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カロリー
2022.12.20
カロリー計算:アトウォーター係数が完全ではない理由
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目次
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- そもそも Atwater係数 とは?
- 消化は試験管の中で燃やすのとは違う
- 腸内飢餓のメカニズムからの視点
<結論>
<はじめに>
「1カロリーは1カロリーだ」という言い回しがある。
これは、「ブロッコリーでも、ごはん・肉・オリーブオイルでも、摂取源に関係なく、食べた1カロリーは、体内でも1カロリーである」という一部の有識者の考えであり、その考えを体重管理に当てはめると、食べる物は何でもいいから、トータルの1日の摂取カロリーだけを気にすることになる。
もちろん人間の体はそんなに単純ではないし、多くの研究者がこれに警鐘をならしている。
私はこれを説明する上で、体の「内部」で起こる反応(吸収された後)と「外部」で起こる反応(吸収される前)を分けて説明すべきと考えました(注1)。今回は体の外部での問題として、食品ラベルのカロリー表示のベースとなっている、アトウォーター(Atwater) のエネルギー換算係数について考えてみたいと思います。

多くの腸内細菌の学者などが認識するように、胃や腸などの消化器官は体の「外部」であり(腸内悪玉菌が直接体に悪さをしないのも体の外部だから)、私がこのブログで説明してきたこと、つまり「吸収率が重要である」という考えと完全に一致するのである。
(注1:「食事誘発性熱産生」は吸収された後に使われるエネルギーだが、消化に関することなので「外部」の反応としても考えたい。)
1. そもそも Atwater係数とは?
1800年代には、食品を燃やして周囲との温度変化を測定することで食品中の熱量(カロリー)を測定する方法が化学者によって開発されていった。食品を燃やすことは、私たちの体が食品を分解しエネルギーを得る過程と似ていたのである。
食品のカロリーについて私たちが知っていることの多くは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、コネチカット州ウェズリアン大学のウィルバー・アトウォーターの研究からきていると言われる。彼は、人間の代謝とさまざまな食品のエネルギー含有量を理解することを目的としたさまざまな実験を行った。

彼は、ボランティアの人にいろいろな食べ物を食べさせ、食べ物と排泄物の燃焼熱の差を計算することで、彼はボランティアが吸収したカロリーを概算したのだ。また、アトウォーターは体内では消化されない食物繊維や(注2)、タンパク質が吸収された後にその一部が尿素として尿中に排泄されることを考慮に入れていたとされる。
アトウォーターの実験から120年以上たった今でも、このアトウォーター係数は、すべての食品のカロリー計算の基礎となっている[1]。
(注2:現在は食物繊維なども大腸で腸内細菌による発酵分解を受けて短鎖脂肪酸となり、多少のエネルギーを生むことが分かっている[2]。)

現在、食品メーカーなどで広く使用されている一般的なアトウォーター係数は、1グラムあたり、タンパク質と炭水化物が4kcal、脂肪が9kcal、アルコールは7kcalで、これは食品の種類にかかわらず、すべての食品に適用される。
特定のアトウォーター係数の使用も認められているが、それは食品群ごとに異なる係数が使われている[3]。
また、この係数はその当時のアメリカ人の平均的な日常食を元に作成された数値なので、日本では、穀類・大豆製品・油脂類・動物性食品など主要な食品については、日本人を対象とする研究によって求められた係数が使われているという[4]。
2. 消化は試験管の中で燃やすのとは違う
私達は食べ物を摂取し、それを様々な消化酵素によって、複雑な食物分子を単糖やアミノ酸などの単純な構造に分解し、それを吸収することでエネルギー源を体の中に取り込みます。当たり前ですが、これは実験室内で食品を燃やすのとは全く違うプロセスである。
ロブ・ダン氏(ノースカロライナ州立大学)によると、食品ラベルに記載されるカロリー値は推定値か近似値に基づくもので、正確に反映されたものではないという。
最近の研究では、ある食品から得られる総カロリーを正確に計算するためには、その食品の細胞壁の構造の違い、調理法の違い、異なる食べ物を消化するために使うエネルギー(食事誘発性熱産生)の差、腸内の何億というバクテリアが人間の消化をどの程度助け、逆にカロリーの一部を自分用に盗んでいくのか、といった目まぐるしい要因を考慮しなければならないことが分かっている[5]。
(1) 野菜の中でも消化性に違いがある
野菜と一概に言っても、葉や茎の固さは同じではありません。ある種の野菜の茎や葉の細胞壁は丈夫なのに対し、ホウレン草、キュウリ、レタスなどの野菜は柔らかで90%以上は水分です。
また、同じ種類の野菜であっても、成長するほど細胞壁が固く丈夫になり、消化が困難になる傾向があります。
特にトウモロコシ、木の実のような種子は細胞壁がしっかりしており、食品は貴重なカロリーを細胞壁の内に残したまま、一部が消化されずに体内を通過することができるのです[5]。
米国農務省のジャネット・A・ノボトニーらの研究(2012年)によると、人々がアーモンドを食べるとき、ラベルに記載されている170 kcalではなく、1食あたりわずか129 kcalを摂取することが判明しました。

ピーナッツ、アーモンド、クルミなどナッツ類は、タンパク質、炭水化物、脂肪が同程度の他の食品よりも細胞構造がしっかりしており、その細胞壁が消化を制限していることが証明され始めているのである。アトウォーター係数ではナッツ類の消化率が過大評価されている可能性があるのです[6]。
(2) 調理方法によってカロリーは変化する
またロブ・ダン氏によると、現代のカロリー表示の最大の問題点は、食べ物から得られるエネルギー量を劇的に変化させた食品の調理・加工する方法を考慮していないことだと言われている。
私たち人類は、生の食べ物に火を入れることを覚えた。煮たり、焼いたり、炒めたり、発酵させたり、さまざまな加工を行い、食べやすく柔らかくすることを覚えた。それによって、食品から抽出するカロリーを劇的に増加させたはずである[5]。

さらに工業的な食品加工は、食べ物を高温・高圧の中にさらすだけでなく、空気を加えソフトに仕上げることで、さらにカロリーを吸収しやすくしているとの指摘もある。
例えば、消化の良くないとされるコーンはポタージュに、生のピーナツは焙煎しピーナツバターに加工される。このようにすることで、摂取できる栄養やエネルギーは飛躍的に増加したと考えれるであろう。つまり同じ豚肉でも、すべて同じでない。ブロックで焼くのと、パテにするのとでは消化で使われるエネルギーも、栄養の吸収のスピードも変わってくるのである。
(3) 消化・免疫の為に必要なエネルギー
消化に要するエネルギーも同じでないことが研究で明らかになっている。これは食事誘発性熱産生と呼ばれ、タンパク質はアミノ酸に、脂肪は脂肪酸に、炭水化物はグルコースに変換され吸収されるのだが、その際に大きなエネルギーを必要とすることが分かっている。タンパク質が分解される際に、酵素がその緊密な結合を解きほぐす必要があるため、脂肪の数倍ものエネルギーを消化に必要とするそうです[7]。
また全粒粉と精白された小麦でも異なる。2010年に行われた研究では、ひまわりの種、穀粒、チェダーチーズが入った600または800カロリーの全粒粉パンを食べた人は、同じ量の白パンとプロセスチーズ製品を食べた人に比べて、その食べ物を消化するために2倍のエネルギーを消費したことが分かった。その結果、全粒粉パンを食べた人は、摂取カロリーを10%少なくすることができたとい言う[8]。

