トピックス

2019.07.27

肥満は ”多因子疾患” だろうか?

<目次>

  1. 肥満は ”多因子性” だという見解
  2. 肥満はいろんな条件が重なって起こる
    <まとめ>

1.肥満は ”多因子性” だという見解

肥満にはいろんな事が関係すると言われていますが、なぜでしょうか? 私がこのブログで言い続けている「相関性」とも関連する興味深い記述があったので引用します。

(「The Obesity Code」医学博士:ジェイソン・ファン著より引用)

体重が増える原因は何だろう?
これまで実に様々な説が提唱されてきた。

カロリー / 褒美としての食 / 糖分 / 精製された炭水化物 / 睡眠不足 / 小麦 / ストレス / 食物繊維不足 / 脂肪分 / 遺伝的性質/ 赤身肉/ 貧困 / 裕福さ / 乳製品 / 腸内細菌 / スナック / 子供の頃の肥満

こうした様々な説が飛び交い、あたかもが互いに両立することなく、肥満の真の原因はたった一つであるかのように争っている。例えば、最近、巷をにぎわせている「低カロリーダイエット」と「糖質制限ダイエット」をめぐる論争では、どちらかが正しければ、もう一方は間違っているだろうと考えられている。肥満に関する調査のほとんどは、こうした考えに基づいている。だが、この考え方は間違っている。なぜなら、どの説もいくらかの真実味を含んでいるからだ。[1]

(~略~)


おさらいだが、肥満は ”多因子的な疾患” である、ということを理解しないことが、決定的な間違いである。肥満の原因はただひとつではない。

カロリーが肥満を招く? 部分的にはそうだ。
炭水化物が肥満を招く? 部分的にはそうだ。
食物繊維は肥満を予防してくれる? 部分的にはそうだ。
インスリン抵抗性が肥満を招く? 部分的にはそうだ。
糖分が肥満を招く? 部分的にはそうだ。

これらすべての要因が、いくつかのホルモンの経路に作用することによって体重が増えるのであり、そうしたホルモンのなかで最も重要なのが「インスリン」だ。(注:この本の著者の考えであり、私の考えと異なる部分です。)(~略~)

      

私たちに必要なのは、様々な因子がどのように絡み合っているのかを理解するための枠組みであり、仕組みであり、筋の通った理論である。現在の肥満理論では、「真の原因は ただひとつで、そのほかのものは偽りの原因である」とされることがほとんどだ。結果として、議論が果てしなく続く。

「カロリーを摂り過ぎると肥満になる」
「いや、炭水化物を摂り過ぎるから肥満になるのだ」
「いやいや、原因は飽和脂肪酸の摂り過ぎだ」
「 赤肉の食べ過ぎだろう」
「いいや、加工食品の食べ過ぎだ」
「違うね、高脂肪の乳製品が原因だ」
「いや、小麦の摂り過ぎだ」
「いやいや、糖分の摂り過ぎだ」
「いや、外食がいけないんじゃないか」


・・・こうして、議論は尽きない。どの主張も、部分的には正しいのだから。
それぞれのダイエットは、別々の側面から肥満の解消に取り組んでいるだけで、どのダイエットにも効果はある。だが、どれも「肥満全体」に対する対処法ではないために長くは効果が続かないことに注意しよう。肥満が ”多因子性” のものであることを理解しないままでは、互いに非難しているだけで終わってしまう。[2](引用以上)

<参考文献>
[1]ジェイソン・ファン.「The Obesity Code (太らない体)」, 
サンマーク出版: 2019, Pages 130-1.
[2]Pages 360-1.

       
▽肥満の多因子性についての著者の指摘は鋭いと思う。
「消費するより多くのカロリーを摂取するから太る」というような単純なものではなく、いろんな要因が複雑に絡み合うということを私達はまず理解しないといけないのである。

しかし私が言いたいのは、私の腸内飢餓の理論を元にすると、いろんな要因はある程度集約できるということである。

どういう事かと言うと、肥満は目に見える部分においては多くの因子が複雑に絡み合っていて説明がつかないこともありますが、目に見えない『腸』の部分に目を向けると原因はかなり特定されると思っています。

2.肥満はいろんな条件が重なって起こる

まずおさらいですが、”太る”という言葉に2つの意味があるということを理解して下さい。多くの人が言う、「多く食べて太る」というのは、下図の(b)の部分です。
また、これまでの肥満に関する介入研究のほとんどは、総カロリーを減らすか、糖質・脂質の摂取量を調整したり、又は運動を増やしたりする比較研究だと思うのですが、彼らがやっている実験は、同じく(b)の部分です。

もちろん個人差はあれ、摂取カロリーを減らし、運動を取り入れれば、誰でもいくらかは痩せるであろう。

しかし、それは著者が言われるように、肥満に対する根本的な対処法ではないためにリバウンドはつきものという訳です。

それに対し、(a)の基本体重それ自体がアップするのは腸の飢餓のメカニズムであり、その時にいろんな要因がかかわってきます。
例えば、朝食抜き/ 遅い夕食/ 食事回数/ 精製された炭水化物/ ジャンクフード/ 食物繊維の摂取不足/ バランスの悪い食事、などは肥満の一因と言われますが、それは図の(a)の部分に関連することです。

  
ここで大切な事は、上記の因子1つ1つは肥満とは関連しているように見えても、両者の間に直接的に肥満を引き起こす『因果関係』がある訳ではありません。むしろ、これらは腸内飢餓に影響を与える因子であり、腸内飢餓が本来の原因(この場合、腸内飢餓が「交絡因子」と言えるかもしれない)であると考えます。

交絡因子

私が言いたいのは、これらいくつかの因子(条件)が組み合わさって腸内飢餓が起こるのであり、(目では見えないけども)7~8メートルもあると言われる腸全体(又は小腸)の部分においては、かなりの割合でピンポイントで決まると言えます。

