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2021.05.12
肥満は遺伝か環境か? 養子・双子研究から近年の肥満増加を考える
要 約
1.親が肥満である場合、その子どもも肥満になりやすいことが知られている。しかし、その関連に遺伝的要因と「家族で共有する生活環境」がそれぞれどの程度関与しているのかを明確にすることは難しい。
2.スタンカードらによる養子研究では、養子の肥満度は養親(育ての親)よりも実親(生みの親)のBMIと関連していた。また双子研究では、別々に育てられた一卵性双生児でもBMIは強く類似していた。
これらの研究は、BMIの個人差には遺伝的要因が大きく関与し、家族で共有される環境だけではBMIの類似性を十分に説明できないことを示唆している。
<考 察>
これらの研究は、主としてBMIの個人差に対する遺伝と環境の影響を調べたものである。考察では、それらの研究結果を踏まえ、近年の世界的な肥満増加を遺伝と環境の両面から考える。
3.人間の遺伝的構成が数十年で大きく変化したとは考えにくいため、1970年代以降の世界的な肥満増加を「遺伝」だけで説明することは難しい。
4.肥満を考えるうえでは、遺伝か環境かという二者択一ではなく、遺伝的素因と環境との相互作用も重要であると考えられている。
5.1970年代以降の食環境の変化は、摂取エネルギー量だけではない。食品の加工・精製が進んだことに加え、食事の回数や間隔、食事の時間帯などの食事パターンも変化している。
6.私の仮説では、食品の消化性や食事パターンの変化によって「腸内飢餓」が生じやすくなり、それに対する適応的な生理反応によって、体重の設定値が上昇する可能性があると考えている。
7.養子研究や双子研究で扱われてきた「家族で共有する環境」だけで、近年の肥満増加に関わる環境の変化を捉えることはできない。近年の肥満増加を考えるうえでは、どのような環境要因が遺伝的素因と関係し、体重調節に影響するのかを考えることが重要である。
【全 文】
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目 次
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- 養子研究・双子研究からみる遺伝と環境の影響
- 考 察
(1)遺伝だけで近年の肥満増加を説明できるのか?
(2)「遺伝 × 環境」という考え方
(3)「環境の変化」をどう捉えるか?
肥満には、遺伝と生活環境がそれぞれどの程度影響しているのでしょうか?
一般に、肥満は家族内でみられることが多く、親が肥満である場合、その子どもも肥満になりやすいことが知られています[1,2]。
しかし、家族は遺伝的要因だけでなく、食生活や生活習慣などの環境も共有しています。そのため、個人間のBMI(ボディ・マス・インデックス)の違いに、遺伝と「家族で共有する環境」がそれぞれどの程度関係しているのかを簡単に区別することはできません。

(著作及び出典:Magnific)
この記事では、まず養子研究や双子研究からBMIの個人差に対する遺伝と環境の影響をみたうえで、それらの研究結果を踏まえ、近年の世界的な肥満増加を遺伝と環境の両面から考えてみたいと思います。
1.養子研究・双子研究からみる遺伝と環境の影響
肥満に対する遺伝と環境の影響を調べる方法として、古くから養子研究や双子研究が行われてきた。血縁関係と育った家庭環境を分けて比較することで、それぞれの影響を推定することができる。
例えば、養子のBMIが養父母(育ての親)よりも実親(生みの親)に似ていれば遺伝的要因の影響が、反対に実親よりも養父母に似ていれば、家族で共有する環境の影響が大きい可能性が考えられる[3]。
この分野では、アルバート・J・スタンカードらが先駆的な研究を行った。
養子研究:Stunkard et al.(1986)
スタンカードらは、デンマークの成人養子 540人を対象に、肥満に対する遺伝的要因と家族環境の影響を調べた。養子は、痩せ型、標準体重、過体重、肥満の4群に分類され、実親および養親の BMIとの関係が調査された[4]。

(著作者 pch.vector/出典:Magnific)
その結果、養子の体重区分と実親のBMIの間には強い相関関係が見られたが、養親のBMIとの間には相関関係は見られなかった。
また、養子と実親の間の相関関係は、肥満者だけに見られたものではなく、非常に痩せた人から肥満の人まで、体格の広い範囲で認められた[4]。
研究者らは、成人の体格(肥満度)を決定するうえで、遺伝的要因が重要な役割を果たしている一方、家族で共有される環境だけでは明らかな影響は認められなかったと結論づけている[4]。
養子研究(実の兄弟姉妹):Sørensen et al.(1989)
その後、ソーレンセン、スタンカードらは、同じデンマークの養子データを用いて、幼少期に実親から離れて育てられた養子と、実親のもとで育ったその兄弟姉妹のBMIを比較した。
その結果、養子の肥満度が高い群ほど、離れて育った実の兄弟姉妹のBMIも高かった。この傾向は、共通の両親をもつ兄弟姉妹でより明確であり、片親のみ共通する兄弟姉妹でも着実に増加したが、増加率は弱かった[5]。
この研究では、遺伝的共有度の高い共通の両親をもつ兄弟姉妹の方が、片親のみ共通する兄弟姉妹よりもBMIの関連が強いことが示唆された。また、世代が同じ兄弟姉妹を比較することで、親子研究で問題となり得る、世代間の環境の違いによる影響をある程度避けることができる[5]。
双子研究:Stunkard et al.(1990)
スタンカードらは、スウェーデンの双子を対象に、BMIに対する遺伝と環境の影響を調べた。この研究には、別々に育てられた一卵性・二卵性の双子と、一緒に育てられた一卵性・二卵性の双子が含まれていた[6]。

