トピックス
2019.07.27
肥満の多因子性を整理する:腸内飢餓という交絡的視点
-
目次
-
- 「過食するから肥満になる」は単純すぎる
- ほとんどのダイエット法は「部分的には正しい」?
- 環境的・行動的要因を整理することは可能か?
- 交絡因子的に機能する腸内飢餓
<まとめ>
1.「過食するから肥満になる」は単純すぎる
米国で2012年に1,143人の成人を対象に行われたオンライン調査(ロイターと市場調査会社イプソスによる)では、米国成人の61%が「食事や運動に関する個人の選択」が肥満の蔓延の原因だと考えていることが示されました[1,2]。多くの米国人はいまだに、肥満になる人は「意思が弱く、食べ過ぎて運動不足だ」と信じているということです[2]。
日本でも状況は似ています。ニュース番組のアナウンサーや専門家でさえ、「食べ過ぎて運動しなければ太るのは当たり前ですが…」といった発言を繰り返しており、多くの日本人も同様の考えを持っている可能性が高いでしょう。
しかし、科学的研究は、「個人の選択」だけでは肥満のすべてを説明できるわけではないことを示唆しています[2]。
養子縁組研究、家族研究、双子研究などに基づく古典的な遺伝学研究によると、BMIの分散(遺伝率の推定値)の約50~70%は遺伝によるものであると言われている(その推定値は、研究デザインや評価方法で異なる)[3]。
現代でも肥満の遺伝率は40~70%と推定されている[4]。
一部の研究者は指摘する;多くの異なる遺伝子が、食物の選択、食物摂取、吸収、代謝、身体活動を含むエネルギー消費に関与していることが判明しており、さらに遺伝子同士または遺伝子と環境の相互作用も考慮すると、体重調整の根底にあるメカニズムの複雑さはさらに増すのだと[3]。

<肥満を慢性疾患と位置づける国際的な声明>
・1948年にWHO(世界保健機関)が国際疾病分類(ICD)を策定し、肥満を「疾病」として分類した。これは、肥満を「病気」として扱った最も早い公式の枠組みの一つとされている。しかし当時の医療界では、この位置づけはほとんど注目されず、その後数十年にわたり一般医療では重要視されなかった[5]。
・1997年、WHOは、国際肥満対策タスクフォース(IOTF、現在は世界肥満機構の一部)との協議を経て、肥満を複雑で深刻な慢性疾患であると公式報告書の中で明確に位置づけた[6]。
・2012年、米国臨床内分泌学会(AACE)は、肥満を慢性疾患として位置づけた。その根拠として、肥満の病態生理が遺伝的、生物学的、環境的、行動的要因の相互作用から成る複雑なものであること、さらに肥満が米国医師会(AMA)が示す疾患の定義に合致することが挙げられている[7]。
・これをうけ、2013年には米国医師会 (AMA)も肥満を慢性疾患として公式に認定した[8]。
2.ほとんどのダイエット法は「部分的には正しい」?
人類全体の遺伝子が、50年や100年といった短期間で大きく変化するとは考えにくいとすれば、1970年以降に見られる世界的な肥満の増加は、環境的・行動的要因の影響を強く受けていると考えるのが妥当でしょう。
そこでこれらの要因について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
流行のダイエットに関する興味深い指摘があったので、以下に引用します。
(「The Obesity Code」より引用)
体重が増える原因は何だろう?
これまで実に様々な説が提唱されてきた。
カロリー / 褒美としての食 / 糖分 / 精製された炭水化物 / 睡眠不足 / 小麦 / ストレス / 食物繊維不足 / 脂肪分 / 遺伝的性質/ 赤身肉/ 貧困 / 裕福さ / 乳製品 / 腸内細菌 / スナック / 子供の頃の肥満

私たちに必要なのは、様々な因子がどのように絡み合っているのかを理解するための枠組みであり、仕組みであり、筋の通った理論である。現在の肥満理論では、「真の原因は ただひとつで、そのほかのものは偽りの原因である」とされることがほとんどだ。結果として、議論が果てしなく続く。
「カロリーを摂り過ぎると肥満になる」
「いや、炭水化物を摂り過ぎるからだ」
「いやいや、原因は飽和脂肪酸の摂り過ぎだ」
「 赤肉の食べ過ぎだろう」
「いいや、加工食品の食べ過ぎだ」
「いや、小麦の摂り過ぎだ」
「いや、外食がいけないんじゃないか」
・・・こうして、議論は尽きない。どの主張も、部分的には正しいのだから。
それぞれのダイエット(カロリー制限、低脂質、パレオ、ビーガンなど)は、別々の側面から肥満の解消に取り組んでいるだけで、どのダイエットにも効果はある。だが、どれも「肥満全体」に対する対処法ではないために長くは効果が続かないことに注意しよう。
肥満が ”多因子性” のものであることを理解しないままでは、互いに非難しているだけで終わってしまう。
(ジェイソン・ファン. 2019.「The Obesity Code 」. Pages 130-131, 360-361)
肥満の多因子性についての著者の指摘は非常に鋭いと思います。肥満は過食が原因で生じる単純な現象ではなく、さまざまな要因が複雑に絡み合って生じるものであることを、私たちはまず理解する必要があります。
しかし同時に、これほど多くの要因が列挙される背景には、体重が増える仕組みと要因が十分に整理されていない、という問題があるのではないでしょうか。
私は「腸内飢餓」という視点を導入することで、複雑に見える環境的・行動的要因の一部は、ある程度、整理して捉えることができるのではないかと考えています。表面に現れる生活習慣や食行動ではなく、「腸の中で何が起きているか」に注目することで、肥満の背景がより明確になるからです。
3.環境的・行動的要因を整理することは可能か?
ここで再度確認しておきたいのは、一般に「太る」と表現される現象には、異なる二つのプロセスが存在するという点です。この概念を取り入れることで、様々な要因を整理して捉えやすくなります。
【関連記事】体重増加:2つの異なるプロセスとは?
(1) 現在の体重が「設定体重」に戻る場合
一つは、意図的に低く保たれている体重が設定体重に戻ろうとする過程で生じる体重増加であり、図1-A に示されるプロセスです。一般に「食べ過ぎ」「運動不足」として説明される体重増加だけでなく、多くのカロリー制限ダイエットや、従来の減量介入研究も、この範疇に含まれます。