【関連記事】→「腸内飢餓をつくる(3要素+1)」

まとめ

(1) 『The Obesity Code』の著者ジェイソン・ファン氏が言われるように、私達が太る原因だと信じている多くの要因は、それぞれが真の原因が1つであるかのように争っている。研究者は自分の研究分野(例えば、レジスタントスターチ、朝食を食べることの価値、糖質制限の効果、ホルモン、腸内細菌など)には精通しているかも知れないが、それは必ずしも肥満全体をとらえていないので、一つ一つの理論が一人歩きしてしまうことがある。

今私達に必要なのは、一つ一つの理論がどの様に絡み合うのかという枠組み(フレーム)であり、その点から、私の理論は役に立てると考えています。

 
(2) 肥満の根本原因は、「基本体重」の部分が高くなっていることであり、それは腸内飢餓によって引き起こされるのである。
腸内飢餓は少なくとも4つの要素が重なって起こり、「私達が何を食べるのか」「どの様に食べるのか(生活習慣)」はそのうちの重要な要素なので、多くの事が体重の増加に関係しているように見えるのである(腸内飢餓は「交絡因子」と言える)。

つまり、私達の見ることのできない腸の内部の動きに焦点をしぼると、体重増加の原因の多くは特定されると私は信じている。

2019.04.05

正しく痩せるためには2段階のプロセスが必要(体重の設定値)

<目次>

  1. 『痩せる』にも2通りある
  2. 体重の設定値を下げるには?
  3. 具体的な食事法は?
  4. 低炭水化物ダイエットとの違い
  5. 2ステップの意味
    <まとめ>

これはダイエットブログではないのですが、太る理由を書いている以上、痩せる方法も必然的に分かるはずであり、書く必要があると感じてきました。私が書くのをためらった理由は、実績が少ないことですが、今回は、私の考える「正しく痩せる」ための理論のみを書きたいと思います。

1. 『痩せる』にも2通りある

「太る」という言葉に2通りの意味があるように、「痩せる」という言葉にも2通りの意味があります。

【関連記事】→「”太る”という言葉の2つの意味」
 

(1)リバウンドする場合

1つ目は、従来のカロリー制限ダイエットのように、食べる量を減らしたり運動を増やすダイエット法です。この方法では常に空腹を我慢しなければいけません。

リバウンド

人には恒常性を保つ機能があると考え、私はそれに基づく体重を『基本体重(Base Weight)』と定義しましたが、

食べる量(カロリー)が減って空腹が続けば、

  • 最大限に栄養を摂ろうとするたに吸収率はアップする
  • 無駄な消費を抑えるために、消費カロリー(基礎代謝も含む)が減る

ことによって、体への変化を最小限に抑えようとします。

頑張って、多少は痩せたとしてもそれは一時的な解消にすぎず、元の状態(基本体重)は変化していないので、リバウンドすることの方が多いのではないでしょうか?

【関連記事】ダイエットは長期的にはほぼ成果なし
   

(2)”基本体重” そのものを下げる

私の考える肥満の原因は、何度も言う通り、基本体重の値が高くなっていることです。これは吸収率が一般の人よりも高くなっていることを意味しているのですが、吸収率が高い故に、その結果として、高血圧・心臓病・血糖値異常・糖尿病などの関連症状が出てくるのではないかと推測します。

ですから正しく痩せるためには、摂取カロリーを減らすのではなくて、現状維持のベースとなる "基本体重" の値そのものを下げることが必要になると考えます。これに関連する文献を再び引用します。

(参考文献:「The Obesity Code 」著者:Dr. Jason Fung, 2019年)

(体重がリバウンドすることについて)
ここで関係する生物学的原理は「恒常性の維持である。体重や肥満に関しては『設定値(注1)というものがあると考えられているが、この考えは1984年にキーシー とコルベットという二人組により提唱されたものである。体重が設定値から大きく変わる ことのないように、恒常性を維持しようとするメカニズムが働いて、体重が増えたり減ったりする。(略)だから、肥満の問題点は、「設定値が高くなっている」ということにある。(~略~)

定番のダイエット

長年にわたる研究で分かったことが二つある。

一つは「どんなダイエット法も効果的であるということ」。もう一つは「どんなダイエット法も効果的でない」ということ。

どういうことかと言うと、地中海式ダイエットもアトキンス(糖質制限)も低脂質、低カロリーダイエットも、短期的には体重はおちる。それはそうだろう。摂取量を控えているのだから・・・。

しかし、しばらくすると体重は減らなくなり、その後、無常にも増え始める。(略)こうしてどんなダイエット法も失敗する。実は半永久的に体重を減らすには「2段階のプロセス」が必要だ。肥満には「短期的な問題」と「長期的な問題」がある。[1](引用以上)

(注1)著者のジェイソン・ファン氏が言われる、体重の「設定値」 は、私の言うところの「基本体重」です。

参考文献:
[1] ジェイソン・ファン, 「The Obesity Code 」, 
サンマーク出版:2019, Pages 120, 358.

2.体重の設定値を下げるには、どうすべきか?

「The Obesity Code 」の著者ファン氏は、体重の設定値が高くなるのはインスリン抵抗と関係があると考えておられるようで、そのために断食(fasting)を治療に取り入れられています。

私の意見はそれとは異なるのですが、空腹を我慢するのではなく、一定の法則に基づき、消化の良くない食品を多く食べることが必要と考えます。

なぜなら、太った根本的な原因が腸内飢餓のメカニズムによるものであるなら、その逆を行うことで、(理論上)基本体重が下がり痩せることができるはず、と考えるからです。(「消化されていない食べ物が腸の中に沢山残る状態」=「体にとって食べ物がまだたっぷりある」=体脂肪を蓄えなくていい)

豊富な食材

これまでに行われてきたダイエットの中で、低炭水化物ダイエット(肉や脂質はいくら食べてもいい)、肉食ダイエット、地中海式ダイエット、オイルダイエット、低G.I.食品や繊維質の野菜を多く食べる食事法などは、私の理論に適合する食べ方と言えます。

ある人は、「それらのダイエットを組合わせてるだけじゃないか」と言うかもしれません。しかしポイントは「腸の中に未消化の食べ物を多く残すこと」なので、一つの食品にこだわる必要性はなく、むしろ組合わせるべきだと思うのです。

なお、私の言う「基本体重が下がる」というのは、代謝が上がることを意味するのではなく「吸収率のレベルが下がる」ことを意味しています。

「食べて吸収率が落ちる」というのは分かりにくいかも知れませんが、例えば、おにぎり1個とオレンジジュースの間食を想像してください。

腹ペコの状態で食べれば血糖値は急激に上がるのに対し、バランスのとれた昼食を終えた3時間後に食べれば、血糖値はそれほど上がらないのではないでしょうか?