また日本人や韓国人は文化的に生魚や生肉を食べるのが好きだ。しかし生の肉などは危険な微生物がたくさん潜んでおり、私たちの免疫システムが病原体を攻撃したり、菌を特定したりするためにエネルギーを使うことが判明していると言われる[5]。
生のタルタルステーキよりも、同じ量の火を通した肉の方が消化にかかるエネルギーも少なく、有効となるカロリーが多い可能性があると言われている。
(4) 消化酵素・腸内細菌の違い
牛乳に含まれる乳糖を分解するのに必要なラクターゼという酵素は、ほとんどの赤ちゃんは持っているが、成人になるにつれ分泌が減ると言われている。
またお米やスパゲティーなどのデンプンは調理した後に放置され冷めると、一部のデンプンが再結晶してヒトの小腸では消化されない難消化性に変化することが分かっている(レジスタントスターチ)。
さらに、特定の民族にしか存在しない微生物もいる。例えば、多くの日本人の腸内には、海藻を分解するのに適した腸内細菌がいると言われている。この腸内細菌は、生の海藻に付着していた海洋細菌から、海藻を分解する遺伝子を盗んだものであることが判明している[5]。
(5) 計算方法によって違いがでる
一般的なアトウォーター係数は、当時のアメリカ人の平均的な日常食を考慮して、炭水化物・脂質・タンパク質の消化吸収率を97, 95, 92 %とし、それを補正して、1グラムあたり、タンパク質と炭水化物が 4kcal、脂質が9kcal、アルコールが7kcalとしたものである[9]。タンパク質であれば植物性か動物性かの違いがあるし、炭水化物では単糖か多糖類で代謝可能なエネルギー値が若干異なるが、それらを平均して導かれた値なのである。
その他にも、食品をいくつかのグループに分け、そのグループの代表的な食品について求めた係数をグループ全体に適用する特定のアトウォーター係数もある。
アメリカの食品医薬品局(FDA)では、これらを含め合計5つの測定方法を認めており、食品会社が選択する方法によっては表示カロリーにバラつきがでると指摘する方もいる[10]。そういう曖昧さを積み上げていくと、1日当たりの摂取カロリーは、大きく変わることがありうるだろう。
<この節の総括>
ロブ・ダン氏は次のように指摘される。
(1)アーモンドの例のように、すべての食品ごとに、アトウォーター・システムを修正することは可能である。しかし、その場合、すべての食品ごとに排泄物を再調査する必要があるだろう。
(2)しかしカロリー計算を全面的に見直したとしても、食品から抽出されるカロリーの量は、食品と人間の体や多くの微生物との複雑な相互作用によって決まるため、正確な数値になることはないであろう。とりわけ、消化の過程は非常に複雑であり、誰にでも合う確実なカロリー計算のための公式を導き出すことはおそらく不可能であろう。
(3)それよりも、食べ物から得られるエネルギーについて、人間の生物学的な観点からもっと慎重に考えるべきでしょう。加工食品は胃や腸で簡単に消化されるため、少ない労力で多くのエネルギーを摂取することができます。
一方、野菜やナッツ、全粒粉などは、カロリーの割に消化に労力を要し、加工食品よりもはるかに多くのビタミンや栄養素を含み、腸内細菌を幸せな状態に保ってくれるのです[5]。
3.腸内飢餓のメカニズムからの視点
アトウォーター氏含め当時の研究者・栄養学者は、人々が十分な栄養を摂取できるように尽力されたし、その係数に基づくカロリー計算システムには大きなメリットがある。
しかしそれは一部で間違った形で認識され、今や肥満や体重増加の問題も引き起こしているのではないだろうか?肥満の問題がいつまでたっても解決されない理由は、多くの人が食品のカロリー値にこだわり過ぎているからだ。
どういうことかと言うと、例えば、加工度の低い全粒粉のパンとナッツ、チキンソテーの食事(400kcal)を食べたとしよう。消化にかかるエネルギーなどを考慮した結果、実質的に摂取カロリーを10%少なくできた(360kcal) と仮定して、「360kcal 分の白パンとチキンテリーヌを食べれば一緒ではないか」という議論は全くナンセンスである。

全粒粉のパン、ナッツは消化されない固い繊維質が最後まで残るため、腸内では「食べ物がまだある」というメッセージだが、白い食パンと消化の良いタンパク質などの組合せは、すばやく消化され、私の理論の3要素(+1)の条件を満たせば「食べ物がもう無い」という腸内飢餓のメッセージを小腸を通して脳に送るだろう。
つまり毎日の摂取カロリー合計を減らしたにも関わらず、太る原因となることがある。
▽私はこのブログ全体を通して、設定体重(set-point weight)の違いが「肥満の人と痩せている人の根本的な違いである」ということを説明しているのですが、設定体重が高いことは「腸の吸収効率が高い」ことと関連しており、それは腸内飢餓によってアップします。
そして腸内飢餓を引き起こす重要な要素の1つが「消化力」であるので、消化率も吸収効率も私の理論上は極めて重要である。にもかかわらず、被験者の平均値を元にした数値だけを「全て」と信じれば、それらを無視することになるのである。多種多様な人々の消化率や吸収率は実験に参加した被験者の平均値では語れないと思う。
■アトウォーター係数での吸収率の問題については、以下の記事をご覧ください。
【関連記事】摂取カロリーを単純合計することに意味はない
結 論
アトウォーター係数はその食品がどれだけのエネルギーを含んでいるのかの尺度だが、肥満の問題を扱うには不十分である。消化に要するエネルギーや食品組成などを考慮し、アトウォーター係数をより正確にしたとしても、数値だけで判断するのであれば肥満の問題は解消しないと考えます。
一つの案として、加工度の高い食品に赤マーク、加工度の低いものに緑マークなどをつける「信号機」システムを導入し、消費者に注意喚起してはどうか、ということが一部の研究者の中で提案されているようだが[11]、それには私も賛成である。また、満腹度、噛む回数、消化のスピード(難消化性)などを組み合わせた信号機システムも可能だ。
今、私達に必要なことは、いかにも科学的に見える「カロリー計算」という見かけの正確性から少し離れ、伝統的な食事・食習慣を見直すことではないだろうか。