図1:2つの異なる体重増加プロセス
確かに、脂質・炭水化物・超加工食品のいずれを制限する場合でも、摂取エネルギーが消費を下回れば、一時的に体重は減少する傾向にあります。しかし、この方法では体重の設定値そのものは変化しないため、長期の減量の維持は難しく、元の食事に戻ればリバウンドが起こりやすくなります。
ブリファ氏が指摘するように、カロリー制限は一時的な解消法にはなり得ますが、肥満全体に対する根本的な解決策ではありません。
(2) 「設定体重」そのものが上昇するプロセス
一方で、図1-B に示される体重増加は、体重の設定値そのものが上昇する場合であり、これは身体が「飢餓」を認識したことに対する適応反応の結果であると考えています。
そして、その「認識される飢餓」の一つが、腸内飢餓です。
腸内飢餓は単一の原因によって起こるものではなく、その発生には複数の要因が同時に関与することから、肥満の多因子性、特に環境的・行動的要因との関わりを説明しやすくなる可能性があります。
【関連】腸内飢餓を加速する3要素(+1)
4.交絡因子的に機能する腸内飢餓
朝食欠食、遅い夕食、食事回数の少なさ、精製炭水化物や(超)加工食品の多い食事、食物繊維の不足、バランスの悪い食事などは、体重増加や肥満との関連性が指摘されることがあります。
重要なのは、これらの要因がそれぞれ独立して肥満を引き起こしているのではなく、むしろ腸内飢餓の発生に影響を与える因子である可能性です。
つまり、肥満との因果関係の中心にあるのは個々の生活習慣ではなく、それらが共通して影響を及ぼす腸内飢餓ではないか、というのが私の考えです。
この意味で、腸内飢餓は、肥満研究において交絡因子的(注1)に機能する生体反応として捉えることができるかもしれません。

図2:交絡因子的に機能する「腸内飢餓」の概念図
注1:交絡因子とは、原因(暴露)と結果(アウトカム)の両方に影響を与え、両者の関係を見えにくくする第三の要因のことです。たとえば、「食物繊維の不足」と「肥満」が関連しているように見えても、その両方に影響している腸内飢餓が存在する可能性があります。
まとめ
(1)肥満は現在、遺伝的・生物学的・環境的・行動的要因の相互作用によって引き起こされる慢性かつ多因子性の疾患として広く認識されている。多くの流行ダイエットは肥満の特定の側面に対処するが、その疾患全体を適切に標的としているものは無く、これが長期的な効果の限界を説明している可能性がある。
(2)現在求められているのは、肥満に関与する諸因子がどのように絡み合うのかを整理する枠組みである。以下の二つの視点を採用することで、肥満に関連する環境的・行動的要因を体系的に理解できると考える。
(a) 体重増加には二つの異なるプロセスがあり、そのうち設定体重(set-point)の上昇が肥満の増加と深く関係している。
(b) 設定体重の上昇には腸内飢餓が関与しており、これは遺伝的要因と現代の食環境・生活習慣が交差する地点で生じる生体の適応反応である。
(3)肥満との因果関係の中心にあるのは、個々の生活習慣そのものではなく、それらに共通して影響を受ける腸内飢餓である可能性がある。この意味で、腸内飢餓は肥満研究において、複数の要因を媒介する生体反応(交絡因子的要素)として位置づけることができる。
<参考文献>
[1]Begley S. America's hatred of fat hurts obesity fight. Reuters. May 11, 2012.
[2]Jou C. 「肥満の生物学と遺伝学 — 1世紀にわたる研究」. N Engl J Med. 2014 May 15;370(20):1874-7.
[3]Speakman JR et al. 「セットポイント、安定点、およびいくつかの代替モデル」. Dis Model Mech. 2011 Nov;4(6):733-45.
[4]McPherson R. 「肥満の遺伝的要因」. Can J Cardiol. 2007 Aug;23 Suppl A(Suppl A):23A-27A.
[5]James, W. 「WHOによる世界的な肥満流行の認識」. Int J Obes 32 (Suppl 7), S120–S126 (2008).
[6]Obesity as a Disease.The World Obesity Federation
[7] Garvey WT.「肥満や脂肪に蓄積による慢性疾患は治療可能か?;セットポイント理論、環境、医薬品」. Endocr Pract. 2022 Feb;28(2):214-222.
[8] Garvey WT et al. 「米国臨床内分泌学会および米国内分泌学会の肥満患者医療総合臨床実践ガイドライン」. Endocr Pract. 2016 Jul;22 Suppl 3:1-203.
2019.04.05
リバウンドしない減量には、2ステップ必要
要 約
(1)太る場合と同様に、「痩せる」場合にも、生理学的に異なる2つのプロセスが存在すると考えられる。一般的なカロリー制限では、身体がエネルギー不足と認識し、従来の体重水準を維持しようとする適応反応が生じるため、体重減少は持続しにくく元の体重に戻りやすい。
リバウンドなく長期的に痩せた体重を維持するには、体重の「設定値」そのものを低下させる必要がある。
(2)体重の設定値そのものを下げるためには、少なくとも次の2つの生理学的ステップを踏む必要がある。第一に、体重を減らす前に、身体がエネルギー欠乏と認識しない生理的環境を整えること。第二に、その環境のもとで、体脂肪が自然に減少していく過程を経ることである。
ステップ1:栄養密度が高く、かつ消化に時間を要する食品(野菜、乳製品、ナッツ、特定のタンパク質など)を食事の中心として選択する。
腸管内に消化されにくい成分を含む内容物が長時間残ることは、身体にとって「食物が十分にある」というシグナルとして認識され、その結果、全体のエネルギー収支がわずかにマイナスになっても、強い適応反応が生じにくくなる可能性がある。
ステップ2:満腹感が持続することで食べ過ぎが抑えられるだけでなく、吸収効率も徐々に低下する可能性がある。長期的には、視床下部を中心とした脳と、末梢の臓器・組織との協調的な作用により、体脂肪が段階的に減少していく可能性がある。
(3)「2ステップ法」は、結果として低炭水化物ダイエットと似た食事内容になる場合があるが、目的は本質的に異なる。
低炭水化物ダイエットは、主にインスリン分泌を低下させることを目的として、糖質の摂取量を制限する。一方、2ステップ法では、腸内飢餓(長時間にわたる空腹)とは逆の生理的環境を整えることを目的とし、炭水化物の摂取を抑えつつ、それ以外の栄養密度が高く消化に時間を要する食品を十分な量摂取することが重要となる。
【全文】
-
<目次>
-
- 「痩せる」にも2つの異なるプロセスがある
(1)体重は減るが、リバウンドする場合
(2)体重の「設定値」そのものを下げる場合
- 体重の設定値を下げるには何が必要か?
- 低炭水化物ダイエット(糖質制限)との違い
- 「痩せる」にも2つの異なるプロセスがある
このブログはダイエットを目的としたものではありませんが、体重増加のメカニズムを考察する以上、その逆である「痩せる過程」についても理論的に整理する必要があると考えました。
今回の記事では、私の仮説に基づき、持続可能な減量のための理論のみを述べます。実践に基づくものではありませんが、従来の考えにとらわれず、一つの新しい考え方を共有することを目的としています。
1. 「痩せる」にも2つの異なるプロセスがある
『太る』に生理学的に異なる2つのプロセスがあるように、『痩せる』にも生理学的に異なる2つのプロセスが存在すると考えられる。
(1)体重は減るが、リバウンドする場合
一般的なカロリー制限や低脂質食は、摂取エネルギーを減らし、消費エネルギーを増やすことで体重を減少させることを目的としています。この方法では慢性的な空腹を伴うことが多くなります。
このブログでは、体重の恒常性を説明する概念として「体重の設定値」仮説[1,2]を使用しています。
摂取エネルギーを大きく制限して体重が減少すると、身体はエネルギー不足と認識し、貯蔵エネルギーを維持しようとする適応反応が生じます[3,4]。これは、代謝・神経内分泌・自律神経・行動における変化が相互に作用する反応として理解されています[5]。
加えて、私の考えでは、空腹状態が長く続くと、体は食べ物から最大限に栄養を摂ろうとするために吸収効率はアップするのです。