(著作及び出典:Magnific)
その結果、別々に育てられた一卵性双生児でもBMIは強く類似していた。また分析の結果、BMIの個人差のうち遺伝的要因によって説明される割合(遺伝率)は、男性 74%、女性 69%と推定された。
一方、同じ家庭環境で育つことによる明確な追加的効果(影響)は認められなかった。
研究者らは、BMIには遺伝的要因が大きく影響する一方、双子が共有する家庭環境の影響は小さいと結論づけた[6]。
双子・家族・養子研究レビュー: Maes et al. (1997)
マエスらは、それまでに行われた双子研究・家族研究・養子研究をレビューし、2万5千組以上の双子と、5万人以上の血縁関係および養子縁組による家族のデータを分析した。
その結果、BMIの加重平均相関は一卵性双生児で最も高く(0.74)、二卵性双生児(0.32)、兄弟姉妹(0.25)、実の親子(0.19)の順に低下し、血縁のない養子縁組親族では非常に低かった(0.06)[7]。
なお、このレビューは、別々に暮らす双子や家族に限定したものではない。
これらの結果は、BMIの個人差には遺伝的要因が大きく関与する一方、家族で共有される環境だけでは、その類似性を十分に説明できないことを示唆している [7]。
2.考 察
これらの養子研究や双子研究は、主として個人間のBMIの違いに対する遺伝と環境の影響を調べたものであり、近年の肥満増加そのものを説明する研究ではない。では、これらの研究結果と、1970年代以降の世界的な肥満増加をどのように捉えればよいのだろうか。
(1) 遺伝だけで近年の肥満増加を説明できるのか?
養子研究や双子研究から、BMIの個人差には遺伝的要因が大きく関与することが示唆されている。
しかし、肥満が社会で急速に増加し始めたのは 1970年代以降であり、人間の遺伝的構成がわずか数十年で大きく変化したとは考えにくい[8,9]。遺伝的要因は個人の肥満のなりやすさには関係するが、世界的な肥満の増加を遺伝だけで説明することは難しい。
つまり、個人間のBMIの違いを説明する要因と、集団全体で肥満が増加した要因とは、分けて考える必要がある。
(2) 「遺伝 × 環境」という考え方
ここで注意すべきなのは、養子研究や双子研究で影響が小さいとされたのは、主として「家族や双子が共有する環境」であるという点である。
一方、1970年代以降、私たちの食生活や生活様式は社会全体で大きく変化してきた。高カロリー食品や外食の機会が増える一方、車やテレビ、コンピュータなどの普及による身体活動量の低下も指摘されてきた。集団全体で肥満が増加した背景を考えるうえで、こうした環境の変化を無視することはできない。

(著作者 pvproductions/出典:Magnific)
現在では、肥満を遺伝か環境かという二者択一で捉えるのではなく、遺伝的素因と環境との相互作用も重要であると考えられている[8,9]。
同じような環境で生活していても、体重の増えやすさには個人差があり、環境が変化することで、それまで表れにくかった遺伝的素因がより強く現れる可能性もある。
(3) 「環境の変化」をどう捉えるか
近年の肥満増加については、摂取エネルギーの増加や消費エネルギーの減少という側面から論じられてきた。しかし、食環境の変化は、エネルギー量だけで捉えられるものではない。
食品の加工・精製が進み、より柔らかく消化されやすい食品が増えている。特に、超加工食品の摂取割合が高い人ほど、BMIや肥満リスクが高いことも報告されている[10]。
また、食事の回数や間隔、食べる時間帯など、食事パターンも変化している。朝食の欠食や、夕食でのエネルギー摂取割合の高さと、肥満との関連を示す研究もある[11,12]。