血糖値上昇

お酒を飲みに行く時でも、10時間近く何も食べず腹ペコなら酔いが早く回るかもしれないけど、例えば昼食をしっかり食べ、飲みに行く2時間前にアイスクリームを食べておけば、酔いの回りは遅くなるはずです。つまり空腹感を減らすように食べ続ければ、吸収率は落ちていくはずです。

3.具体的な食事法は?

ポイントは、炭水化物を減らし、逆にお肉、魚、油脂、繊維質の野菜、海藻、ナッツ、乳製品などを増やし、空腹でいる時間を減らすことだと考えます。(少しお腹が減ったなと思ったら何か食べる。食欲がなくても規則正しく食事する。)
実際には、2つの方法があると思っています。

家族食事

(1)実際に、食事の改善を中心に行う方法

  • 炭水化物(ご飯、パン、麺類)などは1/2~2/3程度に減らす。
  • 玄米、全粒粉パン、冷めたご飯(澱粉が難消化性に変化する)、アルデンテのパスタ、などのG.I.値の低い炭水化物を摂る。
  • 炭水化物以外の食品(肉、魚、油脂、乳製品、ナッツ、野菜、海藻など)はむしろ増やす。
  • 食間に空腹感が続くなら、間食をしてもよい。
  • もちろん、ランニングやジムでの運動と組合わせてもいいが、少なくとも3回のバランスのとれた食事をして運動する。

ご飯、オイル2
<脂質について>

脂質は、私たちにとってエネルギー源でもあるし、同時にある人にとっては太る原因でもあると思いますが、食べ方によってはダイエット効果がある食べ物であると考えます。

脂質がもともと ”太る” と考えられたのは、1gあたり9kcalとエネルギー密度が高いからですが、脂質は特に消化に時間がかかるため、3~5時間おきに摂取すると痩せる効果も発揮します(もちろん、人によって異なる)。普段食べるのを我慢している人が、炭水化物と一緒に脂肪分を摂ると太ってしまうと言うのは間違いではないでしょうが、あくまで食べ方であり、カロリーの大小だけでは判断できない部分です。

【関連記事】 脂質についての3つの視点

(2)消化酵素の働きを鈍くする。

また、いくら食べてもすばやく消化してしまう人、空腹感が抑えられない人にとっては、(1)の方法は効果が薄い可能性があります。中には、カロリーが増えた分だけむしろ太ってしまう人もいるかもしれません。

肥満度が高くなるにつれて痩せるのが難しくなるのは、彼らは消化するスピードが早く、そんなに簡単に吸収率が落ちないことが原因だと思っています。つまり理論が必ずしも間違っているのではありません。

その場合は、食事の改善と併せて、例えばですが、脂質や蛋白質に対する消化酵素の働きを鈍くする酵素(薬)などがあれば役に立つかもしれません。『消化する能力』を逆に落とすことで、未消化な物質が腸内に多く残るようになり、(1)と同じ効果が得られると考えます。(もちろん、医師の処方の下で行われるべきで、あくまで現時点では理論上です。)

4.低炭水化物ダイエットとの違い

極端なケトジェニックまではいかないにしても、低炭水化物ダイエットと結果的には似た食事法になると思っています。

低炭水化物ダイエットでは、「肥満を惹き起こすのは炭水化物が原因であり、これを制限する代わりに、タンパク質と脂肪が豊富な食べ物は、カロリーを補うためにも自由に食べてかまわない」されています。

しかし実際のところ「食べてよい」ではなく、長期的に体重を落とすためには「食べないといけない」のです。

肉・魚・油脂なども同様に減らせば、従来のカロリー制限ダイエットと同様に空腹を我慢することになり、これまでの研究が明らかにするように、そのようなダイエットは上手くいきません。

meat,fat,oil

私の理論上は、炭水化物は腸内飢餓を引き起こしやすくするという、あくまでも間接的な肥満の原因です。ポイントはあくまで、消化の良くない食べ物を多く摂り、消化のスピードを遅らせ、空腹感を抑えるということなのです。ですので、必ずしも炭水化物が悪いわけではないのですが、食事中の炭水化物を減らしたほうが、より効果があがると考えています。もちろん、即効性のエネルギーとなるグルコースを減らすことで、短期的に痩せるスピードが早まることもありえます。

5. 2ステップの意味

これまでカロリー制限系のダイエットしてきた人にとっては、少なくとも摂取カロリーは増えるかもしれない。だから「多く食べて痩せる」というのは胡散臭く聞こえるかもしれません。しかし、これは摂取カロリーを減らすことが最終的なポイントではないのです。

短期的には、糖質などをコントロールしながら、消化の良くない食べ物を多く食べて、空腹をあまり作らないようにすること。長期的には、それを継続することによって、基本体重(Base weight)を下げ、蓄えない体になることです

つまり、正しく痩せるためには2段階のプロセスが必要なのです。

  