ほとんどの場合、体重の設定値自体は変化しないため、体重減少は持続せず、最終的には元の体重の範囲に戻る可能性が高くなります。
【関連記事】
減量後に体重のリバウンドを促進する生物学的反応
(2)体重の「設定値」そのものを下げる場合
私は、肥満の本質的な問題は体重の「設定値」が高くなっていることにあると考えています。
体脂肪として十分なエネルギー貯蔵がある肥満者でさえ、カロリー制限に対して代謝的抵抗を示すことから、肥満は一部の人にとって生理学的に安定した状態であると考えられています[1]。動物実験においても、肥満は高い設定値で調整されたエネルギー恒常性の状態として捉えられています[1]。
したがって、長期的に痩せた体重を保つには、短期のエネルギーの収支のみに焦点をあてるのではなく、体重の設定値そのものを低下させる必要があります。これに関連する文献を以下に引用します。
”体重や肥満に関しては『設定値』というものがあると考えられているが、肥満の問題点は、「設定値が高くなっている」ということにある。(略)
長年にわたる研究で分かったことが二つある。
一つは「どんなダイエット法も効果的であるということ」。
もう一つは「どんなダイエット法も効果的でない」ということ。
どういうことかと言うと、地中海式ダイエットもアトキンス・ダイエット(糖質制限)も低脂質、低カロリーダイエットも、短期的には体重はおちる。それはそうだろう。摂取量を控えているのだから・・・。
しかし、しばらくすると体重は減らなくなり、その後、無常にも増え始める。(略)こうしてどんなダイエット法も失敗する。実は半永久的に体重を減らすには「2段階のプロセス」が必要だ。肥満には「短期的な問題」と「長期的な問題」がある。”(引用以上)
(参考文献: ジェイソン・ファン. 2019.「The Obesity Code 」. Pages 120, 358.)
2.体重の設定値を下げるには何が必要か?
Fung氏が述べる「2段階のプロセス」とは、肥満治療(減量)を「短期的な課題」と「長期的な課題」から成るものと捉える概念的枠組みであり、主に臨床的・実践的な観点から整理されたものだと、私は理解しています。
一方でこの記事では、この「長期的な問題」、すなわち、なぜ身体が体重減少に抵抗し、長期的に体重が元に戻ってしまうのか[6]という点を、生理学的な観点からさらに掘り下げて考察します。
その結果、私は、長期的に痩せた体重を維持するためには、少なくとも以下の2つの生理学的ステップを踏む必要があると考えました。
(1)体重を減らす前に、身体がエネルギー欠乏と認識しない生理的環境を整えること
(2)その環境のもとで、体脂肪が自然に減少していく過程を経ること
私の理論では、設定体重の上昇を伴う体重増加は、身体が「飢餓状態にある」と認識した結果生じる適応反応と関連しており、持続的な体重減少には、その逆の生理的環境を作る必要があると考えています。
多くのダイエットは、初期段階から体重減少を狙いますが、(1)のステップを飛ばすことで、恒常性を取り戻そうとする適応反応が生じ[6]、結果として長期的な減量に失敗する可能性が高いのです。
具体的には以下の通りです。
<第一のステップ>
食事量を減らして空腹を我慢するのではなく、栄養密度が高く、かつ消化に時間を要する(又は部分的に消化されない)食品を中心に食事を構成します。
具体的には、精製炭水化物の摂取量を減らし、その代わりに全粒穀物、食物繊維の多い野菜、ナッツ類、乳製品、脂質、加工度の低いタンパク食品などの摂取量を増やすことが望ましいと考えています。

(出典:Freepik)
これにより、腸管内に消化されにくい成分を含む内容物が長時間残り、空腹感が軽減されるだけでなく、身体にとって「食物が十分にある」というシグナルとして認識される可能性があります。そのため、全体的なエネルギー収支が若干悪化しても、身体はエネルギー欠乏と判断する可能性は低いと考えています。
<第二のステップ>
空腹感の軽減に伴い食欲が低下し、吸収効率も徐々に低下していきます。最終的には、視床下部を中心とした脳と末梢の臓器・組織の協調的な作用により[7]、体脂肪が減少していく可能性があると推測しています。
吸収率の変化は直感的に分かりにくいかもしれませんが、例えば、強い空腹状態で炭水化物を摂取すると血糖値は急上昇しやすく、一方で食後数時間経過した状態では上昇が抑えられます。アルコールについても、空腹時は酔いが早く回り、食後では緩やかになります。
このように、空腹を避け、消化に時間のかかる食品を適切な間隔で摂取することにより、吸収効率は相対的に低下していく可能性があるです。
3.低炭水化物ダイエット(糖質制限)との違い
私の考える「2ステップ法」は、結果として低炭水化物ダイエット(糖質制限)と似た食事内容になる可能性があります。しかし、両者は出発点と目的が異なります。ここでは、その違いを整理します。
▽低炭水化物ダイエットは、炭水化物(糖質)の摂取を制限することで血糖値の急上昇を抑え、脂肪蓄積に関与するインスリン分泌を低下させることを主な目的とします。
糖質由来のエネルギーが不足すると、体は脂肪を主要なエネルギー源として利用するようになり、いわゆるケトーシス状態に移行します。その結果、体脂肪が利用されやすくなり、比較的短期間で体重が減少しやすいと考えられています。また、厳密なカロリー計算を必要とせず、高タンパク・高脂質の食事により満腹感が得られやすい点も特徴です。
一方で、糖質を極端に制限する食事法については、長期的な安全性や持続可能性に関して議論があり、特に特定の条件下ではケトン体の過剰産生に伴うリスクが指摘されることもあります。
▽これに対し、私の理論でも、精製炭水化物や高度に加工された食品に偏った食事が、現代の肥満蔓延に関与している可能性は高いと考えています。ただし、その理由は、炭水化物そのものが直接的に悪いからではありません。
私が重視しているのは、炭水化物が持つ消化の速さや、炭水化物と水分を同時に摂取した際に生じる「希薄効果」、さらに胃内容物が腸へ急速に送り出される「プッシュアウト効果」といった性質です。
これらの要因が重なることで、食べた物が比較的早く消化され、特定の条件下で、腸内飢餓が生じやすくなる可能性があると考えています。
【関連記事】
炭水化物で太る?:希薄効果、プッシュアウト効果