(ファーストフード)
私が本ブログで提唱している仮説では、こうした食環境や食事パターンの変化によって腸内飢餓が生じやすくなり、それに対する適応的な生理反応によって、体重の設定値が上昇する可能性があると考えている。また、腸内飢餓の起こりやすさや、それに対する生理的反応には個人差があり、そこに遺伝的素因の違い(例えば、消化・吸収に関わる生理的特性)が関与している可能性も考えられる。
つまり、養子研究や双子研究で扱われてきた「家族で共有する環境」だけで、近年の肥満増加に関わる環境の変化を捉えることはできない。
近年の肥満増加を考えるうえでは、食品の消化性や食事パターンなど、どのような環境要因が遺伝的素因と相互に関係し、体重調節に影響するのかを考えることが重要である。
<参考文献>
[1]Whitaker RC et al. 「小児期および親の肥満から若年成人期の肥満を予測する」. N Engl J Med. 1997;337:869–873.
[2]Fuentes RM et al. 「体格指数(BMI)の家族内集積:フィンランド東部における集団ベースの家族研究」. Horm Metab Res. 2002;34:406–410.
[3]ジェイソン・ファン. 2019. The Obesity Code. サンマーク出版. Pages 57-8.
[4]Stunkard AJ et al. 「人間の肥満に関する養子縁組研究」. N Engl J Med. 1986 Jan 23;314(4):193-8.
[5]Sørensen TIA, Price RA, Stunkard AJ, Schulsinger F. 「成人養子とその実の兄弟姉妹における肥満の遺伝学」. BMJ. 1989;298:87–90.
[6]Stunkard AJ et al. 「別々に育てられた双子の体格指数」. N Engl J Med. 1990;322(21):1483–1487.
[7]Maes HH, Neale MC, Eaves LJ. 「相対体重とヒトの体脂肪率における遺伝的要因と環境要因」. Behav Genet. 1997 Jul;27(4):325-51.
[8]Qi L, Cho YA. 「遺伝子と環境の相互作用と肥満」. Nutr Rev. 2008 Dec;66(12):684-94.
[9]Reddon H, Guéant JL, Meyre D. 「ヒトの肥満における遺伝子と環境の相互作用の重要性」. Clin Sci (Lond). 2016 Sep 1;130(18):1571-97.
[10]Elizabeth L et al. 「超加工食品と健康への影響:物語的レビュー」. Nutrients. 2020 Jun 30;12(7):1955.
[11]Sakurai M et al. 「朝食を抜くことと日本人男女の体格指数およびウエスト周囲径の5年間の変化」. Obes Sci Pract. 2017 Apr 3;3(2):162-170.
[12]Simona Bo et al. 「夕食で1日の総カロリー摂取量の大部分を摂取すると、肥満になりやすくなる。6年間の住民ベースの前向きコホート研究」. PLoS One. 2014 Sep 24;9(9):e108467.
2020.07.07
食べたり食べなかったりする人は、徐々に太りやすくなる
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目次
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- ダイエット、リバウンドを繰り返す人
- "コロナ太り" という人達
- 「昨日食べ過ぎたから、今日は食事を抜く」 の間違い
- 徐々に太りやすくなる人がやっている日々の行動
【関連記事】→「少ししか食べてないのに太る、とはどういうことか?」
1.ダイエット、リバウンドを繰り返す人

平成28年のFMラジオの放送になりますが、清水翔太さんが出演されていました。
翔太さん:「いや、僕ね凄く "太りやすい体質" なんですよ。お菓子とか食べてると、あっという間に2kgくらい太っちゃって・・・」
司会者:「そうなんですか?その為にやっていることは何ですか?」
翔太さん:「ダイエット、つまり食べないことです。あと、それと運動と・・1~2週間したら、元に戻りますね」
私のブログを読み続けて頂いている方なら、私が何を言いたいのかお分かりかと思いますが、これを「太りやすい体質」というのは間違いです。運動して ”元に戻っている” のではなく、食べて太ったときに ”元に戻っている” のです。”痩せた” のは体重を「絞る」という行為(ボクサーの減量と同じ)です。
2. ”コロナ太り” という人達

(2020年)ある調査によると、コロナウィルスの感染拡大防止のための Stay home(外出自粛)期間に太ったという方が50%以上もいるそうです。(逆に、何割かの痩せた人もいる)
テレビの情報(NHK:「鶴瓶の家族に乾杯」)ですが、あるダンスのインストラクターはこの期間に10キロ以上も太ったそうです。
また私の友人の料理人(和食店経営)も、3キロ以上太りました。彼は普段は朝食も食べず、夜の食事も営業終了後、あまり食べないようにしていたそうですが、この自粛期間は実家でテレビを見て、食べてゴロゴロしていたようです。

この2人の例は「動かなくなり、多く食べると太ってしまう」という典型的な例だと思います。
普段は、仕事の緊張感があり一日中動いており、食事にも気を配り控えめに食べていた。その緊張感がなくなり、運動量が単純に減って、食べる量が増えれば当然体重は増えます。
しかし、それはリバウンドと同じ、設定体重に戻るというパターンです(図ーA)。
3."昨日食べ過ぎたから、今日は食事を抜く" の間違い

「昨日、食べ放題(ビュッフェ)で食べすぎて、一晩で3キロ太った」なんて話もたまに聞きます。
単純に体脂肪がついた分もあるだろうし、食材の胃袋に入っている重量分もあるでしょうが、だからと言って「よし、今日は食事を抜こう」というのは間違いです。
昨日に摂取した食べ物(カロリー)は既に腸を通り過ぎ、便として排出されるのに、今日食べることを我慢すれば、腸内飢餓を引き起こし、長い目で見ると設定体重はアップしていくこともあります。
昨日に摂取したカロリーと、今日摂取するカロリーを相殺しても意味がないのです。
4.徐々に太りやすくなる人がやっている日々の行動
昨今のグルメブームで、美味しそうな食べ物が数多くテレビやSNSで紹介される一方、多くの人が太ることを気にしてダイエットに取り組んでいます。