▽日本では、食べて痩せる系のダイエットは様々あって、多くの方が「食べて痩せる」ことに対しいろんな解釈をしている。

  • その食材を食べることで代謝がアップした。
  • 低カロリーの食材を沢山食べることによって、トータルでのカロリー・糖質を結果的に少なくできた。
  • 間食することで結果的に食欲が減退し、食事での摂取カロリーを少なくできた。
  • 特定の食材の一部の成分が体脂肪を分解した。

しかし「人はなぜ太るのか?」と言うことが正しく認識されず、ほとんどの人は依然としてカロリーや糖質の摂り過ぎが肥満原因と信じている現在、私はどれも(ゼロではないが)正しい説明ではないと思っている。

まとめ

(1)「太る」という言葉に2つの意味があるのと同様に、「痩せる」にも2通りの意味がある。リバウンドしないためには、基本体重(体重の設定値)そのものを下げる必要がある。

(2) 基本体重を下げるためには、2ステップ必要です。短期的には、糖質などをコントロールしながら、消化の良くないタンパク質・脂質・食物繊維の豊富な食品などを多く食べ、空腹感を減らすことです。長期的には、それを継続することによって、基本体重そのものを下げ、リバウンドしない体になることです。

(3)「食べて痩せる」というダイエット法は巷にあふれているが、正しく認識されていないし、もちろん正式な治療法として認められていない。腸内飢餓で人が太るということが証明されれば、「食べて痩せる」という意味も正しく理解されると信じたい。

2019.02.01

腸の飢餓状態でなぜ太るのか?

目次

  1. アフリカの飢餓と現代の飢餓
  2. なぜ飢餓状態で太るのか?
  3. 基本体重が高くなると何が起こるのか?

このブログの核心部分についてお話します。
おそらく、ほとんどの人にとって、私の理論を信じるのは難しいと思いますが、私は自分が経験した事実をありのままに書くだけです。

これは想像で書いたのではなく、実際に起こった事を自分なりに分析して書きました。私は大学に入学した時、30キロ台まで激やせしていたので、自分がなぜ急激に(2~3日で5キロ近く)太ったのか明確に分かったのです。

(「人はなぜ太るのか」ゲーリー・トーベス著 より引用)

”科学の歴史は別の解釈を示している。人々がこの仮説について1世紀以上考え、何十年も真偽を確認しようと試み、それでもなおそれが真実であると納得させるエビデンス(科学的根拠)が生み出せないとすれば、おそらくそれは真実ではない。(~略~)これは科学の歴史において、一見、理屈に合っていると思われる多くの考えのうち、一度も成功しなかったものの1つである。そしてすべてを再考し、どうすれば体重を減らすことができるのかを見つけ出さなくてはならない。”
(参考文献:ゲーリー・トーベス, 「人はなぜ太るのか」,メディカルトリビューン:2013, Page 66.)

1.アフリカの飢餓と現代の飢餓

飢餓に対する『蓄え』として体に脂肪を溜め込むという考えは、研究者なら誰でも一度は考えるのではないでしょうか?

しかし、この理論は歴史上では研究者から否定された考えだそうです。なぜなら、太っている人はよく食べる人が多いし、アフリカの難民は栄養失調で痩せているからです。ある人は言うかもしれません。

「もし飢餓状態で太るなら、アフリカの難民は太るだろ・・」

しかし、これは食べたくても食べれないという本当の飢餓状態(栄養失調)であり、私の言う「腸の飢餓状態」とは異なることを理解してください。

アフリカの難民は消化のいい食べ物を食べれる訳ではないし、栄養失調になることで、消化する能力まで衰えてしまうのです。

それに対し、先進国の私たちの方が良質な栄養を摂り、消化の良い小麦、肉、卵などで作られた西洋化された食べ物を食べているのです。だから、腸の内面にフォーカスすると、私たちの方が腸内飢餓状態になりやすいと言えるのです。

現実問題として世界の貧困層でも肥満は問題になっており、そこに共通するのは、カロリーや糖質(砂糖)の摂り過ぎではなくて、安価な炭水化物に偏った栄養価の低い食事(野菜不足など)です。

2. なぜ飢餓状態で太るのか?(植物を例に)

私のブログの中では、「腸内飢餓状態が起こることにより基本体重(Base weight)がアップする」 とお伝えしましたが、それが何を意味するのかを説明します。説明上、植物を例にとって説明します。

植物に肥料

(1)食べ物を食べて太るというのは、植物では「肥料を与える」ことによってなされます。肥料は私たちの食事に相当し、もちろん、定期的に与えなければなりません。
しかし、たくさん与えたからといって植物が大きくなるわけではないです。むしろ頻繁に与え過ぎると逆効果のときもあります。

それは人間でも同じで、多く食べたからと言って、全員が太る訳ではありません。1日1食でもバランス良く食べれば、腸の中にはまだ十分吸収できる栄養素はあります。

(2)腸内飢餓を引き起こし、基本体重(B W)がアップすることによって太るというのは、「植物の根が伸びてより多くの栄養を取り込む」ことを意味しています。(下図)

根が伸びる2

植物は栄養がない時に、栄養を求めて地中深くに根を張りますが、我々人間も7~8mあると言われる腸全体(又は小腸)ですべての食べ物を消化し腸内飢餓状態が生じれば、同じような現象が起きます。

(「小腸は第2の脳である」とか「意思がある」と言われますが、私は小腸の意思をはっきりと感じました。) 

実際、腸のヒダ(絨毛)が伸びる訳ではありませんが、吸収できる面積が広がることによって、吸収の絶対的なレベルがアップし(注1)、同じものを食べていても即座に太ります(それは、1年で3キロの場合もあるし、わずか数日で10キロ

の場合もある)。これこそが、肥満の人と痩せている人の根本的な違いをつくっていると、私は信じます。

注1)小腸はより多くの栄養を吸収するため、そのヒダをすべて広げると、テニスコート1枚分以上ともいわれます。

小腸ヒダ
雑草の根

(写真:「小腸の絨毛(じゅうもう)」と「雑草の根」)
※雑草は栄養を与えなくても、大きく育つ。

太り過ぎ

もちろん水だけで太る訳ではないが、「水を飲んでも太る」という日本の独特な表現は、あながち間違った表現ではない。それくらい吸収率がいいということを表している。

3. 基本体重が高くなると何が起こるのか?