ロブ・ダン氏も指摘された事と重複するが、伝統的な野菜料理・豆料理・ナッツ・小魚、加工されていない肉・魚、乳製品、発酵食品、全粒粉のパン(ごはん)などを食べることは、カロリー上のメリットだけでは説明ができない。
それらの食品は加工食品よりもはるかに多くのビタミンやミネラルを含み、繊維質は腸内細菌を良好な状態に保ち、適度な満腹感を与え、急激な血糖値の上昇を予防するなど、様々な健康上のメリットを与えてくれるのです。
食べ方によっては、摂取カロリーなど気にせず、痩せることも可能であるはずです。
参考文献
[1]Giles Yeo. 「食品パッケージのカロリー表示は間違っている」. 2021.
[2]Japan Food Research Laboratories. 「食品の熱量について」. 2003 Jul.
[3]The Nutrition Coordinating Center (NCC). Primary Energy Sources.
[4]高田和子. 「摂取したエネルギーの体内での吸収と利用」. 体力科学. 2007. Pages 56, 287-290.
[5]Rob Dunn. 「カロリー計算が間違っている理由を科学が明らかに」. 2013.
[6]Novotny JA et al. 「アトウォーター係数におけるアーモンドの実測エネルギー値との相違」. Am J Clin Nutr. 2012 Aug;96(2):296-301.
[7]Westerterp KR. 「食事誘発性熱産生」. Nutr Metab (Lond). 2004 Aug 18;1(1):5.
[8]Barr SB, Wright JC. 「自然食品と加工食品の食後エネルギー消費量」. Food Nutr Res. 2010 Jul 2;54.
[9]高田和子. 2007.「摂取したエネルギーの体内での吸収と利用」. 体力科学. Pages 56, 288.
[10]Cynthia Graber, Nicola Twilley. Why the calorie is broken. BBC future. 2016.
[11]Richard Wrangham, Rachel Carmody. Why Most Calorie Counts Are Wrong. Harvard University. 2015.
2017.12.22
炭水化物が太るのか、カロリーが太るのか?論争
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目次
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- 知ってもらいたい「炭水化物抜き」の歴史
- 糖質制限が医師達に受け入れられなかった理由
- 炭水化物と脂質は逆の性質をもつ(私の考え)
<まとめ>
まず、お断りですが、炭水化物だって4kcal/gです。
ネット上では、「だから結局カロリー、食べ過ぎが原因なんじゃないの?」という意見もありますが、"カロリーが原因” と考える場合、9kcal/gの脂質を中心に全体量を減らします。一方、"炭水化物(デンプン)が太る原因" とする主張では、炭水化物以外の肉や脂質(油脂)はいくら食べても良いとされていました。
今回は、『炭水化物』と『カロリー』のどちらが太る原因なのか?という歴史的な経緯を振り返ると共に、最後に私の考えを述べたいと思います。
1.知ってもらいたい「炭水化物抜き」の歴史
日本では2015年前後から、 低炭水化物(ロカボ)ダイエットがブームとなっていたのですが、世界に目を向けると、1800年代から何度となく繰り返されていた方法でありました。引用部分が多くなってしまうのですが、ご了承ください。私の理論を説明するうえでも是非ご紹介したい内容です。
(「人はなぜ太るのか?」【ゲーリー・トーベス著】より引用)
"1825年12月、ブリヤーサバラン(フランスの政治家、美食家)は『味の生理学(The Physiology of Taste)』という本を出版した(30章のうち、肥満に関しては2章[原因、予防])。彼は30年の間に、肥満に苦しんでいる人達と500回以上も夕食を共にし、会話の中で、太った男達は次から次にパン・米・パスタ・ジャガイモへの情熱を語った、という。

これによりブリヤーサバランは確実な肥満の原因を見つけた。
1番目は生まれながらの性質であった。彼は「多くの脂肪を消化できる能力をもつ人は、いわば肥満になるように運命づけられている」と書いた。
2番目は「デンプンと小麦粉であり、砂糖と一緒に使用すれば確実にこの効果を示す」と付け加えた。ブリヤーサバランは「肥満防止食は(略)・・・デンプン質または小麦由来のすべての物を多少厳しく節制する事が減量につながると推量される」と書いた。

ブリヤーサバランの書いた内容は、以来際限なく繰り返され、再発見されてきた。1960年代に至るまで、それは世間の常識で、私達の両親や祖父母が本能的に真実である、と信じたものであった。"
(ゲーリ-・トーベス. 2013.「人はなぜ太るのか」. Page 164-5.)
<1844年>
"ジャン・フランソア・ダンセル(フランス人、医師)は、肥満に関する彼の考えをフランス科学アカデミーで発表した。彼の書いた『肥満や過剰な脂肪蓄積』という本は1864年に英訳された。彼は「肉ではないすべての食べ物(炭素と水素が豊富な食物。つまり炭水化物)は脂肪をつくる傾向があるに違いない」と書いた。

彼は、肉食動物は決して太っていない一方で、草食動物はしばしば太っているとも述べ、患者が ”主に肉のみを食べ” その他の食べ物を少量食べれば、一人の例外もなく肥満を治癒できると主張した。
ダンセルは、彼の時代の医師達が『肥満は治らない』と信じた理由を、「医師達が肥満を治そうとして処方した食事(食べる量を減らすことetc)が、まさに肥満の原因になるものだったためである」とした。"(※これはゲーリー・トーベス氏や私のブログのポイントとも通じます)
( 「人はなぜ太るのか」. Page 168.)
▽"20世紀の初めまでは、一般的に医師は肥満を治らない病気と見なしており、何でも試してみることが妥当であるとされた。患者の食事の量を減らし、もっと運動させることは数ある治療法の1つにすぎなかった。
<1950年代>
ミシガン州立大学の栄養学部の主任マーガレット・オールソンは、過体重の学生に従来型の反飢餓食を与えた場合、彼らの体重はほとんど減らず、彼らは「すっかり活気がなくなり、空腹であることを常に意識していたため、やる気がなくなった」と報告した。

一方、1日数百カロリーの炭水化物と多量の蛋白質・脂肪を含む食事を摂った場合、平均週3ポンド(約1.4kg)減量し、「食間の空腹感はなく、気分の良さと満足感があった」と報告した。
このような報告は1970年代まで続いた。この食事療法を行った人達は、ほとんど努力せずに体重を減らすことができ、その間ほとんど空腹を感じなかった。"
(「人はなぜ太るのか」. Pages 167,175.)
2.糖質制限が医師達に受け入れられなかった理由
上記の流れから行くと、炭水化物や糖を控え、その他の肉や脂質を含む食べ物を多く摂ることで、肥満の問題は解決に向かうかに思われますが・・・ここに「カロリーの原則」が出てきます。
(再び「人はなぜ太るのか?」より引用)
"1960年代までに、前述した脂肪調整の科学は生理学、内分泌学、生化学の学術誌で議論されたが、医学雑誌や肥満そのものを扱った文献で見られることはほとんどなかった。1960年代から1970年代後期にかけて、医師がこれを信じなくなったとき、それはたまたま現在の肥満と糖尿病の流行の始まりと一致した。

<1963年>
米国医師会誌において、脂肪調整の科学は無視された。太っている人達が、(炭水化物や糖以外の)どんな食べ物でも大量に食べることができるという考えを基礎においた治療法を受け入れる医師はいなかった。
そもそも、人がなぜ太るのかについての明確な理由として、現在も受けいれられている『太っている人達は食べ過ぎているからだ』という理由に反するものであったからである。
そこには別の問題もあった。
アメリカの保健局の専門家は、食事に含まれる脂質が心臓病の原因であり、炭水化物は「心臓によい」と信じるようになっていた。(~略~)炭水化物が「心臓によい」という考えは1960年代に始まり、炭水化物が私達を太らせるという考えと相容れることはなかった。

食事に含まれる脂質が心臓発作を引き起こすとすれば、炭水化物をもっと多くの脂質に置き換える食事法は、たとえ私達を細身にするとしても命を脅かす。その結果、医師と栄養士は炭水化物を制限する食事法を攻撃し始めた。