(著作者:brgfx/出典:Freepik)
そのため、2ステップ法では、腸内飢餓とは逆の生理的環境(腸管内に消化されにくい成分を含む内容物が長時間残る状態)を整えることを目的として、希薄効果やプッシュアウト効果を弱めるために炭水化物の摂取を減らし、その他の食品(繊維質の野菜、乳製品、脂質、加工度の低いタンパク食品など)を相対的に増やすことが必要となります。
低炭水化物ダイエットでは、糖質の摂取量そのものを減らすことが中心的な方針となり、タンパク質や脂質は代替的なエネルギー源として比較的自由に摂取されます。ここに、2ステップ法との本質的な違いがあります。
【参考文献】
[1]Richard E. Keesey, Matt D. Hirvonen, 「体重設定値:決定と調整」, The Journal of Nutrition, Volume 127, Issue 9, 1997, Pages 1875S-1883S, ISSN 0022-3166.
[2]Ganipisetti VM, Bollimunta P. 「肥満とセットポイント理論」. 2023 Apr 25. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2025 Jan–.
[3]Hall KD, Guo J. Obesity Energetics: .「肥満エネルギー学」. Gastroenterology. 2017 May;152(7):1718-1727.e3.
[4]Egan AM, Collins AL. 「栄養不足に対するエネルギー消費の動的変化:レビュー」. Proc Nutr Soc. 2022 May;81(2):199-212.
[5] Rosenbaum M, Leibel RL. 「ヒトにおける適応的熱産生」. Int J Obes (Lond). 2010 Oct;34 Suppl 1(0 1):S47-55.
[6] Ochner CN et al. 「肥満者の減量後に体重が戻ることを促進する生物学的メカニズム」. Physiol Behav. 2013 Aug 15;120:106-13.
[7] Wilson JL, Enriori PJ. 「体重をコントロールするために脂肪組織、腸、膵臓、脳の間で対話する」. Mol Cell Endocrinol. 2015 Dec 15;418 Pt 2:108-19.
2019.02.01
なぜ、腸の飢餓状態で太るのか?
-
目 次
-
- アフリカの飢餓と「現代的飢餓」
- 腸内飢餓によって起こりうる適応反応
- 設定体重が高くなると何が起こるのか?
(1) 一度太ると、痩せにくくなる
(2) 筋肉も同時につく
(3) 原因と結果が逆転する
<はじめに>
今回の記事では、本ブログの核心となるテーマ、すなわち、なぜ「腸内飢餓」によって体重が増加しうるのかについて述べます。これは、私自身の実体験をもとに、それを生理学的な視点から整理し、仮説としてまとめたものです。
私は大学入学当時、体重が30kg台にまで低下していました。食事量を増やしても体重はほとんど増えませんでしたが、ある時、むしろ食事量が少ない状況にもかかわらず、4~5日のうちに体重(体脂肪だけでなく筋肉量も含む)が5kg程度急増したことがありました。当時、極端に痩せていたからこそ、この急激な体重増加が偶然ではなく、何らかの明確な生理的変化によるものだと強く感じました。
この記事で述べる考え方は、多くの人にとって直感に反するかもしれません。しかし、体重増加を単なるカロリー収支だけでは説明できないと感じている方にとって、一つの視点になれば幸いです。
(「人はなぜ太るのか」ゲーリー・トーベス著 より引用)
”科学の歴史は別の解釈を示している。人々がこの仮説について1世紀以上考え、何十年も真偽を確認しようと試み、それでもなおそれが真実であると納得させるエビデンス(科学的根拠)が生み出せないとすれば、おそらくそれは真実ではない。(~略~)これは科学の歴史において、一見、理屈に合っていると思われる多くの考えのうち、一度も成功しなかったものの1つである。そしてすべてを再考し、どうすれば体重を減らすことができるのかを見つけ出さなくてはならない。”
(ゲーリー・トーベス, 「人はなぜ太るのか」,メディカルトリビューン:2013, Page 66.)
1. アフリカの飢餓と「現代的飢餓」
「一時的な食糧不足や飢餓に備えて、身体が脂肪をより効率的に蓄えるように人類は進化してきた」という発想は、肥満を研究する者であれば一度は思い浮かべる考え方でしょう。しかし、この単純な仮説は、歴史的には研究者の間で慎重、あるいは否定的に扱われてきました[1]。
その背景には、一般的に肥満者は沢山食べる傾向があり、一方でアフリカの難民のような深刻な飢餓状態にある人々は栄養失調によって著しく痩せている、という観察があります。そのため、次のように反論する人もいるかもしれません。
「もし飢餓状態で太るのであれば、アフリカの難民は太っているはずだ!」

(著作者:macrovector/出典:Freepik)
しかし、これは「食べたくても食べられない」本当の飢餓状態です。
このような状況では、体脂肪を蓄える以前に、筋肉量の減少や基礎的な生理機能の低下が生じます。消化吸収能そのものが低下することもあり、体がエネルギーを蓄える余地はほとんどありません。
▽これに対し、私がここで述べる「腸内飢餓」とは、腸管内に存在する食物がほぼ完全に消化されたときに、身体が「食物が存在しない」と認識する生理的状態を指します。
これは1970年代以降を境に、主に先進国で顕在化し、現在では世界各地に広がりつつある、いわば「現代的飢餓」の一形態とも言えるものです。
先進国では、高カロリーで、かつ高度に加工された食品を日常的に摂取する傾向が強まっています。このような食品は消化・吸収が速いため、腸管内に消化されない成分が長くとどまらず、結果として腸内飢餓が生じやすい状態が形成される可能性があります。
つまり、身体が「食物があるかどうか」を判断する際には、栄養素そのものの有無だけでなく、消化の進行状況、すなわち「腸管内にどの程度の未消化・難消化成分が存在しているのか」も重要な情報として利用している可能性があります。そのため、摂取カロリーが比較的多くても、消化の速い精製炭水化物や(超)加工食品に偏った食事が続けば、腸内飢餓(叉はそれに極めて近い状態)と認識されうると考えられます。
実際、世界の一部の低所得層においても肥満は深刻な問題となっています[2]。そこに共通して見られるのは、単なるカロリー過多や砂糖の過剰摂取ではなく、安価な精製炭水化物や高度に加工された食品に偏ったバランスの悪い食事形態です。
2. 腸内飢餓によって起こりうる適応反応
私は、肥満の根源的な問題の一つは、体重の設定値そのものが高い状態にあることだと考えています。そして、この設定値の上昇には、身体が何らかの形で「飢餓状態にある」と認識した際に生じる適応反応が関与している可能性があると考えています。
本節では、認識される飢餓の一つである「腸内飢餓」という概念と、それによって引き起こされうる体重増加の過程について、植物の例を用いて説明します。(なお、ここでは腸内飢餓に焦点を当てており、体重増加に関わるその他の既知・未知のメカニズムを説明するものではありません。)