  

(1)一度太ると痩せにくくなります

基本体重がアップして体重が増えるというのは、 「入るエネルギー/ 出るエネルギー」の観点から言うなら、釣り合うポイントがアップしたということで、よりポジティブなエネルギー循環が生まれ、痩せるのがさらに難しくなる可能性があります。

ダイエットで、一時的に食べる量やカロリーを減らすというのは、植物の例で言うなら「与える肥料を減らす」ということですが、それは一時的な減量であって、また普通の食事に戻れば元の体重まで戻る可能性が高いでしょう。

さらにダイエットする度に、リバウンドして以前より体重が増えてしまうというのは、食事を抜いたり少なく食べて空腹を長時間も我慢するダイエットでは、腸内飢餓状態ができやすくなり、基本体重がさらにアップしていく可能性があるのです。

(2)筋肉も同時につく

筋肉質

体脂肪がついた後にそれを支えるために筋肉がつくのではなく、栄養全体の取り込みがアップするので、少なくともある程度の体重までは、ほぼ同時に筋肉もつくと考えます。

太っている人が体脂肪を落とすと、胸板や太ももが厚く非常に筋肉質です。体脂肪がついたのちに、その重さを支えるために胸板や首回りの筋肉が厚くなるでしょうか?(もちろん、これは人によって差異がある。)

(3)原因と結果が逆転する

タンパク質も含めて栄養全体の取り込みが増えることによって、エネルギーのポジティブな循環が生まれ、以下の現象が起こると考えます。

消化酵素、ホルモンなどもタンパク質(アミノ酸)からできるので、消化する能力がアップし、常に空腹を感じるため食欲が増進することが考えられます。だから体の大きい人、胃腸の丈夫な人が他の人より多く食べたからといって、不思議ではありません。

多く食べるから太るのではなく、体が大きくなればなるほどお腹がすく、だから多く食べてしまうという原因と結果の逆転現象が存在します。
【関連記事】→ 太った後に、過食し運動しなくなった

  

(4)太りやすい人はより太りやすく、痩せている人は太るのが難しい

もし全員が同じように食べたとしても、体の大きい人・太っている人のほうが空腹を我慢していることが多く、体の大きさを考慮すると、相対的に少なく食べていることになり、徐々に太りやすくなる傾向があります。

適度に多く食べても太るし、食事を抜いて空腹を我慢していれば、長期的にさらに太りやすくなるという悪循環におちいる場合があります。

【関連】→ 相対的に少なく食べている、とはどういうことか?

太る人、太らない人

逆に痩せている人が、毎日3食ある程度のバランスをもって小まめに食べれば、腸内飢餓状態はできにくく、摂取カロリーに関係なく一生体型が変わらないことの方が多い。よってこの点に関しては、「太りやすい体質」「太らない体質」というのは、肥満遺伝子などではない。

また私のようにすごく痩せている人にとっては、痩せることにより摂り込める蛋白質・栄養素なども減り(私は今でも貧血気味である)、ネガティブなエネルギー循環が続く。胃腸を支える筋肉が減少することにより胃下垂になったり、十分な消化酵素が分泌されないことによって、消化する能力も低下してしまう。

結局、痩せた人は痩せたままでいることになり、これが痩せすぎの人にとっての悪循環である。

2018.11.03

早食いは太るのか? ゆっくり食べると痩せるのか?

目次

<はじめに>
  1. イメージが先行している
  2. 体が大きいから速く食べれる(原因と結果が逆転)
  3. 速く食べるような人の『生活習慣』全般が問題だ
  4. ゆっくり噛んで食べると痩せるのか?
  5. もう一つの推論
<最後に>

余談ですが、「早食い/速食い」 のどちらが正しいのでしょうか?
食べるスピードだから、「速食い」かなと思ってたのですが、慣例的に【ハヤ〇〇】というのは【早】になることが多いらしいです。
しかし、「食べるのが早い」というと、「食べる時刻が早い」という意味になるので、この場合は「速い」を使わせて頂きますね!

はじめに
読者から、「食べるのが速い人が太りやすい、と言われているのはどう説明するのですか?」という問合せのメールを頂いたので、それにお答えしたいと思います。

実のところ、食べるスピードと肥満の関係を説明するのは難しいと感じます。私の理論上(腸内飢餓のメカニズム)では、速く食べると消化が悪くなるので、太ることへは直結はしません。そこで、私なりにいくつかのパターンに分けて考えてみたいと思います。

1.イメージが先行している

まず言いたいのは、”食べる量” の時もそうなんですが、一部の人のイメージだけで「全体」が語られているということです。食べるのが速くても痩せている人もいるし、食べるのがゆっくりでも太っている人もいるはずです。しかし何割かの食べるのが速くて、太っている人のイメージ(特に男性)で、「早食い=太る」というように認識されている気がするのです。


確かに、そういう人がいるのも事実だけど、それがなぜ起こるのかも含めて考えなければいけないと思う。

まず一般的には、「満腹感が脳に伝達される前に食べ過ぎてしまうから」というのが1つの理由とされています(結局、「食べ過ぎ、カロリーの摂り過ぎ」という考え)。しかし、いつも満腹を超えるまで食べている訳ではないと思うし、むしろ私のイメージでは、普段は 「さっと食べ終えて他の事(遊び、仕事)をしている」 というイメージである。

また「速く食べると血糖値が急激に上がり、インスリンが多く分泌される」ことが原因とも言われますが、今回はその話には触れないこととします。


■大きくは、次の2つのパターンで説明できると考えます。

(1)原因と結果が逆になっている場合。
(2)食べるのが速い人の「食べ物の好み」や生活習慣が影響を与える。

2.体が大きいから速く食べれる(原因と結果が逆転)

まず食事の量や回数もそうなんですが、体の大きな人/太っている人に沢山食べる人や、速く食べる人が多くいたとしても、それは表面的な見た目の観察でしかないのです。あなたの目の前にいる体の大きな人(太った人)が速く食べた・・・。それって、太陽が「東から昇って、西に沈んだ」と言っているのと同じではありませんか?