<1965年:ニューヨークタイムズ>
「栄養学者に非難された新しい食事法:炭水化物の低摂取は危険である」は、炭水化物を制限した食事は高脂質の性質をもっているため、それを処方することは「大量殺人に等しい」というハーバード大学のジャン・マイヤー(Jean Mayer)の主張を引用した。
まずタイムズは「ダイエットをする人達は、カロリーの摂取量を減らすか、それを燃やすかのどちらかによって過剰なカロリーを削減しない限り、体重を減らせないことは医学的な事実である」と説明した。
今や、それが医学的な事実でないことはわかっているが、1965年の段階では栄養学者たちはそれを知らず、今もなお、彼らの多くはそれを知らない。(~略~)
次に、この食事法は炭水化物を制限するため、より多くの脂肪を摂取することで埋め合わせをする。マイヤーが大量殺人という非難をしたのは、その食事が高脂質の性質をもっていたためとタイムズは説明した。"(引用以上)
(「人はなぜ太るのか」. Pages 177-79.)
3. 炭水化物と脂質は逆の性質をもつ(私の考え)
この論争について、少しお話したいと思います。
これまでいくつかの研究で、3大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)を食事にどう組み合わせるかにより、体脂肪のつき方に違う結果をもたらすとことが明らかになってきています。同じ1カロリーであっても、消化吸収に使われるエネルギーに差異があり、刺激するホルモンが異なり、どのように体内で代謝されるという経路が異なるーことなどが要因と考えられています。
もちろん、これらの研究も素晴らしいと思うのですが、私の理論上で付け加えると、「炭水化物と脂質は消化の過程で、逆に近い性質を持つ」ということがポイントとなります。
まず、精製された炭水化物はタンパク質・脂質に比べ消化が早く、それのもつ「希薄効果」「プッシュアウト効果」によって消化はさらに早まり、私達はより空腹になります。野菜・脂質・乳製品などが不足するバランスの悪い食事では、最終的には腸内飢餓を引き起こしやすくします。

それに対し、肉や脂肪(油脂)は消化に時間がかかります。消化にかかる時間は、食べる量や調理法、個人の消化力の差異にもよりますが、一般的にタンパク質は3~4時間、脂質は6~8時間とも言われています。
特に脂肪が十二指腸に入ると、脂肪の消化吸収を促進するホルモン(コレシストキニン:cholecystokinin)が分泌されますが、これは同時に胃の運動を抑制し、胃内容物の排出を遅らせると言われており、胃もたれ、膨満感などの原因にもなりえます。
さらに、炭水化物が少なくタンパク質・脂質の多い食事では、濃密な栄養を腸に送ることになるので、消化が全体的に遅くなり、その結果、空腹感が押さえられ、順に吸収率も低下すると私は考えます。
つまり、3大栄養素を食事にどの様に組合せるかによっては、カロリー摂取量が増えても体重減少効果があると言ってもいいでしょう(肉や脂肪を早く消化できる人にとっては、体重減少効果が薄いことがありうる)。
まとめ
(1) 1800年代初期から1960年代に至るまで、いくつかの研究では、太った人たちが食事中の炭水化物を肉や脂肪の多い食事に置き換えることで、無理なく痩せれるということが証明されていた。しかしその頃までに、肥満は摂食障害として理解されるようになり、このダイエット法は生理学、内分泌学などでのみ議論された。
(2) 1960年代から1970年代後期にかけて、ほとんどの医師は、太った人が肉や脂肪をたくさん食べて痩せれるというダイエット法を受け入れなかった。なぜならそれは「カロリーの原則」に反していたからである。
(3) また、保健局の専門家は食事に含まれる脂質が心臓病の原因であり、炭水化物は「心臓によい」と信じるようになっていた。その結果、医師・栄養士は炭水化物制限ダイエットを攻撃し始めた。
(4)(私の考え)両者の言い分には一理あるが、カロリーの数値がすべてを決める訳ではない。同じカロリーであっても、食材の組み合わせによっては体重管理において異なる影響を及ぼす。特に、炭水化物と脂質は消化の過程で逆に近い性質をもつ。
2017.06.11
1日あたり20キロカロリーの重要性とは?
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目次
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- 1日あたり20kカロリーで何が変わるのか?
- 足し算、引き算では出来ないこと
私は、「人の体には現状を維持しようとする機能がある」と言いましたが、それと関連する面白い記事があったので紹介します。今回は全て引用になりますが、ご了承下さい。
【関連記事】 「一番優先されているのは現状維持」
1.1日あたり20kカロリーで何が変わるのか?

(「人はなぜ太るのか?」 【ゲーリー・トーベス著】より引用)
"体脂肪を毎年新たに2ポンド(約1kg)ずつ、25年間に50ポンド(約23kg)増やすためには、私達は毎日、何キロカロリー多く食べなければならないのか?
答えは1日当たり、20キロカロリーである。
【1日当たり、20kcalの超過 ×365日】とすれば、毎年7千kカロリーをやや上回る量のエネルギーを脂肪として蓄積し、結果として2ポンド(約1kg)の体脂肪が増加する。
脂肪の蓄積が「入るカロリー/出るカロリー」によって決まるということが真実であれば、「25年間に50ポンド(約23kg)増やすためには、毎日、平均でたったの20kカロリーを余分に摂取するだけでよい」ということである。それを元に戻すためには、毎日の摂取エネルギーを20kカロリー少なくするだけでよい。

20kカロリーは、ハンバーガーやクロワッサンの一口よりも少なく、ポテトチップス3枚よりも少なく、ビールの60ml以下である。

米国国立衛生研究所(NIH)が言うように、体重を維持するために必要なことが、「摂取するエネルギーと消費するエネルギーを均衡させること」であるとすれば、1日あたり平均20kカロリーを過剰に摂取した場合には、最終的には肥満になるだろう。
自問してほしい。毎日、エネルギーの均衡点を20kカロリー超えることで、徐々に肥満となるのであれば、どうすれば痩せたままでいることが可能なのだろうか?

▽実際に、痩せた状態を維持している人たちはかなり多い。
肥満や過体重の人達でさえも、重いなりに、彼らの体重を維持している。さらに太り続けていないのであれば、摂取するカロリーと消費するカロリーを、平均で1日あたり20kカロリー以下に均衡させている。
ほとんど正確に知ることのできない『エネルギー消費量』と釣り合うようにするとしたら、いったい誰がそんなに正確に食べることができるのだろうか?これが、20世紀の前半の「入るカロリー/出るカロリー」が世の中の常識になる前に、この算数に関して研究者達が抱いた疑問である。"
(ゲーリ-・トーベス. 2013.「人はなぜ太るのか」. Page 68-9.)
2.足し算、引き算では出来ないこと
<1936年>
"当時の米国における栄養と代謝の第1人者とされた、コーネル大学のユージン・デュボア (Eugene Du Bois)は、20年間にわたり体重を1kg以上増やさないように管理している75kgの男性は、「入るカロリーと出るカロリー」の誤差を0.05%以内に調節していると計算し、「その正確さに匹敵する機械はほとんどない」と書いた。
デュボアは「私達はいまだに、なぜ太る人がいるのかを理解していない」と書いた。