多くの人は普段はできるだけ食べたい物を我慢し、カロリーの高いスイーツや揚げ物を控える。そしてたまにご褒美に好きなものを食べるのです。
そして一時的に太ってしまった体重を後悔し、「また明日から頑張ろう」と言わんばかりに、”制限系のダイエット” に取り組むのです。
こういうダイエットはほとんど成功しません。
むしろ徐々に太りやすくなる傾向があると考えます。食べたり食べなかったり、ムラのある食生活が「太りやすい体質」となる一歩なのです。
カロリー・糖質の摂取量を減らすために、食事を抜いたり、軽い食事ですませば、あなたは空腹を長時間我慢することになります。それによって一時的に体重を減らしたとしても、油脂や乳製品・繊維質の野菜まで不足すれば、長い目で見ると、腸内飢餓を引き起こし設定体重がアップしていく場合があります。
知らず知らずのうちに、あなたの体重の設定値はアップし、ある時以前の様に食べると、最高体重を更新していたということもあるかも知れません。そして体重が落ちにくくなります。
腸のリズムは朝食で始まり、食べたものは(個人差もあるが)、20時間前後~数十時間で直腸まで送られるために、「昨日食べ過ぎたから、今日は抜く」「2日前に繊維質の野菜は沢山食べたから、今日はいらない」というのは間違いです。
また消化の良すぎる炭水化物と肉などの組み合わせなら7~8時間でも完全に消化されてしまうので、「夜に野菜や栄養のある物を沢山食べるから、朝・昼は軽く質素にすます」というのも良くありません。

太りにくい体になるためには、毎日3回、規則正しくバランスの良い食事を摂るようにすることが、まず第一歩です。
カロリーや糖質のトータルを減らしたくても、多様な食品群からバランス良く摂ることを心掛けましょう。
まとめ
(1) コロナの自主隔離期間に「数キロ太った」と言う人がいるが、ほとんどの場合は、ダイエット後のリバウンドと同じように設定体重に戻るメカニズムで説明できると考える。
(2) 「昨日摂り過ぎたカロリーを、今日は少なく食べて調整する」という考えは、体重を長期的に安定的に保つうえでは間違いである。
(3) 普段はダイエットで食べたい物を我慢して少なく食べ、たまにご褒美的に贅沢するという食べ方も、長い目で見ると太りやすくなる。食べたり食べなかったりという不規則な食べ方は、空腹を我慢しているときに腸の飢餓状態を引き起こし、知らず知らずのうちに、設定体重がアップしていく可能性があるのである。
(4) 腸のリズムは基本的に朝食で始まり、食べた物は20時間前後で直腸まで到達するので、太りたくなければ、毎日バランスの良い食事を3回食べるのが大切である。
2020.05.06
胃下垂の人が太らない、本当の理由
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目次
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- 胃下垂とは?
- なぜ胃下垂だと太りにくいのか?
1.胃下垂とは?

日本人には胃下垂(いかすい)の人が多いと言われています。
『胃下垂』とは、胃が正常な位置より常に下がっている状態をいい、お腹の壁の脂肪不足や内臓を支える筋肉が低下している痩せ型の人におこると言われています。
症状としては、胃部膨満感や、少量の食事でも満腹感を感じたり、食後の胃のもたれやむかつきを感じることがあります。
私もひどい胃下垂です。普通の人なら、食べるとヘソの上部のお腹が膨れると思いますが、私の場合は、食事をすると骨盤の下がプクッと膨れます。私は、中学生まではガッチリ体型でしたが、バカほど食べ過ぎて痩せた為、胃腸を支える脂肪や筋肉まで減少し、食べた物の重みで胃が垂れ下がったのだと思います。

女子の中には、沢山食べても太らないから「胃下垂になりたい」という人もいるようですが、なぜ胃下垂になると太るのが難しいのか、ということを説明します。
2.なぜ胃下垂だと太りにくいのか?
医師の中には、「痩せているから胃下垂になるのであって、胃下垂だから痩せている(太れない)のではない」と言う方もいます。
しかし、これは完全に間違いです。私に言わせると、「痩せすぎると胃下垂になりやすいし、胃下垂だから太りにくい」と言えます。つまり悪循環というやつです(「絶対的に太らない」という訳ではない)。
▽なぜ太りにくいのかという理由は、私の 『腸内飢餓理論』で説明できます。
胃の蠕動(ぜんどう)運動が低下し、消化が遅れ、食べた物が胃の中に残りやすくなります。痩せすぎの人(症状の重い人)は消化する力も弱いので、胃もたれや満腹感が常にある場合があります。
そして、結果的に腸の中に未消化の食べ物が24時間通して残りやすくなります。
十分に消化できず吸収が低下するというのもあると思いますが、腸の中に常に未消化の食べ物が残る状態では、私の言う、設定体重 (set-point weight)がアップすることはなく、腸の広範囲に渡り未消化の食べ物がある状態は、むしろ痩せる方向に働くのです。