つまり体が大きいから、胃腸も大きく丈夫であり、結果として、多く食べれるし、速く食べれるのではないでしょうか?
その人達は、朝食も食べてないかもしれないし、ずっと空腹状態を我慢していたかもしれない。そうであれば、とりあえず速く食べたい、お腹一杯になりたいと思うのも当然です。

依然、芸人のウガンダさんが「カレーライスは飲み物だ」と言っていたけど、それこそ胃腸や消化力が強いからできる芸当だと思います。

つまり原因と結果が逆転しています(逆因果)。

3.速く食べるような人の 『生活習慣』 全般が問題だ

次に「速く食べる」ことが肥満に結びつくケースです。

しかし、速く食べる事が直接的に太る原因となるのではなく、速く食べるような人の「食べ物の好み」や「生活習慣」そのものが肥満に結びつくと考えます。


これは、私のもつイメージですが、食べることにあまりこだわらない人が多いのではないでしょうか? 例えば・・・

・面倒くさい、早く食べ終えたい。
・栄養バランスに少し無頓着で、とりあえず満腹になればいい。
・お腹が減ってたら食べるけど、時間通りに1日3回食べる訳ではない。
・貰えた物は断らない(美味しそうに食べる)けど、食べ物がなければないで我慢している。


つまりそういう人達は、食事を管理してくれる人がいなければ周りの環境に影響される可能性があります。朝食を抜いたり、夜の食事が遅くになったり、生活リズムが乱れがちになるのではと感じます。つまり『時間』の概念ですね。

また、早くお腹が一杯になりたいために、味わって食べることが少ないのではないでしょうか?

ご飯の他に主菜・副菜、味噌汁などがつく日本の伝統的な食事よりも、すばやく食べれる丼ぶり・ラーメン・カレー・うどんなどの炭水化物の多い食事や、ハンバーグ・から揚げ・ソーセージ・フライなどの食べやすいお肉を選ぶのではないでしょうか?
(いわゆる「早い、安い、旨い」

噛まないから太るのではなく、噛まなくてもいいような柔らかいもの、繊維質の少ないものを食べているのではと推察するのです。(速く食べる人ほど、食物繊維摂取量が少ないという研究結果もあるようです。)

つまり食べ物の『バランス・質』ですね。
そして、食べ物の『バランス・質』と『時間』の概念が組み合わされば、私の言う、腸内飢餓状態もできやすくなってしまいます。

煮魚

それとは逆に、豆、海藻、キノコ、ゴボウなどの野菜を使った伝統的な料理や、骨付き肉(手羽先、スペアリブ)、尾頭付きの焼き魚・煮付けなどを食べれば、必然的にゆっくり食べるのではないでしょうか?

季節の食材を少しづつ味わって食べれば、深い味を感じることができるので、自然とおかずファースト、ご飯は後になるのではないでしょうか?

4.ゆっくり噛んで食べると痩せるのか?

肥満や糖尿病を防ぐには、「ゆっくり噛んで食べることが必要」 とも言われています。しかし、「速さ」だけがクローズアップされた事による明らかな間違いが、「ゆっくり噛んで食べると太りにくい」という一部の人の思い込みです。

おにぎり,ダイエット茶

私がこれまで会った中に、昼食におにぎり(2個くらい)とダイエット系のお茶をよ~く噛んで、20分近くかけて食べている女性が数人いました。

彼女達は太っていたので、太りたくないが為にゆっくり噛んで食べていたのだろうけど、その効果はあっただろうかと想像しますね。

私の理論上で言うと、炭水化物だけをゆっくり噛んで食べても、痩せることはないと断言できます(逆に太りやすい)。

『よく噛んでゆっくり食べる』というのは、噛まないといけないような食材を食べるということであり、普段からそういう食べ方をし、3食きっちり食べている人に痩せ習慣の人が多いという事だと思う。

和の惣菜

また『食べ順』があるということは、主菜(メインのおかず)の他に副菜が2種以上あるとか、いろんなおかずを食べるという事です。昔から”三角食べ” が健康のためにもいいと言われていますよね。

しかし、牛丼、カレー、ラーメン、ハンバーガー&ポテトのような食事なら食べ順もないし、それを50回噛んで水分で流し込み、空腹を長時間我慢していれば太りやすくなると想像できる。

5.もう一つの推論

「速く食べる」ことが肥満に結びつく理由として、私の腸内飢餓の理論でもう一つ考えられることがあります。
あくまで私のちょっとした経験に基づいた推測の域を超えないのですが、紹介したいと思います。


例えば、朝食抜きで昼食を摂るなど、12時間以上食べていない時に起こりうるかもしれません。

御飯とおかずを食べる時に、よく噛むと食べ物が混ざり過ぎてしまい、腸に送られた時に十分にミックスされた状態です。

しかし、炭水化物たっぷりの食事をあまり噛まないで、水分で胃に流し込めば、数十分後には炭水化物と水分のみが腸に送られます。昨日に食べた物は直腸の方に便として送り出され、一時的に小腸から大腸にかけてすべて消化されたような瞬間的な飢餓状態ができるのではということです。

こういう食べ方をしていると、血糖値を上げやすいだけでなく、私の理論上も、少しづつ太りやすくなる可能性があります。

最後に

「食べる速さ」は様々な病気にも関係してくると言われているけど、単なるスピードの問題ではなく、必ず食べ物の『バランス・質』と切っては切り離せないと思います。

昔の伝統的な食が崩壊し、忙しい現代人が手っ取り早く食べれるような食事(早い、安い、旨い)ばかりが街中に溢れていることが一番の問題だと思う。

そういう食事は血糖値が上がりやすいだけでなく、ミネラルが少ない割に、化学物質(農薬、食品添加物、ホルモン剤、抗生物質)などが多く使われ、いろんな面から健康を害している。

私の実家は農家で、父が手作りの野菜・旬の魚や山菜を食べさせてくれたし、26才から割烹店で修行していたから分かるけど、日本料理はもっと季節の素材に富み、奥行きが深く、食べる楽しみを与えてくれるものだと思う。

今や本当の日本料理は金持ちだけの料理になってしまって、若い人達に好きな和食は何かと聞けば、「ラーメン、とんかつ、カレー、唐揚げ、回転寿司」という答えが返ってくる。つまり庶民レベルでは日本食は崩壊しつつあるのではないだろうか?