また彼は「この栄養が過剰な社会において、なぜすべての人が太らないのか?」とも述べ、「身体の活動量と食物の摂取量が激しく変動するなかで、一定の体重を維持することほど不思議な現象はない」と付け加えた。
多くの人たちが何十年も痩せたままでいる事実(現在ではデュボアの時代よりは少ないが)、そして肥満の人達でさえいつまでも太り続けることはないという事実は、その体重調整において、カロリー理論で説明される以上の 『何か』 が働いていることを示唆する。"(引用以上)
( ゲーリ・トーベス. 「人はなぜ太るのか」. Page 70.)
2017.05.24
カロリーの祖、ノールデン氏の文書(日本語訳)
まだの方は、こちらの記事を先にお読み下さい。
→「カロリー意味あるの?カロリーの歴史はやはり神話なのか?」
▽ゲーリー・トーベス氏によると、
1900 年代の初頭に「私達は、消費するよりも多くのカロリーを摂取するから太るんだ」(カロリーの原則)ということを初めて言ったとされるのがカールフォン・ノールデン氏(ドイツ人医師、1858~1944)です。
今回はそのノールデン氏の本を翻訳しました(一部のみ)。

■インターネットのアーカイブはこちらからご覧になれます。("Obesity"=「肥満」p.693~)
ウェキペディア(Wikipedia)によると、この本は論文等ではなく出版本(1907年)と考えられますが、その当時、ノールデン氏がどれほどの影響力をもっていたかというのは、1905年10月の New York Times の記事を見てもお分かり頂けると思います(この記事も私が独自に入手いたしました)。
ノールデン氏が、アメリカで6回の講演を行うという内容です。

この中で、ノールデン氏のことが書かれています ↓↓↓

(日本語訳)
ノールデン教授は、腎炎や肥満、その他の代謝障害による慢性疾患の研究者として最も著名な人物である。
彼は、この医学分野の多くの研究の著者(創始者)であり、世界の基準として認められている。

(日本語訳)
教授はCothamホテルに滞在し、多くの来訪者を受けている。彼のニューヨークでの知人は医療専門家だけではない。彼の個人病院では数多くの著名なニューヨーカーが治療を受けているためだ。彼がいつドイツに戻るのかは未定だが、おそらく帰国までの間に複数の主要な医療センターを訪問するであろう。(以上)
▽この著書のその後については、まだ調べているところですが、ノールデン氏が、肥満や糖尿病の権威であったからこそ、あっという間にカロリーの原則「入るカロリー、出るカロリー」が世界中に広まってしまった可能性はあります。
2017.03.27
カロリーと肥満の関係は熱力学で説明できるのか?
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目次
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- 「入るカロリー / 出るカロリー」と熱力学の法則
- 人体は化学反応の塊である
- 食べたカロリー量と体に吸収された量は同じではない
(1)何をもって「摂取カロリー」とするのか?
(2)エネルギー摂取量が増えるとき
<まとめ>
まず、こちらの記事を先にお読みください。
1900年代初期にカール・フォン・ノールデン(ドイツ人の糖尿病専門家)が「私たちは消費するよりも多くのカロリーを摂取するから肥満になる」と初めて主張されました。
つまりこの主張が現代まで脈々と続いて、多くの専門家は「カロリーの摂り過ぎや運動不足が太る原因である」と言う主張に強い確信をもつようになったようです[1]。今回は、その理論の根拠とされた「熱力学の法則」(エネルギー保存の法則)について説明したいと思います。
1.「入るカロリー / 出るカロリー」と熱力学の法則
「人はなぜ太るのか」ゲーリー・トーベス著 より引用)
熱力学には3つの法則があるが、専門家たちが「人はなぜ太るのか?」を決めているとするのは第一法則である。
この法則は『エネルギー保存の法則』としても知られ、「エネルギーはつくられることも壊されることもなく、単に1つの形から別の形へと変わる」ということを示しているだけである。
たとえば、ダイナマイトを1本爆発させると、化学的に結合したニトログリセリンの潜在エネルギーが熱と爆発の運動エネルギーへと変換される。
すべての質量はエネルギーからできているため、別のいい方をすれば、私たちはゼロから何かを、または何かからゼロをつくることはできない。

これ(熱力学の第一法則)はとても単純なため、専門家たちがどのように法則を解釈するかが問題となる。
この法則は「何かが大きくなったり小さくなったりするには、より多くのエネルギー又はより少ないエネルギーが、そこから出るよりもそれに入らなければならない」としているのである。この法則はなぜそれが起きるのかについては何も示していないし、その原因と影響については何も言っていない。
(略)論理学者はこの法則には、原因についての情報が全く含まれていないと言うだろう。

▽ここで「人はなぜ太るのか」について話す代わりに「部屋がなぜこんでいるのか?」という話を考えてほしい。
ここまで私たちが論議してきたエネルギーは、脂肪組織だけではなく、人間のからだ全体に存在する。つまり10人の人間はそれ相当のエネルギーをもち、11人はより多くもち....という具合である。(略)
もしあなたが私に「部屋がなぜこんでいるのか?」という質問をしたとして、私が「そうだね、それは部屋を出た人よりも入った人のほうが多いからだよ」と答えたとすれば、おそらくあなたは私が賢いか、あるいはバカであると思うであろう。
あなたは「もちろん、それは明白だ。しかし、何故か?」と聞くであろう。
実際、「出るよりも入る人が多いから混んでいる」というのは、同じことを2つの違う言い方で表すことであり、意味がないのである。
▽さて、肥満に関する社会通念の論理を借りて、この点を明らかにしたい。
私が「あのね、出るよりも入る人が多い部屋は、混んでいるだろう。熱力学の法則を避ける方法はない」と言ったとする。するとあなたは、「それはそうだが、それがどうした?」と答えるか、私は少なくとも、あなたがそう言うことを期待する。なぜなら、私はまだ原因についての情報を与えていないからである。
「過食が私達の肥満の原因である」と結論づけるために熱力学を利用すると、このようなことが起きる。

▽米国国立衛生研究所(NIH)は、インターネット上で「肥満は、人間が消費する以上のカロリーを食物から摂取すると起きる」といってい る。
NIHの専門家たちは実際のところ、「起きる」という言葉を使うことにより、過食が肥満の原因であるとはいわず、単に必要条件であるといっているのである。
専門的にいうと彼らは正しいが、そのとき「わかったよ、だからどうした? 肥満が起きたとき、次に何が起きるかということは話してくれるけど、なぜ肥満が起きるかについては話してくれないんだね?」というかどうかは、私たち次第である。(引用以上)
(ゲーリ-・トーベス . 2013.「人はなぜ太るのか」. Page 83-6.)
2.人体は化学反応の塊である
(「やせたければ脂肪を摂りなさい」ジョン・ブリファ著より引用)
第1法則は、「エネルギーはつくり出すことも消滅させることもできない」というものです。言い換えると、エネルギーをひとつの形態から別の形態に変換することはできても、宇宙のなかのエネルギーの総量は一定のままなのです。
この法則が体重管理にどう当てはまるのでしょう?
ある人の体重が長年安定しているとしましょう。第1法則によると理論上は、この人が食べ物のかたちで摂取するカロリーは、その人が代謝と活動で消費するカロリーと等しいことになります。つまり 「入るカロリー = 出るカロリー」です。
ところが、熱力学の第1法則は実は「閉鎖系」についての法則です。
この系は、周囲の環境と熱やエネルギーのやり取りはできても、物質のやり取りはできません。これは人間に当てはまるのでしょうか?