(著作者:brgfx/出典:Freepik)
▽植物は栄養の乏しい環境に置かれると、より多くの栄養を得るために地中深くへ根を伸ばします。
同様に、人間においても、腸全体(主に小腸)で食物がほぼ完全に消化され「食べ物がない」と知覚される状態、すなわち腸内飢餓が生じた場合、これに類似した適応反応が起こる可能性があると私は考えています。
もっとも、実際に腸のヒダにある突起物(絨毛:じゅうもう)が物理的に伸長するわけではありません。私が想定しているのは、腸の構造や機能そのものの変化ではなく、吸収効率に影響する表面的な変化です。
小腸の内部は、ヒダ状の構造と無数の絨毛、さらにその絨毛の表面に発達する微絨毛によって、極めて大きな吸収表面積を持っています(図1)。
これらをすべて広げると、小腸の表面積はテニスコート1面分にも相当すると言われています。

図1:腸の絨毛(微絨毛)
私の仮説では、「食べ物がない」というシグナルが腸(特に小腸)から中枢へ伝えられると、身体はより多くの栄養を確保しようとする方向へ調節され、その過程で、適応反応として絨毛や微絨毛の表面に付着している微細な物質が剥離する可能性があります(図2)。
その結果、栄養素と接触可能な表面積が増加し、実質的な吸収効率の上昇が一過性ではなく、その後も持続する可能性があると考えています。

図2:腸内飢餓の発生と適応反応
このような吸収効率の変化が生じた場合、体重増加の幅が 0.3 kgであれ3kgであれ、比較的短期間のうちに、より高い体重でエネルギー恒常性が保たれた状態へ移行する可能性があります。これは過食による体重増加とは異なり、体重の「設定値」そのものが上昇することを意味すると考えられます。
この仮説は、体脂肪として十分なエネルギー貯蔵がある肥満者であっても、カロリー制限に対して代謝的な抵抗を示す[3]ことがある理由の一端を説明できる可能性があります。
【関連記事】重要性を増す体重の「設定値」理論
以上を踏まえると、肥満者と痩せている人の根源的な違いの一つとして、摂取した食べ物をどの程度効率的に消化吸収できるのか、すなわち吸収効率の違いが関与している可能性がある、というのが私の考えです。
日本では、肥満者自身が「水を飲んでも太る体質だ」と表現することがあります。もちろん、水を飲むだけで体脂肪が増えるわけではありませんが、この表現は、肥満者では栄養の吸収効率が高い状態にある可能性を直感的に言い表しているとも解釈できるでしょう。
3. 設定体重が高くなると何が起こるのか?
(1)一度太ると、痩せにくくなる
体重の設定値の上昇を反映する体重増加は、エネルギー恒常性の観点では、摂取と消費が釣り合うポイントそのものが高い水準へ移行したことを意味します。つまり、よりポジティブなエネルギーバランスが維持されやすくなり、減量はさらに困難になる可能性があります。
カロリー制限によって一時的に体重が減少しても、元の食事に戻ればリバウンドする可能性が高いでしょう。さらに、食事制限を繰り返すことで、長期的には体重が徐々に増加することも懸念されます。極端な食事制限では空腹状態が長時間続くため、その過程で腸内飢餓が生じやすくなり、結果として設定体重がさらに上昇する可能性があります。
(2)筋肉も同時につく
設定体重の上昇を示す体重増加では、タンパク質を含む栄養全体の吸収効率が高まると考えられます。つまり、体脂肪だけでなく、筋肉や臓器などの除脂肪組織も一定程度、並行して増加する可能性があります。
実際、多くの研究で、肥満者は非肥満者に比べて除脂肪量(筋量)も多い傾向が報告されています[4,5,6,7]。
ただし、これらは単なる観察結果を示すにとどまり、体脂肪の増加(体重負荷)そのものが筋肉への刺激となり、筋量増加を直接引き起こすことを示すものではありません。

(著作者:pikisuperstar/出典:Freepik)
本仮説では、筋量の増加は、体重の増加による機械的負荷に起因するものではなく、栄養状態や代謝環境の変化に伴って、ある程度は体脂肪とともに生じる変化として起こる可能性を想定しています。
(3)原因と結果が逆転する
栄養全体の取り込みが増加すると、体はよりポジティブなエネルギーバランスに移行し、同時に次の現象が起こりえます。
消化酵素や多くのホルモンはタンパク質(アミノ酸)から構成されているため、栄養状態の改善に伴って、消化機能や食欲調節機構にも変化が生じる可能性があります。
その結果、体の大きい人や消化機能の高い人が、より多くの食事を摂取することは自然な現象といえます。
つまり、「多く食べるから太る」のではなく、「体が大きくなることで必要量が増え、結果として多く食べる」傾向が現れます。この点から、原因と結果の逆転が生じていると捉えることができます。