地方が廃れて農村から若者がいなくなり、伝統野菜の作り手もいなくなって郷土料理・伝統的な加工食品も消えつつある。若い人がそういった昔からの料理を消費しなければ、この国の農業はいずれ崩壊し、益々、日本の『食』はどこかに行ってしまうのではなかろうか?

「輸入農産物は安いからいい」と思っている人は、もっと高いツケを支払うことになるし、医療費の増加は私達にとっても他人事ではない問題である。そういった、日本の抱える社会全体の問題とも関連があるのではないか?

2017.12.22

炭水化物が太るのか、カロリーが太るのか?論争

<目次>

  1. 知ってもらいたい「炭水化物抜き」の歴史
  2. 糖質制限が医師達に受け入れられなかった理由
  3. 炭水化物と脂質は逆の性質をもつ(私の考え)
<まとめ>

まず、お断りですが、炭水化物だってkcal/gです。
ネット上では、「だから結局カロリー、食べ過ぎが原因なんじゃないの?」という意見もありますが、"カロリーが原因” と考える場合、9kcal/gの脂質を中心に全体量を減らします。一方、"炭水化物(デンプン)が太る原因" とする主張では、炭水化物以外の肉や脂質(油脂)はいくら食べても良いとされていました。

今回は、『炭水化物』と『カロリー』のどちらが太る原因なのか?という歴史的な経緯を振り返ると共に、最後に私の考えを述べたいと思います。

1.知ってもらいたい「炭水化物抜き」の歴史

日本では2015年前後から、 低炭水化物(ロカボ)ダイエットがブームとなっていたのですが、世界に目を向けると、1800年代から何度となく繰り返されていた方法でありました。引用部分が多くなってしまうのですが、ご了承ください。私の理論を説明するうえでも是非ご紹介したい内容です。
   

(「人はなぜ太るのか?」【ゲーリー・トーベス著】より引用)

"1825年12月、ブリヤーサバラン(フランスの政治家、美食家)は『味の生理学(The Physiology of Taste)』という本を出版した(30章のうち、肥満に関しては2章[原因、予防])。彼は30年の間に、肥満に苦しんでいる人達と500回以上も夕食を共にし、会話の中で、太った男達は次から次にパン・米・パスタ・ジャガイモへの情熱を語った、という。

炭水化物

これによりブリヤーサバランは確実な肥満の原因を見つけた。

1番目は生まれながらの性質であった。彼は「多くの脂肪を消化できる能力をもつ人は、いわば肥満になるように運命づけられている」と書いた。

2番目は「デンプンと小麦粉であり、砂糖と一緒に使用すれば確実にこの効果を示す」と付け加えた。ブリヤーサバランは「肥満防止食は(略)・・・デンプン質または小麦由来のすべての物を多少厳しく節制する事が減量につながると推量される」と書いた。

ブリヤーサバランの書いた内容は、以来際限なく繰り返され、再発見されてきた。1960年代に至るまで、それは世間の常識で、私達の両親や祖父母が本能的に真実である、と信じたものであった。"
(ゲーリ-・トーベス,「人はなぜ太るのか」、メディカルトリビューン:2013, Page 164-5.)

<1844年>
"ジャン・フランソア・ダンセル(フランス人、医師)は、肥満に関する彼の考えをフランス科学アカデミーで発表した。彼の書いた『肥満や過剰な脂肪蓄積』という本は1864年に英訳された。彼は「肉ではないすべての食べ物(炭素と水素が豊富な食物。つまり炭水化物)は脂肪をつくる傾向があるに違いない」と書いた。

肉食動物

彼は、肉食動物は決して太っていない一方で、草食動物はしばしば太っているとも述べ、患者が ”主に肉のみを食べ” その他の食べ物を少量食べれば、一人の例外もなく肥満を治癒できると主張した。


ダンセルは、彼の時代の医師達が『肥満は治らない』と信じた理由を、「医師達が肥満を治そうとして処方した食事(食べる量を減らすことetc)が、まさに肥満の原因になるものだったためである」とした。"(※これはゲーリー・トーベス氏や私のブログのポイントとも通じます)

(ゲーリ・トーベス, 「人はなぜ太るのか」, Page 168.)

▽"20世紀の初めまでは、一般的に医師は肥満を治らない病気と見なしており、何でも試してみることが妥当であるとされた。患者の食事の量を減らし、もっと運動させることは数ある治療法の1つにすぎなかった。

     
<1950年代>

ミシガン州立大学の栄養学部の主任マーガレット・オールソンは、過体重の学生に従来型の反飢餓食を与えた場合、彼らの体重はほとんど減らず、彼らは「すっかり活気がなくなり、空腹であることを常に意識していたため、やる気がなくなった」と報告した。

一方、1日数百カロリーの炭水化物と多量の蛋白質・脂肪を含む食事を摂った場合、平均週3ポンド(約1.4kg)減量し、「食間の空腹感はなく、気分の良さと満足感があった」と報告した。

     
このような報告は1970年代まで続いた。この食事療法を行った人達は、ほとんど努力せずに体重を減らすことができ、その間ほとんど空腹を感じなかった。"

(ゲーリ・トーベス, 「人はなぜ太るのか」, Page 167,175.)