当てはまりません。
人間の体は実際、おもに食物や糞尿などの老廃物というかたちで、物質を周囲の環境とやり取りしています。
さらに厳密に言うと、第1法則は化学反応が起こらない系についての話です。しかし人体は基本的に化学反応の塊です。
したがって、やはり熱力学の第1法則は、体重管理に関することには当てはまりません。 (引用以上)
(ジョン・ブリファ. 2014.「やせたければ脂肪を摂りなさい」. Page 58-9.)
3.食べたカロリー量と、体に吸収された量は同じではない
2人の著者が熱力学と体重管理に関する素晴らしい指摘をしてくださいました。これらの考えを踏まえて、私も熱力学と私の理論の関係について2点言及したいと思います。
(1)何をもって「摂取カロリー」とするのか?
私も基本的に、ある人の体重が長年安定しているなら 『体に入るエネルギーと、体内で基礎代謝や活動に使われるエネルギー』は釣り合わないといけないと思っています。しかし問題はどの時点で私たちが「摂取」したと考えるかである。

私たちが食べ物を口に入れた時点でカロリーを計算し、それを『摂取カロリー』 と考えるなら、何割かの人にとって、それは消費されたエネルギーとは釣り合わなくても不思議でない。
なぜなら、ブリファ氏が指摘されたように、私たちの体は「閉鎖系」ではないからだ。
腸内細菌学者が「胃腸は体の外部」と考えるように、腸から実際に吸収されたエネルギーを摂取カロリーと考えるのであれば、より「閉鎖系」に近づくはずだ。
もちろん、1人1人の吸収効率の違いを計算するのは不可能であるため、現在のところ、私たちはアトウォーター係数を元に個別の食品のカロリー値を決め、それらを合計することによって一日の総摂取カロリーを決定するのだが、あくまでそれらは推定値か近似値である[2]ということを知っておくべきである。
実際に吸収される栄養やエネルギー量は、調理の仕方、食品の消化性(加工度)、食品の組合せ、運動の強度、空腹度合などによっても変化すると私は考えている。
ノールデン氏の主張「私たちは消費するよりも多くのカロリーを摂取するから肥満になる」はある意味で正しいが、どの時点で「私達がエネルギーを摂取したのか」については曖昧であるのです。
(2)エネルギー摂取量が増えるとき
私の腸内飢餓メカニズムを元に説明すると、長年同じ体重を維持している人が、普段食べているカロリー摂取量(例えば、毎日約2,000kcal) や糖質の摂取量を大幅に減らしても、腸内飢餓を引き起こす「3要素+1」の基準を満たせば、体重がアップすることがある (これは絶対的な吸収率がアップし、設定体重が上昇したことを意味する)。
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もちろん太るのは、その後に元の食事に戻したときであるが、この場合、吸収率そのものが以前よりアップしているので、体重の増加には体脂肪だけでなく、徐脂肪組織の増加も含まれる。つまり、食べる量や摂取カロリーは以前と同じであっても、以前よりも多くのエネルギーや栄養素を体内に取り込んでいるので、体が大きくなったといえるだろう。
トーベス氏の言葉を借りれば、「10人で混んでいた部屋が11人になった」と言えるが、この場合、それを引き起こした原因は腸内飢餓であると言える。
まとめ
(1)専門家たちが、「消費するより多くのカロリーを摂取するから太る」と考える根拠は『エネルギー保存の法則』(熱力学の第一法則)である。
(2)人の体は化学反応の塊で、「閉鎖系」ではないため、実際に食べた(口に入れた)カロリー合計と消費カロリーを比較することは意味がない。この場合、「熱力学の法則」は成り立たない。
(3) 実際に腸で吸収されたカロリーをベースに考えると、より「閉鎖系」に近づき、代謝や活動によって消費されたカロリーと釣り合うはずである。
(4) 腸内飢餓が引き起こされれば、以前と同じ量を食べていたとしても、設定体重そのものの上昇を示唆する体重増加が発生することがある。この場合、吸収率そのものがアップし、体により多くのエネルギーや栄養素が取り込まれることを意味するので、体重の増加は体脂肪だけでなく、徐脂肪組織の増加も関係する。
<参考文献>
[1]Gary Taubes. 2010. 「人はなぜ太るのか」. メディカルトリビューン. Page 82.
[2]Rob Dunn. 2013.「科学が明らかにしたカロリー計算の誤り」. Scientific American.
2017.03.07
カロリー意味あるの?カロリーの歴史はやはり神話なのか?
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目次
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- 「入るカロリー / 出るカロリー」説の誕生
- 今もなお、増え続ける肥満
- ノールデン氏の書物
私はリサーチのプロにお願いし、国立国会図書館で『カロリーの摂取量が消費量よりも多いから太る』というような関連の論文を1900年前後から探してもらいましたが、今回は探すことはできませんでした。(このブログの最後に若干の成果を報告します。)
やはり頼りになるのは、この本(「人はなぜ太るのか」)しかありません。ほとんどが引用になるのですが、ご了承ください。
1.「入るカロリー/出るカロリー」説の誕生

(「人はなぜ太るのか?」ゲーリー・トーベス著より引用)
1900年代初期にドイツ人の糖尿病専門家 カール・フォン・ノールデン(carl von Noorden)が「私たちは消費するよりも多くのカロリーを摂取するから肥満になる」と初めて主張して以来、専門家もそうでない人も、ともかく熱力学の法則(エネルギー保存の法則)により、これが真実だと決められていると主張してきた。
そうでないと主張すること、つまり私たちが過食と座りがちな行動と対をなす「罪」以外の原因によって肥満になるかも知れないこと、あるいは意識的に食べる量を減らさなくても、あるいは運動を増やさなくても脂肪が減るかもしれないことは、コロンビア大学の医師ジョン・タガートが1950年の肥満に関する会議の挨拶で「感情的で無根拠」と断言したように、いつも「インチキ」として扱われてきた。彼は「私達は、熱力学の第一法則 の妥当性に絶対的な確信をもっている」と付け加えた。

そのような確信は誤りではない。しかし、それは肥満になることについて「熱力学の法則」が他の物理学の法則以上に物語ることを意味するのではない。
ニュートンの運動の法則、アインシュタインの相対性理論、量子論などが宇宙の特性を示すものであることはもはや疑問の余地はない。しかし、熱力学の法則は 「なぜ人は太るのか?」 については説明していない。
このたった1つの単純な事実(熱力学の法則)を専門家達が理解できなかったために、驚くほど間違った助言がなされ肥満問題の拡大につながった。
熱力学の法則が肥満の説明になっているという誤った解釈がなかったら、「消費するよりも多くのカロリーを摂取するから太るのである」という見解そのものが存在しなかったであろう。
(ゲーリ-・トーベス. 2013.「人はなぜ太るのか」. メディカルトリビューン. Page 82-3.)
(~略~)"1934年、ヒルデ・ブルッフ(Hilde Bruch)というドイツの小児科医が米国(ニューヨーク)に移住した。彼女はそこでの肥満の子供の数に驚嘆したという。診療所だけでなく、街頭、地下鉄、そして学校に肥満の子供があふれていた。それは、マクドナルドの1号店の生まれる20年も前のことであり、さらに付け加えると、その年は大恐慌の真っ只中である。
ブルッフは肥満の子供の治療のために尽力した。多くの肥満の子供たちは、医師から指示される通り、食べる量を減らし体重をコントロールすることに多大な労力を費やしたにもかかわらず、結局は太ったままであったという。