(出典:Freepik)
一方、痩せ過ぎの状態では、吸収効率の低下に伴い、摂取した栄養(たんぱく質など)を十分に活用できない可能性があります。その結果、内臓を支える筋量の減少や消化酵素分泌の低下が生じると、食べ物を効率的に消化吸収する能力がさらに低下します。
このような悪循環が形成されるため、ネガティブなエネルギーバランスが維持されやすくなると考えられます。そのため、摂取カロリーを増やしたとしても、体重は増えにくい場合があります。
【関連記事】太った後に、過食し運動しなくなった
<参考文献>
[1]Speakman JR, Elmquist JK. 「肥満:進化論的背景」. Life Metab. 2022 Apr 29;1(1):10-24.
[2](ゲーリ-・トーベス. 2013.「人はなぜ太るのか」. Pages 22-40)
[3]Richard E. Keesey, Matt D. Hirvonen, 「体重設定値:決定と調整」, The Journal of Nutrition, Volume 127, Issue 9, 1997, Pages 1875S-1883S, ISSN 0022-3166.
[4]Kyle UG et al. 「15歳から98歳までの健康な被験者5225人における除脂肪量および体脂肪量のパーセンタイル値」. Nutrition. 2001 Jul-Aug;17(7-8):534-41.
[5]Heymsfield SB et al. 「人体組成:モデルと方法の進歩」. Annu Rev Nutr. 1997;17:527-58.
[6] Janssen I et al. 「18歳から88歳までの男女468人における骨格筋量と分布」. J Appl Physiol (1985). 2000 Jul;89(1):81-8.
[7]Fornari R et al. 「肥満成人における除脂肪体重は、ビタミンD濃度の上昇、インスリン感受性の低下、および炎症の軽減と相関関係にある」. J Endocrinol Invest. 2015 Mar;38(3):367-72.
2018.11.03
早食いは太るのか? ゆっくり食べると痩せるのか?
目次
<はじめに>
- イメージが先行している
- 体が大きいから速く食べれる(原因と結果が逆転)
- 速く食べるような人の『生活習慣』全般が問題だ
- ゆっくり噛んで食べると痩せるのか?
- もう一つの推論
<最後に>
<はじめに>
読者から、「食べるのが速い人が太りやすい、と言われているのはどう説明するのですか?」という問合せのメールを頂いたので、それにお答えしたいと思います。
実のところ、食べるスピードと肥満の関係を説明するのは難しいと感じます。私の理論上(腸内飢餓のメカニズム)では、速く食べると消化が悪くなるので、太ることへは直結はしません。そこで、私なりにいくつかのパターンに分けて考えてみたいと思います。
1.イメージが先行している
まず言いたいのは、”食べる量” の時もそうなんですが、一部の人のイメージだけで「全体」が語られているということです。食べるのが速くても痩せている人もいるし、食べるのがゆっくりでも太っている人もいるはずです。しかし何割かの食べるのが速くて、太っている人のイメージ(特に男性)で、「早食い=太る」というように認識されている気がするのです。
確かに、そういう人がいるのも事実だけど、それがなぜ起こるのかも含めて考えなければいけないと思う。
まず一般的には、「満腹感が脳に伝達される前に食べ過ぎてしまうから」というのが1つの理由とされています(結局、「食べ過ぎ、カロリーの摂り過ぎ」という考え)。しかし、いつも満腹を超えるまで食べている訳ではないと思うし、むしろ私のイメージでは、普段は 「さっと食べ終えて他の事(遊び、仕事)をしている」 というイメージである。

また「速く食べると血糖値が急激に上がり、インスリンが多く分泌される」ことが原因とも言われますが、今回はその話には触れないこととします。
■大きくは、次の2つのパターンで説明できると考えます。
(1)原因と結果が逆になっている場合。
(2)食べるのが速い人の「食べ物の好み」や生活習慣が影響を与える。
2.体が大きいから速く食べれる(原因と結果が逆転)
まず食事の量や回数もそうなんですが、体の大きな人/太っている人に沢山食べる人や、速く食べる人が多くいたとしても、それは表面的な見た目の観察でしかないのです。あなたの目の前にいる体の大きな人(太った人)が速く食べた・・・。それって、太陽が「東から昇って、西に沈んだ」と言っているのと同じではありませんか?
つまり体が大きいから、胃腸も大きく丈夫であり、結果として、多く食べれるし、速く食べれるのではないでしょうか?
その人達は、朝食も食べてないかもしれないし、ずっと空腹状態を我慢していたかもしれない。そうであれば、とりあえず速く食べたい、お腹一杯になりたいと思うのも当然です。
依然、芸人のウガンダさんが「カレーライスは飲み物だ」と言っていたけど、それこそ胃腸や消化力が強いからできる芸当だと思います。
つまり原因と結果が逆転しています(逆因果)。

3.速く食べるような人の 『生活習慣』 全般が問題だ
次に「速く食べる」ことが肥満に結びつくケースです。
しかし、速く食べる事が直接的に太る原因となるのではなく、速く食べるような人の「食べ物の好み」や「生活習慣」そのものが肥満に結びつくと考えます。
これは、私のもつイメージですが、食べることにあまりこだわらない人が多いのではないでしょうか? 例えば・・・
・面倒くさい、早く食べ終えたい。
・栄養バランスに少し無頓着で、とりあえず満腹になればいい。
・お腹が減ってたら食べるけど、時間通りに1日3回食べる訳ではない。
・貰えた物は断らない(美味しそうに食べる)けど、食べ物がなければないで我慢している。
つまりそういう人達は、食事を管理してくれる人がいなければ周りの環境に影響される可能性があります。朝食を抜いたり、夜の食事が遅くになったり、生活リズムが乱れがちになるのではと感じます。つまり『時間』の概念ですね。

また、早くお腹が一杯になりたいために、味わって食べることが少ないのではないでしょうか?
ご飯の他に主菜・副菜、味噌汁などがつく日本の伝統的な食事よりも、すばやく食べれる丼ぶり・ラーメン・カレー・うどんなどの炭水化物の多い食事や、ハンバーグ・から揚げ・ソーセージ・フライなどの食べやすいお肉を選ぶのではないでしょうか?
(いわゆる「早い、安い、旨い」)
噛まないから太るのではなく、噛まなくてもいいような柔らかいもの、繊維質の少ないものを食べているのではと推察するのです。(速く食べる人ほど、食物繊維摂取量が少ないという研究結果もあるようです。)
つまり食べ物の『バランス・質』ですね。
そして、食べ物の『バランス・質』と『時間』の概念が組み合わされば、私の言う、腸内飢餓状態もできやすくなってしまいます。

それとは逆に、豆、海藻、キノコ、ゴボウなどの野菜を使った伝統的な料理や、骨付き肉(手羽先、スペアリブ)、尾頭付きの焼き魚・煮付けなどを食べれば、必然的にゆっくり食べるのではないでしょうか?
季節の食材を少しづつ味わって食べれば、深い味を感じることができるので、自然とおかずファースト、ご飯は後になるのではないでしょうか?
4.ゆっくり噛んで食べると痩せるのか?
肥満や糖尿病を防ぐには、「ゆっくり噛んで食べることが必要」 とも言われています。しかし、「速さ」だけがクローズアップされた事による明らかな間違いが、「ゆっくり噛んで食べると太りにくい」という一部の人の思い込みです。

私がこれまで会った中に、昼食におにぎり(2個くらい)とダイエット系のお茶をよ~く噛んで、20分近くかけて食べている女性が数人いました。
彼女達は太っていたので、太りたくないが為にゆっくり噛んで食べていたのだろうけど、その効果はあっただろうかと想像しますね。
私の理論上で言うと、炭水化物だけをゆっくり噛んで食べても、痩せることはないと断言できます(逆に太りやすい)。
『よく噛んでゆっくり食べる』というのは、噛まないといけないような食材を食べるということであり、普段からそういう食べ方をし、3食きっちり食べている人に痩せ習慣の人が多いという事だと思う。