2.糖質制限が医師達に受け入れられなかった理由

上記の流れから行くと、炭水化物や糖を控え、その他の肉や脂質を含む食べ物を多く摂ることで、肥満の問題は解決に向かうかに思われますが・・・ここに「カロリーの原則」が出てきます。

(再び「人はなぜ太るのか?」より引用)

"1960年代までに、前述した脂肪調整の科学は生理学、内分泌学、生化学の学術誌で議論されたが、医学雑誌や肥満そのものを扱った文献で見られることはほとんどなかった。1960年代から1970年代後期にかけて、医師がこれを信じなくなったとき、それはたまたま現在の肥満と糖尿病の流行の始まりと一致した。

<1963年>
米国医師会誌において、脂肪調整の科学は無視された。太っている人達が、(炭水化物や糖以外の)どんな食べ物でも大量に食べることができるという考えを基礎においた治療法を受け入れる医師はいなかった。

そもそも、人がなぜ太るのかについての明確な理由として、現在も受けいれられている『太っている人達は食べ過ぎているからだ』という理由に反するものであったからである。

そこには別の問題もあった。
アメリカの保健局の専門家は、食事に含まれる脂質が心臓病の原因であり、炭水化物は「心臓によい」と信じるようになっていた。(~略~)炭水化物が「心臓によい」という考えは1960年代に始まり、炭水化物が私達を太らせるという考えと相容れることはなかった。

脂

食事に含まれる脂質が心臓発作を引き起こすとすれば、炭水化物をもっと多くの脂質に置き換える食事法は、たとえ私達を細身にするとしても命を脅かす。その結果、医師と栄養士は炭水化物を制限する食事法を攻撃し始めた。

医師2

<1965年:ニューヨークタイムズ>
「栄養学者に非難された新しい食事法:炭水化物の低摂取は危険である」は、炭水化物を制限した食事は高脂質の性質をもっているため、それを処方することは「大量殺人に等しい」というハーバード大学のジャン・マイヤー(Jean Mayer)の主張を引用した。

まずタイムズは「ダイエットをする人達は、カロリーの摂取量を減らすか、それを燃やすかのどちらかによって過剰なカロリーを削減しない限り、体重を減らせないことは医学的な事実である」と説明した。

今や、それが医学的な事実でないことはわかっているが、1965年の段階では栄養学者たちはそれを知らず、今もなお、彼らの多くはそれを知らない。(~略~)

次に、この食事法は炭水化物を制限するため、より多くの脂肪を摂取することで埋め合わせをする。マイヤーが大量殺人という非難をしたのは、その食事が高脂質の性質をもっていたためとタイムズは説明した。"(引用以上)
(ゲーリ・トーベス,「人はなぜ太るのか」, Pages 177-79.)
      

3. 炭水化物と脂質は逆の性質をもつ(私の考え)

この論争について、少しお話したいと思います。
これまでいくつかの研究で、3大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)を食事にどう組み合わせるかにより、体脂肪のつき方に違う結果をもたらすとことが明らかになってきています。同じ1カロリーであっても、消化吸収に使われるエネルギーに差異があり、刺激するホルモンが異なり、どのように体内で代謝されるという経路が異なるーことなどが要因と考えられています。

もちろん、これらの研究も素晴らしいと思うのですが、私の理論上で付け加えると、「炭水化物と脂質は消化の過程で、に近い性質を持つ」ということがポイントとなります。

まず、精製された炭水化物はタンパク質・脂質に比べ消化が早く、それのもつ「希薄効果」「プッシュアウト効果」によって消化はさらに早まり、私達はより空腹になります。野菜・タンパク質・脂質・乳製品などが不足するバランスの悪い食事では、最終的には腸内飢餓を引き起こしやすくします。

【関連記事】炭水化物が人を太らせる、血糖値・カロリー以外の特性

meat,fat,oil

それに対し、肉や脂肪(油脂)は消化に時間がかかります。消化にかかる時間は、食べる量や調理法、個人の消化力の差異にもよりますが、一般的にタンパク質は3~4時間、脂質は6~8時間とも言われています。特に脂肪が腸に辿り着くと、胃の働きを鈍くするホルモン(コレシストキニン)を刺激すると言われており、胃もたれなどの原因にもなりえます。

さらに、炭水化物が少なくタンパク質・脂質の多い食事では、濃密な栄養を腸に送ることになるので、消化が全体的に遅くなり、空腹感が押さえられ、順に吸収率も低下すると考えます。

つまり3大栄養素を食事にどの様に組合せるかによっては、カロリー摂取量が増えても体重減少効果があると言ってもいいでしょう(肉や脂肪を早く消化できる人にとっては、体重減少効果が薄いことがありうる)。

まとめ

・1800年代初期から1960年代に至るまで、いくつかの研究では、太った人たちが食事中の炭水化物を肉や脂肪の多い食事に置き換えることで、無理なく痩せれるということが証明されていた。しかしその頃までに、肥満は摂食障害として理解されるようになり、このダイエット法は生理学、内分泌学などでのみ議論された。

・1960年代から1970年代後期にかけて、ほとんどの医師は、太った人が肉や脂肪をたくさん食べて痩せれるというダイエット法を受け入れなかった。なぜならそれは「カロリーの原則」に反していたからである。

・また、保健局の専門家は食事に含まれる脂質が心臓病の原因であり、炭水化物は「心臓によい」と信じるようになっていた。その結果、医師・栄養士は炭水化物制限ダイエットを攻撃し始めた。

・(私の考え)両者の言い分には一理あるが、カロリーの数値がすべてを決める訳ではない。同じカロリーであっても、食材の組み合わせによって体重管理において異なる影響を及ぼす。特に、炭水化物と脂質は消化の過程でに近い性質をもつ。

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