胃下垂で痩せている人が、少しでも太るために、カロリーの高い揚げ物やクッキー、ケーキなどを食べるのは、さらに胃への滞留時間を長くするために逆効果です。
消化がよく栄養のある物を食べ、腹筋などの運動をしていくことで脂肪や筋肉がつき、胃下垂が改善する場合があると考えます。
2020.01.16
昔に比べ、なぜ現代人の方が飢餓状態であると体は認識するのか?
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目次
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- この50年で、私達の食事はどの様に変わったのか?
- 豊かな農耕時代に太らず、配給制下で太ったピマ族
- 歴史上で新しい食べ物ほど、体には適さない
1.この50年で、私達の食事はどのように変わったのか?
50年前と言えば、万博のあった1970年(昭和45年)、ちょうど私が生まれた頃である。高度成長の真っただ中だったと思うけど、食卓の風景は今(2020)とかなり違った気がする。
私の家は大阪高槻の山間部で農家(シイタケ栽培、米)だった。ニワトリも20羽ほど飼っていた。
朝の食卓には必ずと言っていいほど、ご飯に味噌汁、漬物があり、野菜の煮物や魚の干物などがあった。家族がそろってしっかり食事をしていた記憶がある。パンももちろん食べたけど、うちは父が力仕事だったから、ご飯は毎朝あったな~。

■食事風景が大きく変化した1970年代
私達の食事が徐々に変化していったのは、1970年以降だと思うんだ。
私は子供の頃、あまり連れて行ってもらった記憶はないけど、
マクドナルド(1971年~)、ケンタッキー(1970年~)などのファーストフード店
ファミリーレストラン(すかいらーく1号店:1970年)、牛丼チェーンなどが次々と出店。
セブンイレブン1号店(1974年)、その後コンビニエンスストアが全国に増えた。
カップ麺などのインスタント食品や冷凍食品が増加していった。

給食のパンに慣れた私達は、アメリカの思惑通り、ご飯よりもやパンなどの小麦製品を好むようになり、それに伴い、骨のある魚よりも肉や加工食品を好んで食べるようになった。
固いものよりも、柔らかい物を好むようになり、昔は定番であった、ヒジキや切干大根、金平、おからなども昔にくらべ食べなくなった。
野菜は柔らかくなるまで調理され、肉や魚もミンチやすり身などに加工され、食べやすく消化がよくなった。
(成人における肥満者(BMI25 以上)の割合は、男性では昭和 55(1980)年以降増加傾向にあり現在3割に達しており、女性では2割前後で推移してきた[厚生労働省資料より])
生活スタイルもデスクワークが増え、夜型の生活、朝食も食べない人が増えた。おそらく世間で肥満が増えていったのは、この頃からではないだろうか?(今では、100キロ級の女性を街中で見ることも珍しくなくなった。)
カロリー摂取量が増えたことが肥満・過体重の原因と思われるかもしれないが、1970年の国民の一日の平均カロリー摂取量は2210kcalであったにもかかわらず、2010年には1849kcalにまで減少しているのである。[1]
(参考文献[1]:香川靖雄, 「時計遺伝子ダイエット」, 2012, P15)
それよりも私の理論との関連で言わせてもらえば、現代の食事は、繊維質に乏しく、消化の良い精製炭水化物、加工された肉・魚製品、ファーストフードなどに偏ることが多い。組合せによれば、容易に腸内飢餓状態を作り出せるのである。
特に、一日2食(朝食又は昼食を抜く)、軽い昼食、遅い夕食などの食習慣の変化、又はダイエットによる食事制限などによって、多くの人が空腹を長時間にわたり我慢している状況下で、腸内飢餓が引き起こされやすくなるのです。
2.豊かな農耕時代に太らず、配給制下で太ったピマ族
同じような状況を説明するのに、配給制化で肥満が増えたピマ族を引き合いに出したい。引用するのは2回目であるが、この部分は非常に重要で、肥満・糖尿病すべての解決のキーとなるだろう。
(参考文献:「人はなぜ太るのか?」ゲーリートーベス著)
ピマ族というアリゾナに住む、アメリカ先住民を考えてみよう。ピマ族は1850年代を通じて極めて成功した狩猟者・農民であった。彼らは罠を仕掛けて獲物を捕まえたりすることに熟練していた。また彼らは、近くを流れるギラ川の魚や貝を食べ、畑ではトウモロコシ、豆、麦、フルーツなども育て、家畜も飼育していた。(略)