▽また『食べ順』があるということは、主菜(メインのおかず)の他に副菜が2種以上あるとか、いろんなおかずを食べるという事です。昔から”三角食べ” が健康のためにもいいと言われていますよね。
しかし、牛丼、カレー、ラーメン、ハンバーガー&ポテトのような食事なら食べ順もないし、それを50回噛んで水分で流し込み、空腹を長時間我慢していれば太りやすくなると想像できる。
5.もう一つの推論
「速く食べる」ことが肥満に結びつく理由として、私の腸内飢餓の理論でもう一つ考えられることがあります。
あくまで私のちょっとした経験に基づいた推測の域を超えないのですが、紹介したいと思います。
例えば、朝食抜きで昼食を摂るなど、12時間以上食べていない時に起こりうるかもしれません。
御飯とおかずを食べる時に、よく噛むと食べ物が混ざり過ぎてしまい、腸に送られた時に十分にミックスされた状態です。
しかし、炭水化物たっぷりの食事をあまり噛まないで、水分で胃に流し込めば、数十分後には炭水化物と水分のみが腸に送られます。昨日に食べた物は直腸の方に便として送り出され、一時的に小腸から大腸にかけてすべて消化されたような瞬間的な飢餓状態ができるのではということです。
こういう食べ方をしていると、血糖値を上げやすいだけでなく、私の理論上も、少しづつ太りやすくなる可能性があります。
最後に
「食べる速さ」は様々な病気にも関係してくると言われているけど、単なるスピードの問題ではなく、必ず食べ物の『バランス・質』と切っては切り離せないと思います。
昔の伝統的な食が崩壊し、忙しい現代人が手っ取り早く食べれるような食事(早い、安い、旨い)ばかりが街中に溢れていることが一番の問題だと思う。
そういう食事は血糖値が上がりやすいだけでなく、ミネラルが少ない割に、化学物質(農薬、食品添加物、ホルモン剤、抗生物質)などが多く使われ、いろんな面から健康を害している。

私の実家は農家で、父が手作りの野菜・旬の魚や山菜を食べさせてくれたし、26才から割烹店で修行していたから分かるけど、日本料理はもっと季節の素材に富み、奥行きが深く、食べる楽しみを与えてくれるものだと思う。
今や本当の日本料理は金持ちだけの料理になってしまって、若い人達に好きな和食は何かと聞けば、「ラーメン、とんかつ、カレー、唐揚げ、回転寿司」という答えが返ってくる。つまり庶民レベルでは日本食は崩壊しつつあるのではないだろうか?
地方が廃れて農村から若者がいなくなり、伝統野菜の作り手もいなくなって郷土料理・伝統的な加工食品も消えつつある。若い人がそういった昔からの料理を消費しなければ、この国の農業はいずれ崩壊し、益々、日本の『食』はどこかに行ってしまうのではなかろうか?
「輸入農産物は安いからいい」と思っている人は、もっと高いツケを支払うことになるし、医療費の増加は私達にとっても他人事ではない問題である。そういった、日本の抱える社会全体の問題とも関連があるのではないか?
2017.12.22
炭水化物が太るのか、カロリーが太るのか?論争
目次
- 知ってもらいたい「炭水化物抜き」の歴史
- 糖質制限が医師達に受け入れられなかった理由
- 炭水化物と脂質は逆の性質をもつ(私の考え)
<まとめ>
まず、お断りですが、炭水化物だって4kcal/gです。
ネット上では、「だから結局カロリー、食べ過ぎが原因なんじゃないの?」という意見もありますが、"カロリーが原因” と考える場合、9kcal/gの脂質を中心に全体量を減らします。一方、"炭水化物(デンプン)が太る原因" とする主張では、炭水化物以外の肉や脂質(油脂)はいくら食べても良いとされていました。
今回は、『炭水化物』と『カロリー』のどちらが太る原因なのか?という歴史的な経緯を振り返ると共に、最後に私の考えを述べたいと思います。
1.知ってもらいたい「炭水化物抜き」の歴史
日本では2015年前後から、 低炭水化物(ロカボ)ダイエットがブームとなっていたのですが、世界に目を向けると、1800年代から何度となく繰り返されていた方法でありました。引用部分が多くなってしまうのですが、ご了承ください。私の理論を説明するうえでも是非ご紹介したい内容です。
(「人はなぜ太るのか?」【ゲーリー・トーベス著】より引用)
"1825年12月、ブリヤーサバラン(フランスの政治家、美食家)は『味の生理学(The Physiology of Taste)』という本を出版した(30章のうち、肥満に関しては2章[原因、予防])。彼は30年の間に、肥満に苦しんでいる人達と500回以上も夕食を共にし、会話の中で、太った男達は次から次にパン・米・パスタ・ジャガイモへの情熱を語った、という。

これによりブリヤーサバランは確実な肥満の原因を見つけた。
1番目は生まれながらの性質であった。彼は「多くの脂肪を消化できる能力をもつ人は、いわば肥満になるように運命づけられている」と書いた。
2番目は「デンプンと小麦粉であり、砂糖と一緒に使用すれば確実にこの効果を示す」と付け加えた。ブリヤーサバランは「肥満防止食は(略)・・・デンプン質または小麦由来のすべての物を多少厳しく節制する事が減量につながると推量される」と書いた。

ブリヤーサバランの書いた内容は、以来際限なく繰り返され、再発見されてきた。1960年代に至るまで、それは世間の常識で、私達の両親や祖父母が本能的に真実である、と信じたものであった。"
(ゲーリ-・トーベス. 2013.「人はなぜ太るのか」. Page 164-5.)
<1844年>
"ジャン・フランソア・ダンセル(フランス人、医師)は、肥満に関する彼の考えをフランス科学アカデミーで発表した。彼の書いた『肥満や過剰な脂肪蓄積』という本は1864年に英訳された。彼は「肉ではないすべての食べ物(炭素と水素が豊富な食物。つまり炭水化物)は脂肪をつくる傾向があるに違いない」と書いた。

彼は、肉食動物は決して太っていない一方で、草食動物はしばしば太っているとも述べ、患者が ”主に肉のみを食べ” その他の食べ物を少量食べれば、一人の例外もなく肥満を治癒できると主張した。
ダンセルは、彼の時代の医師達が『肥満は治らない』と信じた理由を、「医師達が肥満を治そうとして処方した食事(食べる量を減らすことetc)が、まさに肥満の原因になるものだったためである」とした。"(※これはゲーリー・トーベス氏や私のブログのポイントとも通じます)
( 「人はなぜ太るのか」. Page 168.)
▽"20世紀の初めまでは、一般的に医師は肥満を治らない病気と見なしており、何でも試してみることが妥当であるとされた。患者の食事の量を減らし、もっと運動させることは数ある治療法の1つにすぎなかった。
<1950年代>
ミシガン州立大学の栄養学部の主任マーガレット・オールソンは、過体重の学生に従来型の反飢餓食を与えた場合、彼らの体重はほとんど減らず、彼らは「すっかり活気がなくなり、空腹であることを常に意識していたため、やる気がなくなった」と報告した。

