ヒジキ、小松菜、ブロッコリー、インゲンなどは定番である(ほぼ中国産などの冷凍だが)。

これは逆の見方をすれば、ダイエットする人に勧めているような食事なのです。ダイエットをしたい人にとってはヘルシーな食事かもしれないけど、消化する能力が衰えてくる老人に対しては必ずしもそうではない。

繊維質野菜

自分の意志で「食べたくない」と思う人は適度に残すのでそれほど影響はないが(そのため毎食大量の残飯)、他人の介助で食べるようになると、それも選択できなくなる。

私が30才の頃、祖父が病院に入院し寝たきりだった時、看護師がブロッコリーを口に押し込んでいたのを思い出すが、「なぜブロッコリー食べないといけないんだ・・・」と思っていた。

寝たきりの人のことを考えると、野菜などは少し減らし、消化が良くて栄養のあるもののほうがいいと思うんだ。

まとめ

施設・病院側の都合もあるのだろうが、朝食の提供は大体8時前で、11時半過ぎになると昼食。たった4時間も経っていないのに通常の食事。そして、夕食は5時半から6時前の提供。

胃腸の機能の低下してくる人が、このように短い間隔で油脂や繊維質の野菜をたっぷり摂ることは、体にとって良いこととは思いません。

まして寝たきりになると吸収率が低下し、胃腸の機能のさらなる低下に伴い、胃腸に食べ物がたまりやすくなる可能性があります。

(ある日の昼食)

動いていないから消費カロリーは少ないはずで、「(特に油脂などを中心に)カロリーを増やせば太るはず」という考えは、このブログで何度言っているように間違った理論に基づいています。体の調子が悪くなってきているから ”食べれない" のに、さらに脂質を加えると体調を悪化させる可能性があります(私たちが風邪の時に、炒め物・揚げ物を食べるようなものです)。

カロリーの摂取量よりも、他のいろんな条件が影響することを考慮すべきです。

余談

老人ホームで働いていて思うのは、『食べ残し』の問題に誰も無関心だということ。捨てるのが当たり前になっている。
1~2割の人は完食する人もいるけど、大半の人は年がいくと食べれないのだから、「量を少し減らして質を上げれば」といつも思うんだけど・・・。

栄養士や施設側が量や見た目にこだわるから、同じ料金でドンドン質が低下していっている。

また給食会社なども苦労しているだろうが、わずか1人3食あたり、1300円前後の委託料の中で、材料費や調理師、パートの給与も払わないといけない。当然、中国産の冷凍野菜や、あまり聞いたこともない魚(シイラ、バサ、アブラカレイ etc)、安物の輸入肉などどんどん質の悪い材料にシフトしていく。美味しくないから、お年寄りも食べなくなる。これって私達の未来や環境を考えた時にいいことだろうか?

メルマガ登録

メールアドレス  
※は必須項目です  

サイト内検索