しかし1870年までにその地は他の移住者に荒らされ、ピマ族は彼らが言う「飢餓の時代」を生きるようになった。毎日の暮らしは政府の配給に頼っていた。
1901~05年に、この地を訪れた人類学者は、ピマ族が(特に女性)いかに太っていたかについて述べた。
この観察において注目すべきところは、当時、ピマ族が最も豊かな米国先住民族の一つから、最も貧しい民族の一つになったばかりだったということだ。何がピマ族を太らせたにせよ、豊かさとは何の関係もなく、むしろその逆であったように思われる。(略)
なぜ彼らは、豊かな狩猟・農耕時代に太らず、配給になってから太ったのか?
おそらく答えは、摂取した食べ物の種類、つまり量よりも質に問題がある。(略)1900年のピマ族の食事は、その1世紀後に、私達の多くが食べているものと非常に似ていたが、それは量的にでなく、質的にであった。(引用以上)
(ゲーリ-・トーベス, 2013,「人はなぜ太るのか」, メディカルトリビューン, Page 27-9)
【関連記事】→「豊だから太るのか、貧困が太るのか?」
食事の面について言うと、1970年当時の日本人は、現代(2022)よりもいろんなものを食べたと思う。コンビニエンスストアなどなかったし、お母さんの家庭料理が基本で、季節によって異なるいろんな野菜や魚などの食材を食べた。
それに対し現代の食事は(全員ではないが)、消化の良い炭水化物と肉製品がベースで、食べる食材の種類が劇的に減った気がする。普段は多くの人が太ることを気にして空腹を我慢し、たまに贅沢をしてご褒美的に美味しいものを食べる。状況こそ違うが、腸の内部に焦点をあてれば、ピマ族が配給制下で現代食を食べるようになって太ったのと同じであると言える。
3.歴史上で新しい食べ物ほど、体には適さない

(「人はなぜ太るのか?」ゲーリートーベス著)
(「肉を食べるべきか、それとも野菜か?」からの引用)
ある食べ物が人間の食事の一部である期間が長いほど、それはおそらく有益で害が少ない(私たちはその食べ物に適応している)ということである。
そして、もしある食べ物が人間の歴史において新しいものであるか、最近になって大量に摂取するようになった場合、適応する十分な時間がなかった可能性が高く、それは害になる。(略)
ここでの疑問は「私達がおそらく遺伝的に適応している状態とは何か?」ということである。(略)
事実上、私達の遺伝子は、農業を1万2千年前に始める以前に、私達の祖先が採取・狩猟生活者として生きていた250万年の間に作られた。(引用以上)
(ゲーリ-・トーベス,「人はなぜ太るのか」, Page 182)
▽著者は、「炭水化物を大量に摂取する現代の食事は遺伝的に適合しておらず、肉やその脂身を食べることの方が遺伝子レベルでは私達に適合していて害が少ないのではないか」という趣旨でこの文章を書かれたと思う。
私は、飢餓メカニズムを説明するためにこの一節を引用させてもらいます。
もし神様が、『人々が食べ物にありつけない時のために体脂肪を蓄えれる』ように遺伝子の設計図を書かれたとしよう(そう考える方が理にかなっている)。

食べ物がすべて消化された状態をもって『食べ物のない状態』(飢餓状態)とされたのなら、イノシシの肉や木の実、固い細胞壁をもつ野菜、精白されてない穀物などを食べていた狩猟時代・農耕時代は、丸一日食事にありつけなくても腸の内部は完全な飢餓状態にはなりにくかったであろう(腸が7~8mと長い為)。
それに対し、現代のような、すばやく消化される食品(精白された米・小麦、デンプン、加工された肉・魚製品、ファーストフードなど)を多く摂る食事は、わずか半日でも組合せによっては飢餓状態になる場合がある。
すべて判断しているのは腸全体(又は第2の脳と言われる「小腸」)であり、腸の中では、昔よりも現代の方が、「食べ物がない」状態と認識される場合があると私は考える。
最後に
「日本の食文化は世界的に見ても健康的だ」と言われることがあるが、私はそれは最大でも2000年頃までの過去の遺物だと思う。今や伝統的な日本の食事形態は一般家庭から消えつつある気がしている。ファーストフードを食べて育った子供が、今や50代・60代になり、そしてその子供たちが30代になる。こうして約50~60年あれば(約2世代)、いとも簡単に伝統的な料理を食べる機会が薄れていき、食文化が劇的に変化するのだ。
そして食事の移行と共に、かつては多くなかった糖尿病、腎臓病、心臓病、癌、脳卒中などの病気が欧米と同様に増えてきているように感じる。
2019.07.27
肥満の多因子性を整理する:腸内飢餓という交絡的視点
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目次
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- 「過食するから肥満になる」は単純すぎる
- ほとんどのダイエット法は「部分的には正しい」?
- 環境的・行動的要因を整理することは可能か?
- 交絡因子的に機能する腸内飢餓
<まとめ>
1.「過食するから肥満になる」は単純すぎる
米国で2012年に1,143人の成人を対象に行われたオンライン調査(ロイターと市場調査会社イプソスによる)では、米国成人の61%が「食事や運動に関する個人の選択」が肥満の蔓延の原因だと考えていることが示されました[1,2]。多くの米国人はいまだに、肥満になる人は「意思が弱く、食べ過ぎて運動不足だ」と信じているということです[2]。
日本でも状況は似ています。ニュース番組のアナウンサーや専門家でさえ、「食べ過ぎて運動しなければ太るのは当たり前ですが…」といった発言を繰り返しており、多くの日本人も同様の考えを持っている可能性が高いでしょう。
しかし、科学的研究は、「個人の選択」だけでは肥満のすべてを説明できるわけではないことを示唆しています[2]。
養子縁組研究、家族研究、双子研究などに基づく古典的な遺伝学研究によると、BMIの分散(遺伝率の推定値)の約50~70%は遺伝によるものであると言われている(その推定値は、研究デザインや評価方法で異なる)[3]。
現代でも肥満の遺伝率は40~70%と推定されている[4]。
一部の研究者は指摘する;多くの異なる遺伝子が、食物の選択、食物摂取、吸収、代謝、身体活動を含むエネルギー消費に関与していることが判明しており、さらに遺伝子同士または遺伝子と環境の相互作用も考慮すると、体重調整の根底にあるメカニズムの複雑さはさらに増すのだと[3]。