ブルッフの時代の医師も今日の医師たちも考えが足りないわけではない。彼らは単に、私達が太る理由は明白で議論の余地のないとする『欠陥のある信念体系(パラダイム)』を持っているだけである。
太る理由は、食べ過ぎているか運動が少なすぎるか、その両方であり、したがってその逆をすることが治療になると医師たちは言う。(~略~)
▽世界保健機関 (WHO) は「肥満と過体重の根本的な原因は摂取したカロリーと消費したカロリーのエネルギー的不均衡である」といっている。
消費する以上のエネルギーを摂取すれば (科学用語ではプラスのエネルギーバランス)太り、摂取する以上に消費すれば (マイナスのエネルギーバランス)やせる。
食物はエネルギーであり、私たちはそれを「カロリー」として測定する。したがって「消費する以上のカロリーを摂れば太り、消費するよりも少なく摂ればやせる」のである。

体重に関するこの考え方は非常に説得力があり広く普及しているため、 現在それを信じないというのは、ほとんど不可能である。たとえ私達がそれに反する証拠 (日常生活でいくら意識的に食べる量を減らし、 運動量を増やしても成功しない)をたくさん持っていたとしても、「私たちが摂取・消費するカロリーによって肥満が決まる」 という概念よりも、自分たちの判断と意志の力のほうを疑うだろう。"
(「人はなぜ太るのか」, Page 10-14.)
2.今もなお、増え続ける肥満

(引き続き「人はなぜ太るのか?」より引用)
"肥満の流行を考えてみよう。
50年前、表向きは米国人の8~9人に一人が肥満と考えられていたが、今日では3人に1人が肥満であり、過体重まで含めると3人に2人となる。
この数十年間の肥満の蔓延において「入るカロリー/ 出るカロリー」のエネルギーバランスの概念が幅をきかせたため、公衆衛生を担当する役人たちは、その原因を、私達が彼らの指示(運動をすること、食事を減らすこと)を守らないからだと思い込んでいる。
1998年マルコム・グラッドウェル (ジャーナリスト)は、雑誌 「The New Yorker」でこの矛盾をついた。
彼は「私達は摂取するカロリーを減らし、運動をしなければ体重が減らないことを教えられてきた」と書いた。さらに、「実際にこの勧告についていける人がほとんどいないということは、私達の力不足、あるいは勧告に欠陥があるからである。医学の通説は自然と前者の立場を、ダイエット本は後者の立場をとる傾向にある。医学の通説が過去にどれほどの間違いを犯したかを考えると、それは不合理ではない。彼らの勧告が正しいかどうかを検証する価値はある」 と述べている。"
(「人はなぜ太るのか」, Page 14-5.)
(ゲーリー・トーベス氏)
"肥満は、エネルギーバランス、あるいは「入るカロリー/ 出るカロリー」または過食による異常、熱力学とは何の関係もない。もし私達がこれを理解できなければ、「なぜ太るのか?」という問題に対し、これまでの慣習的な考え方へと後退し続けてしまう。それがまさに1世紀にわたって続く泥沼である。"(引用以上)
(「人はなぜ太るのか」, Page 83.)
3.ノールデン氏の書物
テレビ番組ではあいかわらず、医師や栄養士が「消費された以上に食べれば太るのは小学生でも分かることです・・」「太る原因は食べ過ぎか、運動不足です・・・」と自信満々に言っているのを見ると、私は本当に嫌な気持ちになるんです。
しかしそれって、凄く薄っぺらで、いかに根拠のない事柄であるかがお分かり頂けたかと思います。
以下の記事で「熱力学の法則」についてより詳しく説明します。
【関連記事】→『肥満とカロリーの関係は熱力学で説明できるのか』
また冒頭で、若干の成果といいましたが、カール・フォン・ノールデン氏の書(論文?)を入手することができました。これも翻訳して、皆さんに紹介いたします。
【関連記事】


「代謝と実践医学」(Chapter Ⅲ、”Obesity(肥満)” )
2015.06.27
摂取カロリーを単純合計することに意味はない
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目次
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- アトウォーター係数は平均値に基づく
- 消化吸収率は皆が同じではない
- 肥満は体重の「設定値」理論で説明できる
<まとめ>
その日の摂取カロリーを正確に計算し、ダイエットでの体重管理にあてはめてもあまり意味がない、という話をしたいと思います。私達が摂取カロリーを計算する時に使う食品のカロリー値にはアトウォーターのエネルギー換算係数(炭水化物、タンパク質4kcal/gなどの係数)が使われていますが、その正確さについてはいろんな問題が指摘されています。
【関連記事】カロリー計算:アトウォーター係数が完全ではない理由
私はその中でも、消化率や吸収率が平均的な数値に基づいていることが問題であると思っており、その問題点について説明します。(今回は吸収されるまでの過程であり、吸収された後の代謝過程やホルモン分泌の違いなどについては言及しません。)
1. アトウォーター係数は平均値に基づく

「あなたの体が必要とするカロリーより多く摂取すれば太り、摂取するカロリーより多くのカロリーを燃やせば痩せる」(注1)と言われています。
この理論は、非常に単純であり、ある意味で核心をついているとも言えますが、「体が必要とするカロリー」「摂取するカロリー」という表現が曖昧なため危険です。
体が実際に消費するカロリーは基礎代謝でさえ変化していると言われるし[1]、体が実際に吸収しているカロリーも常に変化するので(私の考え)、単純に食品のカロリー値を合計して比較しても、正確な数値を導き出すのは難しいと考えます。
アトウォーター係数は、単にその食品のもつ吸収可能な平均エネルギー値を示すものですが、何時に食べるか、何時間おきに食事を摂るか、どの食品をどの様に組み合わせるかによって、吸収率がどの様に変化するかについては調査されていないようです。
また、この係数は被験者の平均値なので、すべての人の消化吸収率を同じとして考えているのです[2]。
(注1)1878年、ドイツの栄養学者マックス・ルブナーは「等力価法則」と呼ばれる法則を作り上げ、栄養の基本はエネルギーの等価交換であると主張し、1900年代初頭にドイツの内科医、カール・フォン・ノールデンによって肥満の研究に応用されました。
([A calorie is a calorie] From Wikipedia)
2.消化吸収率は皆が同じではない
私はすごく痩せていたので、消化力が弱く、常に消化吸収の問題を抱えていました。まるで自分が実験台のようでした。脂っこい食事や繊維質の多い食事を食べ過ぎると胃がもたれ、7-8時間たっても空腹にならず、その状態で無理して食べると、さらに痩せました。
アトウォーター係数では、脂質は物理的燃焼度が1グラムあたり9.4 kcalで消化吸収率が95%で設定されているので、9kcalの熱量と言われるのですが[3]、私を含め消化に手こずる人にとっては、その数値は意味がありません。
以下で、私の経験に基づき、一個人において吸収率がどの様に変化するかについて説明します。
(1)吸収率は一定ではなく、空腹や運動で高まる
痩せたいと思う人が、カロリー摂取量を減らし自身を半飢餓状態にすると基礎代謝量も低下するということも実験で証明されていますが[1]、私は吸収率も同じではないと考えます。
吸収率は、空腹が長時間にわたり続く時や運動後に高まります。これはエネルギー源だけでなくカルシウムや微量元素含めすべての栄養素についても言えるでしょう。
腹ペコ時又は疲れている時にお酒を飲むと悪酔いしたり、またラーメン・スイーツなどを食べると血糖値が急激に上がることがありますが、それは体が栄養を必死に摂ろうとしているからです。