一方、1日数百カロリーの炭水化物と多量の蛋白質・脂肪を含む食事を摂った場合、平均週3ポンド(約1.4kg)減量し、「食間の空腹感はなく、気分の良さと満足感があった」と報告した。
このような報告は1970年代まで続いた。この食事療法を行った人達は、ほとんど努力せずに体重を減らすことができ、その間ほとんど空腹を感じなかった。"
(「人はなぜ太るのか」. Pages 167,175.)
2.糖質制限が医師達に受け入れられなかった理由
上記の流れから行くと、炭水化物や糖を控え、その他の肉や脂質を含む食べ物を多く摂ることで、肥満の問題は解決に向かうかに思われますが・・・ここに「カロリーの原則」が出てきます。
(再び「人はなぜ太るのか?」より引用)
"1960年代までに、前述した脂肪調整の科学は生理学、内分泌学、生化学の学術誌で議論されたが、医学雑誌や肥満そのものを扱った文献で見られることはほとんどなかった。1960年代から1970年代後期にかけて、医師がこれを信じなくなったとき、それはたまたま現在の肥満と糖尿病の流行の始まりと一致した。

<1963年>
米国医師会誌において、脂肪調整の科学は無視された。太っている人達が、(炭水化物や糖以外の)どんな食べ物でも大量に食べることができるという考えを基礎においた治療法を受け入れる医師はいなかった。
そもそも、人がなぜ太るのかについての明確な理由として、現在も受けいれられている『太っている人達は食べ過ぎているからだ』という理由に反するものであったからである。
そこには別の問題もあった。
アメリカの保健局の専門家は、食事に含まれる脂質が心臓病の原因であり、炭水化物は「心臓によい」と信じるようになっていた。(~略~)炭水化物が「心臓によい」という考えは1960年代に始まり、炭水化物が私達を太らせるという考えと相容れることはなかった。

食事に含まれる脂質が心臓発作を引き起こすとすれば、炭水化物をもっと多くの脂質に置き換える食事法は、たとえ私達を細身にするとしても命を脅かす。その結果、医師と栄養士は炭水化物を制限する食事法を攻撃し始めた。

<1965年:ニューヨークタイムズ>
「栄養学者に非難された新しい食事法:炭水化物の低摂取は危険である」は、炭水化物を制限した食事は高脂質の性質をもっているため、それを処方することは「大量殺人に等しい」というハーバード大学のジャン・マイヤー(Jean Mayer)の主張を引用した。
まずタイムズは「ダイエットをする人達は、カロリーの摂取量を減らすか、それを燃やすかのどちらかによって過剰なカロリーを削減しない限り、体重を減らせないことは医学的な事実である」と説明した。
今や、それが医学的な事実でないことはわかっているが、1965年の段階では栄養学者たちはそれを知らず、今もなお、彼らの多くはそれを知らない。(~略~)
次に、この食事法は炭水化物を制限するため、より多くの脂肪を摂取することで埋め合わせをする。マイヤーが大量殺人という非難をしたのは、その食事が高脂質の性質をもっていたためとタイムズは説明した。"(引用以上)
(「人はなぜ太るのか」. Pages 177-79.)
3. 炭水化物と脂質は逆の性質をもつ(私の考え)
この論争について、少しお話したいと思います。
これまでいくつかの研究で、3大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)を食事にどう組み合わせるかにより、体脂肪のつき方に違う結果をもたらすとことが明らかになってきています。同じ1カロリーであっても、消化吸収に使われるエネルギーに差異があり、刺激するホルモンが異なり、どのように体内で代謝されるという経路が異なるーことなどが要因と考えられています。
もちろん、これらの研究も素晴らしいと思うのですが、私の理論上で付け加えると、「炭水化物と脂質は消化の過程で、逆に近い性質を持つ」ということがポイントとなります。
まず、精製された炭水化物はタンパク質・脂質に比べ消化が早く、それのもつ「希薄効果」「プッシュアウト効果」によって消化はさらに早まり、私達はより空腹になります。野菜・脂質・乳製品などが不足するバランスの悪い食事では、最終的には腸内飢餓を引き起こしやすくします。

それに対し、肉や脂肪(油脂)は消化に時間がかかります。消化にかかる時間は、食べる量や調理法、個人の消化力の差異にもよりますが、一般的にタンパク質は3~4時間、脂質は6~8時間とも言われています。
特に脂肪が十二指腸に入ると、脂肪の消化吸収を促進するホルモン(コレシストキニン:cholecystokinin)が分泌されますが、これは同時に胃の運動を抑制し、胃内容物の排出を遅らせると言われており、胃もたれ、膨満感などの原因にもなりえます。
さらに、炭水化物が少なくタンパク質・脂質の多い食事では、濃密な栄養を腸に送ることになるので、消化が全体的に遅くなり、その結果、空腹感が押さえられ、順に吸収率も低下すると私は考えます。
つまり、3大栄養素を食事にどの様に組合せるかによっては、カロリー摂取量が増えても体重減少効果があると言ってもいいでしょう(肉や脂肪を早く消化できる人にとっては、体重減少効果が薄いことがありうる)。
まとめ
(1) 1800年代初期から1960年代に至るまで、いくつかの研究では、太った人たちが食事中の炭水化物を肉や脂肪の多い食事に置き換えることで、無理なく痩せれるということが証明されていた。しかしその頃までに、肥満は摂食障害として理解されるようになり、このダイエット法は生理学、内分泌学などでのみ議論された。
(2) 1960年代から1970年代後期にかけて、ほとんどの医師は、太った人が肉や脂肪をたくさん食べて痩せれるというダイエット法を受け入れなかった。なぜならそれは「カロリーの原則」に反していたからである。
(3) また、保健局の専門家は食事に含まれる脂質が心臓病の原因であり、炭水化物は「心臓によい」と信じるようになっていた。その結果、医師・栄養士は炭水化物制限ダイエットを攻撃し始めた。
(4)(私の考え)両者の言い分には一理あるが、カロリーの数値がすべてを決める訳ではない。同じカロリーであっても、食材の組み合わせによっては体重管理において異なる影響を及ぼす。特に、炭水化物と脂質は消化の過程で逆に近い性質をもつ。