<肥満を慢性疾患と位置づける国際的な声明>
・1948年にWHO(世界保健機関)が国際疾病分類(ICD)を策定し、肥満を「疾病」として分類した。これは、肥満を「病気」として扱った最も早い公式の枠組みの一つとされている。しかし当時の医療界では、この位置づけはほとんど注目されず、その後数十年にわたり一般医療では重要視されなかった[5]。
・1997年、WHOは、国際肥満対策タスクフォース(IOTF、現在は世界肥満機構の一部)との協議を経て、肥満を複雑で深刻な慢性疾患であると公式報告書の中で明確に位置づけた[6]。
・2012年、米国臨床内分泌学会(AACE)は、肥満を慢性疾患として位置づけた。その根拠として、肥満の病態生理が遺伝的、生物学的、環境的、行動的要因の相互作用から成る複雑なものであること、さらに肥満が米国医師会(AMA)が示す疾患の定義に合致することが挙げられている[7]。
・これをうけ、2013年には米国医師会 (AMA)も肥満を慢性疾患として公式に認定した[8]。
2.ほとんどのダイエット法は「部分的には正しい」?
人類全体の遺伝子が、50年や100年といった短期間で大きく変化するとは考えにくいとすれば、1970年以降に見られる世界的な肥満の増加は、環境的・行動的要因の影響を強く受けていると考えるのが妥当でしょう。
そこでこれらの要因について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
流行のダイエットに関する興味深い指摘があったので、以下に引用します。
(「The Obesity Code」より引用)
体重が増える原因は何だろう?
これまで実に様々な説が提唱されてきた。
カロリー / 褒美としての食 / 糖分 / 精製された炭水化物 / 睡眠不足 / 小麦 / ストレス / 食物繊維不足 / 脂肪分 / 遺伝的性質/ 赤身肉/ 貧困 / 裕福さ / 乳製品 / 腸内細菌 / スナック / 子供の頃の肥満

私たちに必要なのは、様々な因子がどのように絡み合っているのかを理解するための枠組みであり、仕組みであり、筋の通った理論である。現在の肥満理論では、「真の原因は ただひとつで、そのほかのものは偽りの原因である」とされることがほとんどだ。結果として、議論が果てしなく続く。
「カロリーを摂り過ぎると肥満になる」
「いや、炭水化物を摂り過ぎるからだ」
「いやいや、原因は飽和脂肪酸の摂り過ぎだ」
「 赤肉の食べ過ぎだろう」
「いいや、加工食品の食べ過ぎだ」
「いや、小麦の摂り過ぎだ」
「いや、外食がいけないんじゃないか」
・・・こうして、議論は尽きない。どの主張も、部分的には正しいのだから。
それぞれのダイエット(カロリー制限、低脂質、パレオ、ビーガンなど)は、別々の側面から肥満の解消に取り組んでいるだけで、どのダイエットにも効果はある。だが、どれも「肥満全体」に対する対処法ではないために長くは効果が続かないことに注意しよう。
肥満が ”多因子性” のものであることを理解しないままでは、互いに非難しているだけで終わってしまう。
(ジェイソン・ファン. 2019.「The Obesity Code 」. Pages 130-131, 360-361)
肥満の多因子性についての著者の指摘は非常に鋭いと思います。肥満は過食が原因で生じる単純な現象ではなく、さまざまな要因が複雑に絡み合って生じるものであることを、私たちはまず理解する必要があります。
しかし同時に、これほど多くの要因が列挙される背景には、体重が増える仕組みと要因が十分に整理されていない、という問題があるのではないでしょうか。
私は「腸内飢餓」という視点を導入することで、複雑に見える環境的・行動的要因の一部は、ある程度、整理して捉えることができるのではないかと考えています。表面に現れる生活習慣や食行動ではなく、「腸の中で何が起きているか」に注目することで、肥満の背景がより明確になるからです。
3.環境的・行動的要因を整理することは可能か?
ここで再度確認しておきたいのは、一般に「太る」と表現される現象には、異なる二つのプロセスが存在するという点です。この概念を取り入れることで、様々な要因を整理して捉えやすくなります。
【関連記事】体重増加:2つの異なるプロセスとは?
(1) 体重が本来の設定値水準へ回帰する場合
一つは、意図的に低く保たれている体重が、元の設定値水準に戻ろうとする過程で生じる体重増加であり、図1-A に示されるプロセスです。一般に「食べ過ぎ」「運動不足」として説明される体重増加だけでなく、多くのカロリー制限ダイエットや、従来の減量介入研究も、この範疇に含まれます。