もう少し具体的に言うと、700 kcalの昼食を400 kcalにして夕食まで我慢したとしても、お腹の中には朝食もまだ残っており、そこから栄養を摂ろうと体は必死に頑張っているはずです。体に蓄えられている栄養を使う場合でさえ、先に使われるエネルギー源があるので、すべてが体脂肪の減少につながる訳ではありません。また、空腹が数時間続けば夕食を摂ったときの吸収率も高まると考えるので、減らした300 kcalを毎日、例えば2週間、合計しても計算通りに体脂肪は減らないでしょう。(また体重減少に伴い基礎代謝も落ちるので、予想よりも少ない体重減少で体は均衡状態になると言われる。)
それとは逆に、空腹でもないのに3~4時間おきに無理して食べ続けると吸収力は相対的に低下します。3~4時間かけて消化され胃袋をやっと出て、『これからさらに吸収するぞ・・・』という時に、また胃に別の食べ物が運ばれてくるわけだから、体は『また、食べ物が入ってきたぞ。あれから栄養を摂ればいいや・・・』という風になるわけです。
先ほどの血糖値の例で言うと、食事の2時間前にアイスクリームを食べておけば、食事での血糖値の上昇は緩やかになるはずです。

バーベルを使用した激しい運動をする人が、食事の合間にプロテインや牛乳を飲むことは必要かもしれませんが、軽い運動をする一般の人がこのような食べ方をすると、吸収率が低下し、消化のためのエネルギー(食事誘発性熱産生)は増加するのでダイエットに効果がある場合があります。
(2)食品の組合せによって吸収率が変化する
食事中の食品をどの様に組み合わせるかによっても、空腹感や吸収率に違いがでてくるのです。
一例として400 kcalの朝食(トースト、ハム、目玉焼き)について考えてみましょう。たとえカロリーが増えたとしても、朝食にゴボウサラダ、チーズ、豆、キノコソテーなどを加えれば、昼食時の空腹感は和らぎ、昼食時の血糖値の上昇も抑えることができるはずです。(NHK「ガッテン流、脱糖尿病の新ワザ」2011年)

繊維質を多く含む食品や、消化に時間のかかる食品を常に食べることで、体の中では未消化物がたっぷりある状態が続き、その結果、空腹感が抑えられ吸収率が低下することが一部の理由と考えます。繊維質そのものが吸収を若干抑えるという可能性もあります。
ですから、たとえ摂取カロリーが増えたとしても、このような食べ物を毎日の3回の食事に加えることは、ダイエットに効果がありえます。
逆に摂取カロリーを減らしたとしても、繊維の乏しく加工度の高い食品ばかりを食べていると、すばやく消化されるために体は労力を使わずに多くのカロリーを得ます[2]。常に空腹感を感じるため吸収率は上がり、血糖値のアップダウンを繰り返すことも考えれます。
(3)脂質が常に太るわけではない
エネルギー源となる、炭水化物、タンパク質、脂質の組合せでも違いがでます。
カロリーの理論に基づくと、脂質は1グラムあたり9kcalなので「沢山食べれば太る」というふうに、私達は、栄養士や医師、テレビなどを通して教えられています。

しかし、糖質制限ダイエットに見られるように、炭水化物を減らし、タンパク質や脂質を食べたいだけ増やす食事は、一日の摂取カロリーが増えたとしても被験者に体重が減少したという研究結果が1970年代まで繰り返し報告されています[4]。
2008年にイスラエルで行われたDIRECT試験 (食事介入による無作為比較試験)でも、「地中海食ダイエット」、「アトキンス・ダ イエット」(低炭水化物)は、「低脂質ダイエット」に比べ体脂肪減少に大きな効果があることが確認されています[5]。
もちろん、タンパク質の消化に使われるエネルギー(食事誘発性熱産生)が高いことや、刺激されるホルモンに違いが出ることが知られていますが、私が付け加えたいのは吸収率です。
上記(2)と同じ理由で、消化の良い精製された炭水化物を減らし、消化のよくない脂質や肉類(特に加工されないブロック)などを相対的に多くした食事は、未消化物質が長時間に渡り腸内に残るので、空腹感を抑え、吸収率を低下させダイエットに効果があるでしょう。脂質を毎食あるいは、間食にも取り入れることでより多くの効果を得ることができるはずである。
もちろん脂質、タンパク質を早く消化できてしまう人や民族はこの効果が薄い可能性があるのですが、私を含め脂質をすばやく消化できない人にとっては、脂質を多く摂取することは太る原因とはならないでしょう。
これはアメリカにおいて、1976~1996年にかけて低脂質ダイエット(高炭水化物)を推進した結果、BMI 30以上の人が1977年から劇的に増加したとするデータ[6]とも関係するのではないかと思っています 。
【関連記事】脂質における3つの視点
3. 肥満は、体重の「設定値」理論で説明できる

上記「2」の説明は一個人における吸収率の変化ですが、私がこのブログを通して言うように、根本的な太り過ぎと痩せの違いは、設定体重(set-point weight)の値の違いであると思っています。
カロリーの摂取量や運動によって、多少太ったり又は痩せたりするのは、設定体重の範囲内(図のA)ですが、設定体重そのものがアップするのは腸の飢餓メカニズムなので、摂取するカロリー量とは直接関係ありません。
そして私の理論上、この設定体重が高いことは、平均的な体重の人に比べて「吸収効率が高い」ことと関連しており、すべての吸収される栄養が増加すると考えるので、体重の増加は体脂肪だけでなく、筋肉量の増加なども含みます。
今の時点では、アトウォーター係数の矛盾を指摘して、設定体重がどう変化するかを説明をすることはできないのですが、必ず腸の飢餓状態で人が太ることを証明したいと思っています。
まとめ
(1) 大量調理(給食や老人ホーム)などの場合に、平均的な目安として一日の摂取カロリーを計算することに意味があるが、それをダイエットでの体重管理にあてはめてもあまり意味がない。過体重・肥満という概念においては別の問題が多くある。
(2) アトウォーター係数では消化吸収率は被験者の平均値だが、人の消化吸収の過程は複雑であり平均値では語れない。
(3) 空腹感や運動によって吸収率は変化すると私は考える。食事の時刻や間隔、どの食品をどの様に組み合わせるかも結果に影響する。
(4) 肥満の根本的な原因は、体重の「設定値」が高いことが原因であり、摂取カロリーを減らすことで一時的な減量にはなっても、長い目では効果が薄い。
<参考文献>
[1] ジェイソン・ファン. 「The Obesity Code」. サンマーク出版. 2019. Page 67.
[2] Rob Dunn. 「カロリー計算が間違っている理由を科学が明らかに」. 2013.
[3] Japan Food Research Laboratories. 「食品の熱量について」. 2003 Jul.
[4] ゲーリー・トーベス. 「人はなぜ太るのか」. 2013. メディカルトリビューン. Pages 164-175.
[5] ジェイソン・ファン. 「The Obesity Code」. 2019. Pages 177-179.
[6] ジェイソン・ファン. 「The Obesity Code」. 2019. Pages 54-55.