図1:2つの異なる体重増加プロセス
確かに、脂質・炭水化物・超加工食品のいずれを制限する場合でも、摂取エネルギーが消費を下回れば、一時的に体重は減少する傾向にあります。しかし、この方法では体重の設定値そのものは変化しないため、長期の減量の維持は難しく、元の食事に戻ればリバウンドが起こりやすくなります。
ブリファ氏が指摘するように、カロリー制限は一時的な解消法にはなり得ますが、肥満全体に対する根本的な解決策ではありません。
(2) 体重の「設定値」そのものが上昇するプロセス
一方で、図1-B に示される体重増加は、体重の設定値そのものが上昇する場合であり、これは身体が「飢餓」を認識したことに対する適応反応の結果であると考えています。
そして、その「認識される飢餓」の一つが、腸内飢餓です。
腸内飢餓は単一の原因によって起こるものではなく、その発生には複数の要因が同時に関与することから、肥満の多因子性、特に環境的・行動的要因との関わりを説明しやすくなる可能性があります。
【関連】腸内飢餓を加速する3要素(+1)
4.交絡因子的に機能する腸内飢餓
朝食欠食、遅い夕食、食事回数の少なさ、精製炭水化物や(超)加工食品の多い食事、食物繊維の不足、バランスの悪い食事などは、体重増加や肥満との関連性が指摘されることがあります。
重要なのは、これらの要因がそれぞれ独立して肥満を引き起こしているのではなく、むしろ腸内飢餓の発生に影響を与える因子である可能性です。
つまり、肥満との因果関係の中心にあるのは個々の生活習慣ではなく、それらが共通して影響を及ぼす腸内飢餓ではないか、というのが私の考えです。
この意味で、腸内飢餓は、肥満研究において交絡因子的(注1)に機能する生体反応として捉えることができるかもしれません。

図2:交絡因子的に機能する「腸内飢餓」の概念図
注1:交絡因子とは、原因(暴露)と結果(アウトカム)の両方に影響を与え、両者の関係を見えにくくする第三の要因のことです。たとえば、「食物繊維の不足」と「肥満」が関連しているように見えても、その両方に影響している腸内飢餓が存在する可能性があります。
まとめ
(1)肥満は現在、遺伝的・生物学的・環境的・行動的要因の相互作用によって引き起こされる慢性かつ多因子性の疾患として広く認識されている。多くの流行ダイエットは肥満の特定の側面に対処するが、その疾患全体を適切に標的としているものは無く、これが長期的な効果の限界を説明している可能性がある。
(2)現在求められているのは、肥満に関与する諸因子がどのように絡み合うのかを整理する枠組みである。以下の二つの視点を採用することで、肥満に関連する環境的・行動的要因を体系的に理解できると考える。
(a) 体重増加には二つの異なるプロセスがあり、そのうち体重の「設定値」そのものの上昇が肥満の増加と深く関係している。
(b) 体重の設定値上昇には腸内飢餓が関与しており、これは遺伝的要因と現代の食環境・生活習慣が交差する地点で生じる生理学的な適応反応である。
(3)肥満との因果関係の中心にあるのは、個々の生活習慣そのものではなく、それらに共通して影響を受ける腸内飢餓である可能性がある。この意味で、腸内飢餓は肥満研究において、複数の要因を媒介する生体反応(交絡因子的要素)として位置づけることができる。
<参考文献>
[1]Begley S. America's hatred of fat hurts obesity fight. Reuters. May 11, 2012.
[2]Jou C. 「肥満の生物学と遺伝学 — 1世紀にわたる研究」. N Engl J Med. 2014 May 15;370(20):1874-7.
[3]Speakman JR et al. 「セットポイント、安定点、およびいくつかの代替モデル」. Dis Model Mech. 2011 Nov;4(6):733-45.
[4]McPherson R. 「肥満の遺伝的要因」. Can J Cardiol. 2007 Aug;23 Suppl A(Suppl A):23A-27A.
[5]James, W. 「WHOによる世界的な肥満流行の認識」. Int J Obes 32 (Suppl 7), S120–S126 (2008).
[6]Obesity as a Disease.The World Obesity Federation
[7] Garvey WT.「肥満や脂肪に蓄積による慢性疾患は治療可能か?;セットポイント理論、環境、医薬品」. Endocr Pract. 2022 Feb;28(2):214-222.
[8] Garvey WT et al. 「米国臨床内分泌学会および米国内分泌学会の肥満患者医療総合臨床実践ガイドライン」. Endocr Pract. 2016 Jul;22 Suppl 3:1-203.

